第七章:暗中飛躍-5

 


 私の《蒐集家の万物博物館ワールドミュージアム》による博物館内。そこの最奥にある保管室には、一つの青白い光が漂っている。


 それは淡い光を内から発し、まるで鼓動の様に鳴動していた。


『……私を魂として内に取り込んだのか。気色の悪い能力だ』


 そんな淡い光──アヴァリの魂が口の無いままにそんな憎まれ口をたたく。


 今彼女がこうして喋れているのはひとえに私自身がそうからだ。


 ここは私の心象世界。私が望み私が描き私が創り出した純度百パーセントの欲望の世界だ。


 故にここにある物の全てが当然私の完全制御下。


 喋る事も、動く事も、私の望むがままなのだ。


『身体を失い、魂だけで意識を保つなんて貴重な体験だと思うんだが、どうやらお気に召さない様子で……』


『当たり前だろう。貴様の様な外道の中に閉じ込められ満足に逝く事すら許されない……。それを受け入れるなどワタシのプライドが許さないっ!!』


 ……恐らく肉体があれば高らかに叫んだ後に私に殴り掛かってくるのだろうな、コイツは。だが……。


『いくら激怒しようと無駄だ。ここは私の完全な支配下。お前がいくら強者で強靭な魂の持ち主だろうと、私の許可無しでは今のように自由に思考する事すら出来ていなかった筈だ。だろう?』


『……フンっ』


 アヴァリはその身を明滅させ、発する波長が揺ぐ。魂には直接自我や意識が宿っている分、その感情は露骨に魂の波長によって表れてしまう。表情のように自由は効かんのだ。


『……それにしても貴様──』


『んん?』


『貴様も魂のようだが、随分と禍々しい色をしているな。自身の色が分からんから何とも言えんが、魂の色とはそんなものなのか?』


『私の色、か……』


 今、私の魂の色はアヴァリのような美しい青白いものではなく、赤黒い血の様な色と暗黄色の二種の色が混ざる事なく渦巻いている。


 一応光ってはいるものの、発色が暗く濃過ぎる故に妖しく禍々しい事になっているのは否めない。


『私は特別だ。因みにお前は綺麗に青白く光っているぞ? そのまま固めて飾って置きたい程だ。ふふふ』


『き、気色悪い事をまた……』


 そう発しながらアヴァリは発光を暗くし、弱々しくなっていく。


 ふむ。こう露骨に感情表現されるのは、それはそれで少し複雑な思いだが──と、話が大分逸れてしまったな……。


『で、話を戻すが、今日はお前に一つ話があってだな。わざわざこうして一部自由を与えてまで話に来ているのだ』


『話し?後は煮るなり焼くなり出来る貴様がワタシに?』


『ああ。……単刀直入に言う。お前の専用武器であるシェロブを私が使えるようになるように協力しろ』


『…………は?』


 その瞬間、今までは割と忙しなく明滅を繰り返していたアヴァリの発光が止まり、少しずつ時間が経つにつれ不穏な波動を発し始め、そして──


『貴様はアホかっ!? そんなもの協力するわけが無かろうがっ!!』


 ……だろうな。


『貴様はエルフ族の敵っ!! 我が教え子を屠り、みなごろしっ!! ワタシを殺し……。今度は我が愛棍すら汚そうと言うのかっ!? 恥を知れ外道がっ!!』


『まあ、落ち着──』


『落ち着け? ハンっ! 貴様は一体何様だ、えぇ? なんでもかんでも自分の思い通りになると思っているならそれは貴様の──』


『黙りなさい』


『──っ!?』


 アヴァリの魂に、赤黒い影がにじり寄る。


 影はそのまま手のような形になると彼女の魂を鷲掴むように絡み付き、優しく……あくまで優しく包み込んだ。


『な、何を……』


『忘れてはいないだろうがな。ここは私の心の中──私の〝真ん中〟に一番近い場所だ。私が何処よりも本質的な力を行使出来る深淵なんだよ』


『くっ……』


『やろうと思えばな? お前の意思など関係無しにシェロブを我が物に出来るんだよ』


『どう、いう……』


『専用武器とその持ち主はつまるところ〝錠と鍵〟の関係だ。鍵の形状が噛み合って初めて錠を解放し、自由に行使出来る。で、あるならばだ──』


 私はアヴァリの魂の間近まで漂い、威圧する。


『お前から鍵を奪ってしまえばそれで済むんだよ。お前の魂の波長を盗み、魔力の質を盗み、私をお前に擬装してしまえば、済んでしまうんだ』


『──っ!? ……だったら、何故……』


『分からんか? 至極単純な理由だよアヴァリ』


 アヴァリに纏わりつく影をそのままに、優しく、平坦に、言い聞かせるように語り掛ける。


『私はなアヴァリ。お前を気に入っているんだ』


『気に入──は?』


 素っ頓狂な声を上げるアヴァリに対し、私は真面目なトーンのまま続ける。


『あの時お前と一戦交えた際、正直言って楽しくて仕方が無かったんだ……。強者との攻防、駆け引き、思考の読み合い……。一手間違えれば致命傷を免れない緊迫し張り詰めた一時……。本当に、楽しかった』


『……』


『技術面ではお前が上。しかし手段や選択肢は私が上……。明確な差異はそこには無く、ただただ研ぎ澄まされた感覚と集中力に身を委ねるようなあの空気……。お前も、感じていただろう?』


『……ワタシは……』


 問われたアヴァリは発光を弱々しく明滅させながら言い淀む。


 きっと必死で誤魔化しているのだろう。私とのあの一戦に、多少なりとも悦楽を覚えてしまっていた自分自身に。


『ふふふ。……で、だ。私はそんな夢のような一時を過ごしたお前が気に入った。高潔で孤高で誇り高く、ただただ真っ直ぐな強い意志を持つお前を、本当に気に入っていた』


『フン。なら何故殺した? そこまで言うワタシを』


『……残念ながら、それが必要だったからだ。我がティリーザラ王国勝利の為、一縷の情けや油断も捨てねばならない。それにお前の事だ。こうやって限定的な状況にでも持ち込まん限り、私の話など聞く耳を持たなかったろう?』


 実際状況次第では部下として勧誘したいくらいだった。それほど彼女は魅力的だ。


 だがそんな奇跡的な状況など都合良く巡ってくるものではない。取捨選択を間違えるわけにはいかんのだ。


『……否定はせん』


『だろうな。まだまだ短い時間でしかないが、そのくらいならばお前を理解しているぞ?』


『フン。エルフの敵である貴様に理解されても微塵も喜ばしくない』


『エルフの敵、か……』


『……なんだ、その歯に物が詰まったような物言いは』


 アヴァリの魂が少し強く発光する。少しずつ私に興味が湧いてきた証だろう。まあ、本人に自覚はないだろうがな。


『一つ、お前がしている誤解を解こう』


『誤解だと?』


『ああ。私はエルフと敵対するつもりはない』


『…………は?』


 またも間の抜けた声を出したアヴァリを無視し、私は今回のエルフとの戦争に対する姿勢を説明する。


『確かに今は敵だ。戦争目前なのだ、それは当然だ。だが恒久的にそうするつもりかどうかは別の話だ』


『ま、待て貴様っ! 貴様等人族は我々エルフを滅ぼすつもりなんじゃ……』


『滅ぼす? 滅ぼして何になるんだ?』


『はぁ!? それは……昔のように土地を簒奪さんだつし、貴様等の領土を拡大──』


『確かに昔、人族はお前達から土地を不当に奪った。だがそれはあくまで〝有用な土地〟であったからに過ぎん』


『……どういう事だ』


『人族とエルフ族は違う。根本的にだ。広大過ぎる森林内で村落を形成するアールヴを手に入れた所で人族が快適に過ごせると思うか?』


『いや……ならば森を切り拓いて……』


『あの大森林を? 国丸ごと収まるような森林を切り拓くのにどれだけの労力がいると思っている? 何百年掛かろうが不可能だ』


『む、むぅ……』


『それにお前達との戦争で国は必ず疲弊する。労働力も然りだ。それなのに大森林の開拓など以ての外。手に入れた所で持て余すだけだ。例えお前達を滅ぼし土地全てを手中に治めたとしても、人族はその広大な土地の有効活用など出来んよ』


 人族同士の戦争ならばこうはならんのだがな……。姿形が似ているとしてもそもそもの身体的性質から違うのだ。文化や生活圏を奪う意味は薄い。


『な、ならば貴様等人族はワタシ達をどうしたいのだっ!? 勝利しても旨味の無い戦に何の意味があるっ!?』


 旨味、か……。だがそもそも──


『そもそもお前、今回の戦争も一方的に人族のせいだと認識しているな?』


『フンっ! 土地の返還要求を突っぱね続けているのは貴様等だろうっ! 不当に奪っておいて白々しい……。それを敵意有りと陛下が判断されたのだっ!』


『間違いではないが偏っているな。知らんのか? お前達エルフがこの二十年の間でティリーザラ王国にし続けた仕打ちを……』


『仕打ち? 何の話だ』


 ……やはりか。ならば。


『知らんのなら叩き込んでやる。覚悟を決めろ?今からお前が見るのは紛れもない真実だ』


『は? 一体何を言っ──っ!?』


 何かを言い掛けたアヴァリの言葉が唐突に止まり、その発光を一層激しく輝かせる。


 今私はアヴァリに、私の記憶を流し込んでいる。半ば強制的に。


 勿論全てではない。が、彼女を鷲掴んでいる影を通じ、偽りのない確かなものを……ユーリの非道を見せている。


『潜入エルフにより王国の経済が引っ掻き回され、路頭に迷う者が続出した事は知っているか?』


『……くっ』


『確かにかつて、人族はエルフ族から土地を不当に奪った……それは事実だ。だがな』


『……』


『その報復にしろ何にしろ、お前達の主であるユーリはやり過ぎた。甘んじて受け入れる許容範囲を逸脱し、私達に事を構えさせたのはそっちなんだよ、アヴァリ』


『……ワタシ、達は……』


 魂の光量が劇的に落ちていく。無理矢理見せられた自分達エルフの蛮行の数々と、それによって犠牲になった人族の事でどうやら一杯一杯らしい。


 アヴァリの真っ直ぐな性格を考えれば悩むのも当然だ。が、そんな事に構ってやる私ではない。


『疑問に思った事はないか?』


『……何?』


『女皇帝ユーリの事だ。奴は本当に、国を思って行動しているのか?』


『当たり前だっ!あの方は……我々の事を思って……』


『なんだ?お前達の事を思ってさえいれば例え何人のダークエルフが無惨に死のうが構わないと?記憶を完全に消され、ただ魔王を呼び出す餌として利用されようが本望だと、本気で信じているのか?』


『──っ! ……だがっ!』


『いい加減目を覚ませ。アイツは国の事──国民の事など思っちゃいない。アイツはただ私達人族を苦しめられればそれで良いんだ。味方や民が、どれだけ死のうがな』


 本当は否定したいだろう。


 だが私が見せた記憶にあるエルフ達の私達に対する仕打ちは弁解のしようもない事実だ。


 残酷で容赦の無い……。人族や同族までも道具のように切り捨てる。そんな見たくもない現実。


 誰よりエルフ族を誇りに感じていた彼女には受け入れ難い事だろうな。


『このまま戦争をすればアイツは更に犠牲を生み続けるぞ? 人族とエルフ、両方でだ。そして例え戦争がお前達の勝利に終わろうと、奴は満足したりしない。王国の次は帝国、その次は……分かるだろう?』


『……くそ……』


『私達が正義だとは言わん。だがお前達にはあるか? 違うだろう? ……私達の戦いに、間違いは有りこそすれ正しさなど微塵もないんだよ、アヴァリ』


『……では──』


『ん?』


『ではワタシ達は何の為に戦うというんだっ!?信じて来た陛下が非道を実行し続け、敵対者であるお前達人族が苦しんでいる……。こんな……こんな醜い戦争に、何の意味が……』


『……意味が無いわけではないさ。言ったろう?エルフと敵対するつもりは無い、と』


『……何を、考えている……』


『少しは自分で考えてみろ。いいか? まず最初に、本来使いものにならない土地をなるべく少ない労力で有効的に使うにはどうする?』


『……』


 アヴァリはそこで少し光量を落とすと、暫くして何かに気が付いたのか、落とした光量を一気に明るくさせる。


『……っ! 元々生活していたエルフ達を、利用する?』


『そう、正解だ』


 人族で扱えないのならエルフに任せれば良い。至極単純な事だ。そしてつまりそれがどういう事かと言えば……。


『貴様等……私達エルフを奴隷にでもする気か?』


『短絡的だな考えが。お前達エルフが一体何人居ると思っている? その全員に無理矢理言う事を聞かせるなど現実的ではないし、お前達に更なる恨みも買う。納得しない連中同士で第二の戦争が起きるだけだ』


『……ならば貴様は』


『ああ。私はエルフに勝利し、お前達エルフと友好条約を結ぶ。それもなるべく対等で、互いに協力し合うような平和的な、な』


 瞬間、アヴァリの魂が沸騰するように激しい光を放ち始めた。


『ば、バカを言うなっ!! 百年以上いがみ合ってきた人族とエルフが友好条約? 本気で言っているのかっ!?』


『冗談を言うほど暇じゃあない。私達の間にあるわだかまりに終止符を打つ。それが考え得る中で最も効率的で生産的で、何より平和的な終着点だ』


『……本、気で……』


 動揺し、不規則に明滅するアヴァリの魂。まさか私がそんな事を言い出すなど予想だにしていなかったのだろう。


 実際彼女が先程言った奴隷化も悪い手ではない。やり方次第では寧ろこっちの方が人族としては有益に働く。


 だが虐げる事や恐怖を押し付けるやり方は必ず将来破綻し、国の寿命を縮める。それでは戦争に勝った意味など無い。


 それに、私は──


『そもそもなアヴァリ』


『……なんだ』


『私個人としては、エルフに滅んで欲しくなどないんだよ』


『……』


『だってそうだろう? お前達エルフは植物のエキスパートだ。人族がどれだけ研鑽を積もうと、長寿で高潔なエルフには植物の知識では敵わない。それに弓の腕や芸術的センスも、人族には無い魅力的な特徴だ。本当に、素晴らしいと感じる』


『…………』


『そんなお前達を滅ぼすなど、勿体無いだろう?高い知識や技術を共有出来る相手をみすみす殺し尽くすなど愚の骨頂だっ! そんな事をした所でマイナスにしかならん。不毛だ』


『………………』


『分かるかアヴァリ? 私は楽しみで仕方が無いんだよっ! お前達エルフと私達人族が互いに切磋琢磨し、まだ誰も見た事が無い境地に辿り着くっ! そしてそれが私をどれだけ楽しませてくれるのか……。考えるだけで奮い立ってくるっ!』


『……フン』


『……だがな。それも決して簡単じゃあない。百年近く睨み合っていた我々が手を取り合うのは容易では無い事など百も承知だ。きっと数々困難と無理難題が立ち塞がり、小さな争いも無くならんだろう。しかしだっ!』


 私はアヴァリを鷲掴んでいた影を退かし、叫ぶように宣言する。


 これはそう、ある種の誓いだ。


『そんな困難を乗り越えた先にこそ、真の平和と利益と成長……そして何より欲望があるのだっ!! 私はその為ならば身を粉にして邁進し、全身全霊を以って掴み取るっ!!』


『……貴様から』


『んん?』


『貴様から平和などと、聞く事になろうとはな……。予想だにしなかった』


『心外だな。私はただ自分の欲望が満たされればどちらでも構わんのだ。戦争だろうが平和だろうがな。利用するだけだ。だがそれでも──』


『それでも?』


『平和な方が楽しいに決まっているだろう?』


 私は魂のままに、見えないであろう笑顔をアヴァリへ向ける。






『……ワタシはな』


 暫くの沈黙が流れた後、アヴァリは淡く発光しながらゆっくりと語り出した。


『小さい頃、エルフの基礎能力である弓が何故か下手くそでな。他のやつにはバカにされ、よく仲間外れにされていた』


『……』


『それでもワタシがあそこまで強くなり、軍団長にまでなれたのは師匠のお陰だ。師匠がワタシを身も心も鍛えてくれたんだ。……遠くで園芸しながら上達していく周りを羨むしかなかった、ワタシを……』


『…………』


『師匠は常に言っていた。「ただ真っ直ぐ足元と前だけを見なさい。常に意思を曲げず、真っ直ぐに」と……。だからワタシは陛下の口にする「外道な人族に罰を下す」という言葉を信じ、それが進むべきワタシの〝道〟だと疑わなかった』


『……それで?』


『…………ワタシは今でも、可愛い教え子達を殺した貴様を許しはしない。例えそれにどんな意味があろうとだ』


『……ああ』


『だがそんなお前は言った。人族とエルフが手を取り合う未来の為に邁進すると……。信じていた陛下が破滅を進み、憎っくき貴様が平和を語るなら……。ワタシは──』


 アヴァリの魂が強く発光する。それは彼女の強い意志の現れ。私情を殺し、彼女と彼女の師匠が目指した〝真っ直ぐな道〟を突き進まんとする、決して曲がらぬ決意の光だった。


『ワタシは貴様の語る平和に新たな〝道〟を見る。あの方……ユーリ陛下は間違っている。例え相手が人族であろうとあんな目に合わせる理由になどならないし、もう、合わせてはいけないっ!』


『ほう。私が言うのも何だが、信じるのか?私が語る平和を』


『信じる? 冗談を言うな。監視するのだ、貴様をな』


『ほぉう』


『貴様が語る平和を貴様自身が実現するその日まで、ワタシは監視し続ける。そして貴様が〝道〟を違えたその時、ワタシはどんな手段を使ってでも貴様を誅す為に牙を剥こう。一切の容赦無くだ』


『私の制御下にあるお前に、そんな事が出来ると?』


『出来る出来ないではない。〝やる〟のだ。その時が来たならば必ず、な』


『……ふふ』


『あ?』


『ふふふふふふっ……。ますます、お前が気に入ったよアヴァリ。お前の魂を回収する選択は間違いではなかったっ!!素晴らしい……素晴らしいなぁ、ふふふふふふふふふっ……』


『……気色の悪い』


『ふふふ……。では改めて約束してやろう。……私は必ず戦争に勝利し、人族とエルフ族の双方が手を取り合える将来を掴み取る。そしてお前に証明しようっ! ……あのエルフ達の死が、無駄ではなかった、という事を』


『……期待はせん。好きにしろ』


 ……ふむ。取り敢えずはこんなところだろう。


 少し妙な方向に進みはしたが、まあ、あのアヴァリをここまで説得出来たならば御の字だ。後は当初の目的を……。


『……で、ワタシに協力しろ、という話だったか』


『ああ。お前のシェロブを使えるようにしたいから、という申し出だったが、一つ提案がある』


『提案? 許可を出すだけではないのか?』


『それでも良いんだが、お前の魂を有効活用する方法と、お前の目的である私の監視を両立出来る手段がある』


『ほう。そんなものが……』


『私が誘導するから従いなさい。なぁに、安心しろ。少なくともこの保管室よりは快適だし自由が効くはずだ。お前の監視もやりやすいだろうしな』


『ここより、快適?』


『まあ待っていなさい。その内分かる』

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