第七章:暗中飛躍-8
翌朝。屋敷前。
「……アンタ達、なんかあったの?」
ヘリアーテが私とロリーナを見て訝しみながらそんな事を問い掛けて来る。
私達は既に自分達の荷物を持ち、
因みに
宥めるのに苦労したさ、ふふふ。
……で、何かあったのか?
ふふ、ふふふふふふ……。
「な、何よその幸せと絶望が混じったみたいな不気味な笑いは……」
「いや、何……。今の私にもどうにもならない現実というものがある、というだけの話だ。ふふふ」
「へ、へぇ……。それはご愁傷様……」
この会話だけで四人は何かを察したのだろう。それ以上の事は何も聞いては来なかった。
そして──
「もう行ってしまうのですか? お兄様……」
「ミル……」
私の最愛の妹……。この子は何も悪くない。そう、悪くないのだ。
悪いのは私。誰も近くに居ない事を事前に確認していたにも関わらず、ミルが私の感知系スキルを〝何故か〟全て擦り抜けられるのを忘れていたのが原因。
だからミルトニアは悪くない。
「すまないなミル。また時間を作るから今は我慢してくれ」
「……むぅ」
「ミル」
「わかり、ました……。いってらっしゃいお兄様」
「よしよし。良い子だ」
不満気なミルの頭を中腰になりながら優しく撫でてやると、なんだかんだ嬉しそうなミルトニア。まったく、
「ちょっとちょっとクラウぅ〜ンっ!」
唐突に耳馴染みある声が耳に届き顔を上げでみれば、小箱を手にした母上が屋敷小走りでこちらへ慌てて向かって来る。
……まさか、もう?
「はあ……。もうっ! これ置いて帰っちゃおうとするなんて貴方らしくないんじゃない?」
「いえ母上。私はもう少し時間が掛かると思っていたのですが……。その様子だと……」
「勿論っ!! キッチリ素晴らしい物に仕上げて見せたわよっ!!」
そう息巻く母上をよくよく見てみると、その美しい瞳を包む
「あ、ありがとうございます。ですが母上、私の為に張り切ってくれたのは嬉しいのですが、無理をされてしまうと心配してしまいます」
私は素直な感想を口にすると、母上は不思議そうな顔をしながら首を傾げ、数秒固まってから突然ハッとしたように表情を変えた。
「わ、私徹夜しちゃったわっ!」
「今気付いたんですか!?」
「む、夢中だったからつい……。集中しちゃうといつもこうなのよねぇ……」
はあ……。これだから職人気質の人種は……。
まあ私も余り人の事は言えないんだがな。それにしたって自分が徹夜していた事にすら気付かないなんて無いぞ……。
「本当有り難いんですが、無理はしないで下さい。丁寧にさえやって頂ければいつまでも待ちますので、お願いです」
少し強めの口調で改めてお願いする。
母上はまだ若い部類だが、それでも若い頃のノリで作業されて倒れてしまうなど考えたくもないし、まだまだ親孝行だって出来ていないんだ。
「ごめんなさいね……。心配させてしまって……」
「いえ。気持ちは私も分かりますから、約束して頂ければそれで構いません」
「ええ、約束するわ。無理はしない」
「ありがとうございます」
ふう……。で、だ。
「それで母上。完成したという指輪ですが……」
「ええそうよっ!! 渾身の出来よ、見て頂戴っ!!」
パッと笑顔になった母上は持っていた小箱を嬉しそうに差し出し、私がそれを受け取って小箱の蓋を開けてみると……。
「……む?」
そこにあったのは、私が渡した指輪とは全くの別物と言って差し支えない姿に変貌した指輪が丁寧に収められていた。
「あの、これは……」
「驚いたでしょ?」
「そりゃあ……。渡した物と別の物になっていますからね」
てっきり宝石部分だけの修復だと思い込んでいたが、まさか装飾まで弄るとは……。徹夜して当然だ。
「何故このように? というか何故宝石の色まで……」
「慌てないのっ! 一つずつ説明するわね。まず──」
母上曰く、宝石の色が変わったのは傷を修復したからだと言う。
なんでも少し特殊な宝石らしく、傷のせいで黒く燻んでいたのが元に戻って今の色になったという事だ。
「綺麗な空色でしょう? その宝石は「アトモスフィライト」と言ってね? 〝導き〟とか〝軌跡を巡る〟という宝石言葉があるのよ」
「成る程。それで「足跡の指輪」……」
次に指輪の爪や肩、腕を全て一新したのは単にデザインが気に入らなかったのが理由。宝石を輝石戻しで修復し元の空色に戻したまでは良かったが、美しい空色にデザインが合わないと感じての事であった。
「元々使われてたリングの素材はただの銀だったし、メインはそのアトモスフィライトの方だと思うから同じ銀を使って一から作り直したわ。何か特別な指輪だったとしてもその特性自体は変わりない筈よ」
「元々使われていた物に特殊な印や文字列などはありませんでしたか?」
「しっかり確認したけれど無かったわ。だから安心なさい」
「成る程……」
デザインは元々の足跡を模した物から三対の翼がアトモスフィライトを包み込むような神々しい物に変更されている。
リングに特殊な効果の所以が無いのであれば私もコチラの方がデザイン的には好ましい。
「それでクラウン。その指輪、結局なんなの?」
「そうですね。見てみましょう」
母上に言われた通り、私は指輪に対して鑑定系スキルを複合発動する。
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アイテム名:軌跡の指輪
種別:スキルアイテム
分類:指輪
スキル:《足跡の導き》《軌跡の導き》
希少価値:★★★★★★
概要:破損していた足跡の指輪がカーネリアの手によって新たな姿へと生まれ変わった指輪。輝石戻しの影響により元々内包されていたスキル《足跡の導き》に加え《軌跡の導き》を覚醒した。
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……なんと。
「ど、どうしたのクラウン? まさか、ダメだった?」
心配そうな顔で訊ねてくる母上に、私は笑顔を向けて否定する。
「そんな違いますよっ! 寧ろ追加で新たなスキルが発現していました。流石は母上ですねっ!」
概要を見た感じ母上の技術力というよりは輝石戻しの影響によるものが大きいようだが、それでも修復したのは母上の手柄だ。母上のお陰で覚醒したと言っても過言ではない。
「あらあら本当っ? なんだか嬉しいわ〜っ!」
淑やかに、けれども朗らかに笑って喜ぶ母上に私もつられて嬉しくなる。
ふふふ。それにしても、まさか元々あったスキルに加えてもう一つスキルを覚醒させるとはな……。しかも中々に希少そうなスキルときている。嬉しい誤算だ。
「改めてありがとうございます母上。母上に頼んで本当に良かったです」
「いいのよいいのよ〜。自慢の息子の役に立てるなら母親としては本望よっ! ……ねぇクラウン」
母上は私の両肩を優しく、そして力強く掴むと、親としての目で私の目を真っ直ぐ見据える。
「貴方は本当に自慢の息子よ。ジェイドさんから聞いているわ。その歳で色々と頑張って……。でもね、貴方はまだまだ子供よ? 成人していようがなんであろうが、ね」
「母上……」
「だから無理をしては決してダメよ? まあ、貴方から先に言われてしまった私が言うのも変な話ではあるけれど……。それでも、無理を──我慢をしてはダメ。辛くなったらいつでも帰って来なさい」
「……はい、母上」
無理に我慢、か……。
申し訳ありません母上。もう暫くは少し無理と我慢をしなければならないのです。
せめてエルフの国に戦争で勝ち、国政がある程度安定するまでは、今以上にのんびりしている暇など私には無いのだ……。
寧ろ今が踏ん張り時。ここで私が気張らなければ、その安定ですらいつ訪れるのか分からなくなってしまう。
だから無理も我慢も、今はしなければ……。
……では──
「では母上。私達はそろそろ学院に帰還します。また余裕が出来た際には帰りますので、それまでどうかお元気で」
「ええ。貴方もねクラウン。頑張り過ぎないようにね……」
私は母上から離れ、待ってくれていた五人と
「あら、もういいの?」
「何年も会えなくなるワケじゃあるまいし。戻りたい時に戻れはする。アレでも少し過剰なくらいだ」
「そ? まあ私達はいいけどね」
「……今思ったんだが」
「何よ?」
「君はいつも率先して私に報告、連絡、相談、確認をしてくれるなヘリアーテ。皆でそういう役割分担でも決めたのか?」
「へ? 別にそんな事無いけど……。単純に私がせっかちなだけじゃない?」
「ふむ。ならば君には私の部下達のリーダーをやって貰おう。大変だろうが宜しく頼む」
「…………は?」
「では帰ろうか。……と、その前に──」
一度皆から離れ、私はキャンピング馬車へと向かう。
そして馬車内へと入り中を捜索──居た。
「……ミルトニア」
「お、お兄様っ!? これは……その……」
「問答無用」
馬車内の荷物入れの中にすっぽりと体育座りで収まるミルトニアを抱き抱え、馬車の外へと持って行き母上に受け渡す。
「では改めて帰るぞ」
「……はっ!! ちょっと待ちなさいよアンタっ!! 私まだ納得──」
「じゃあ母上、ミルトニア。また」
「ああもうっ!! 向こう着いたら覚えて──」
ヘリアーテの文句を他所に、私達はテレポーテーションで漸く学院のある王国へと帰還したのだった。
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クラウン達が学院へ帰還した同日。
眼鏡を掛け輝くように鮮やかな緑髪を棚引かせた一人の青年は、高級そうなソファーに腰掛けながら手に持つ資料を斜め読みし、後にその資料を目の前のローテーブルへと溜め息を吐きながら放る。
「参ったなぁ……こりゃあ……」
天井を仰ぎながらそうボヤく青年。すると彼の居る部屋の扉が数度ノックされ、青年は扉の方を見ながらニヤリと笑い「どうぞー」と軽い調子で入室の許可を出す。
そしてゆっくり扉が開かれると、そこから同じように輝くような青髪の男が現れる。
「待ってたよーサイファー兄さん。キッチリ時間通り……流石几帳面だねーっ!!」
「ふん。相も変わらず騒がしいなゴーシェ。それとその〝兄さん〟というのは止めろと言ったろう。他貴族が要らん勘違いをする」
珠玉七貴族の一角〝医療〟を司る〝蒼玉〟サイファー・コウ・エメリーネル公爵はゆっくり入って来た扉を閉めると、同じく珠玉七貴族の一角〝司法〟を司る〝翠玉〟ゴーシェ・ヴィリロス・エメラルダス侯爵に促され対面のソファーへ座る。
「今残ってる他貴族連中にそんなアホみたいな勘違いする奴居ないって。誰かさんのお陰でね……」
「……ほう。わざわざ私を呼び出したのは〝奴〟についてか」
「さっすがっ!! 話が早くて助かるよサイファー兄さんっ!!」
喜ぶエメラルダス侯を鼻を鳴らして受け流しすエメリーネル公。するとエメリーネル公は先程エメラルダス侯がローテーブルへと放った資料に視線を落とし、スラスラと適当に内容を確認する。
「……下街西区民家に関する調査報告……?」
「うん。ちょっと前に部下に命じてた調査の報告書。少し前に上がって来たばかりなんだけど、内容がさ……。読んでみる?」
「いや、掻い摘んで話せ」
「もうっ、面倒臭いなぁ……。まあ良いけど」
エメラルダス侯は資料を手に取る事無く、口で「えーっと……」と言って頭に指を当てて思い出しながら言われた通り掻い摘んで話し始める。
「その資料にある調査してた民家ってね。とある家族の家なんだよね。麻薬密造を生業にしてた、さ」
「……ほう。麻薬というと
「そうそう。でさ、その家族って今から大体一年前に父親と娘が殺されて、娘の兄である息子が行方知れずになってんだよ。どう? 中々の事件でしょ?」
「ふん。大方その息子が父親と妹を殺したのだろう? 下街では珍しくもない案件だ。お前がわざわざこの忙しい中、部下に命じて調査する程には感じんな」
「はっはっはっ。まあ、そうっちゃそうなんだけどねー。その行方知れずの息子ってのが、ちょーっと厄介でさ」
エメラルダス侯のその言葉を聞いた数秒後、エメリーネル公は何かに気が付いたようにハッとして眉を僅かに動かし、エメラルダス侯に鋭く目線を送る。
「……まさかとは思うが、その息子というのと〝奴〟が関係しているのか?」
「ご名答ーっ!! やっぱ兄さんは頭良いねーっ!!」
無駄に明るく応えたエメラルダス侯にエメリーネル公が不機嫌そうに眉間に皺を寄せると、エメラルダス侯はわざとらしい溜息を吐いて更に詳細を話す。
「今から大体二ヶ月経つか経たないかぐらいかな? 〝奴〟──つまりはクラウン君が僕の所に来たんだよねー」
「……何?」
「その内容ってのがさ。
「……愚かな」
更に眉間の皺を深くしたエメリーネル公はソファーに
「奴は我々を侮辱しているのか? 金などで動く珠玉七貴族ではないわっ! ……御前会議では気に入らないながらも僅かに可能性を感じていたが……。私の見込み違いだったようだな」
厳しく叱責をするエメリーネル公。しかしそんな言葉を聞いたエメラルダス侯は不思議と気不味そうに空笑いし、露骨に目線を泳がせる。
そしてそんな彼の違和感ある態度を、エメリーネル公が見逃す筈もなかった。
「……まさか貴様」
「い、いやー……。ホントさ、スッゴイスッゴイ言い難いんだけどぉ……」
「……」
「彼の提案、のんじゃったっ♪」
舌を出し、茶化すように暴露したエメラルダス侯に、エメリーネル公の額に青筋を浮き上がらせながらローテーブルを思い切り叩く。
「ふざけるな莫迦者がッ!! 貴様、それでも珠玉七貴族──いや王国で爵位を預かる者の行いかッ!? 恥を知れッ!!」
「ま、待って待ってっ!! おちゃらけたのは謝るから詳しい話を聞いてっ!!」
「黙れっ!! 何をどんな言い訳をすれば賄賂を許容など出来るっ!? そんなものが許される事などこの世に──」
「あるよっ!!」
「──っ!?」
エメラルダス侯の予想外の言葉に、思わずエメリーネル公は押し黙る。彼のその言葉に、エメリーネル公は何かを感じ取ったのだ。
「……ウチはさ。確かに〝司法〟を司る珠玉七貴族の一員だ。そこには法の番人としての誇りも、矜持も勿論ある。……でも、だからこそ現実もよく見えるんだよ」
「……」
「人間っていう不完全な存在が作る以上、法律だって完璧なものは作れない……。万人は裁けないし、万人は救えない。それが現実だ。……でもだからってそこで諦められる程、僕は素直じゃないんだよ」
「貴様……」
「彼はね。渡してきたカネの他にもう一つ、とある条件を提示して来たんだ。……僕達、珠玉七貴族と王国をより効率良く運営する為のギルドを立てる、ってね」
「……ギルドだと?」
訝しむエメリーネル公を他所に、エメラルダス侯は何処か諦めたように話を続ける。
「うん。彼はギルドを立ち上げた時にウチの傘下ギルドが請け負ってた危ない仕事の代行と、〝法〟の力が及ばない下街全体の管理、支配。そして
「……絵空事だな。それを信じる根拠など一つもない」
「うん。根拠はないよ。書面で契約したわけでもない。ただの口約束だ」
「話にならんな。戯れ言以外のなにものでもない」
「うん。戯れ言だよ。……でもさ──」
エメラルダス侯は前のめりになりエメリーネル公の目を見据える。
そこにあるのは狂気にも似たただ真っ直ぐな感情。珠玉七貴族としての誇り、信念、意地……。それらを貫き、エメラルダス家の今の弱い立場から少しでも這い上がる。
そう、今目の前にいる公爵……エメリーネル公にすらナメた口を利かせない。侮らせない。絶対に……。
「僕はそんな戯れ言を利用してでも〝司法〟を司るエメラルダス家の矜持を貫く。それが僕なりの答えだよ。サイファー兄さん」
「……自ら不正を働いてでも、か?」
「はっはっはっ。なぁに言ってんの兄さんっ!! ……揉み消せる不正なんて不正の内に入んないよ……」
「そう、か……」
深い溜め息を吐いて再びソファーに深く腰を落とすエメリーネル公。
先代当主の時代から知っていたゴーシェがいつの間にここまで、と少し考えに耽ろうとしたエメリーネル公だったが、そこでエメラルダス侯も同じように溜め息を吐いた。
「……今度はなんだ」
「あー、いやさ? まあ僕も完全に彼を信用したワケじゃなかったからさ。万が一にでも約束破られないようにって彼の弱味が欲しかったんだよ。場合によってはそれで脅かそうっ、てさ」
「な、成る程……」
「でも彼って一応ジェイドさんの息子じゃない? だから彼自身の弱味って全く掴めなくてさー。だから代わりにって、改めて調査したわけよ。彼の部下になったっていう、父親と妹殺した息子の事を」
「……成る程。それでこの資料か」
「うん。……で、肝心の内容なんだけど……」
「……まさか」
「あっはっはー……。民家ごと全焼してたんだよねー……」
エメラルダス侯の空笑いが虚しく響く。
「全焼、だと? つまり証拠も……」
「何もかも燃えて消えてたね、うん。ついでに言えば事件発生当時に回収してあった筈の証拠品まで無くなってやんのっ!!」
「な……」
「あ、勿論クラウン君が燃やしたり盗んだ可能性あったからそこも調べたよ? でもねー、出ないんだよなーこれが……」
「……」
「もうね。笑うしかないのよ。徹底し過ぎてて絶対クラウン君の仕業だってのは分かるのに証拠も証言も無いから手の出しようがない……。僕に強い印象とあの約束の信憑性を植え付けながらこの手際……っ! いやー、やられたよねー、本当に」
「……今夜」
「ん?」
「今夜は私が奢ろう。部下に美味い酒を仕入れる新しい酒場が出来たと聞いた。この後時間はあるか?」
「うん。ありがとう。それじゃあお言葉に甘えさせてもらおっかなっ!」
「ああ。好きなだけ愚痴を言うといい」
この日、二人の間は以前より少しだけ縮まったのだった。
約一時間後。
「そう言えばなんだが」
グラスに注がれたウィスキーを
「ん? どうしたの?」
「貴様の話では、ギルド立ち上げの第一人者として優先してエメラルダス家の仕事を請け負うと約束したのだったよな?」
「え、うん。そうだけど……」
「だがそれは「ギルド立ち上げにエメラルダス家が賛同し協力した」という事にならないか?」
「…………え?」
「つまりだ。奴は貴様にギルドを上げて協力すると言っておきながら、その実、珠玉七貴族の一角を協力者に招き入れた、という事だ」
「え、えぇっとぉぉ?」
「そもそもだ。お前に出した条件で奴が
「……」
「……」
「……は、はは」
「ご、ゴーシェ……」
「…………あ゛あ゛あァァァァァァッッ!! ちっくしょォォォォォッッ!! やられたァァァァッッ!!」
「落ち着けゴーシェっ!! さあ、呑むんだっ!! 呑んでそんな事実は忘れてしまえっ!!」
「あんのガキィィ……。いつか絶対吠え面かかせてやるからなァァっ!!」
「ああ止めろっ!! 酒が溢れるっ! 暴れるなっ!! ……はあ、娘よすまない。今夜は多分帰れん……」
その夜。エメラルダス侯は人生で一番酒に酔った。
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