第七章:事後処理-14
振り返るとそこに居たのは三人の子供。頭がツンツンのいかにも悪ガキな男の子に気弱そうでなかなか目線の合わない同じく男の子、そして気の強そうなお下げ髪が特徴の女の子の三人。
恐らく声を掛けたのは真ん中に居るこの悪ガキだろう。年齢的には私より年上に見えるが、一体なんだというのか。
「何か用でも?」
「お前! マルガレンをどうするつもりだ!」
どうするって……。まるで意味がわからん。
「こらエイス! お客様に対してなんて態度ですか!!」
ドロシーが先程の悪ガキ──エイスをそう叱り付けると、エイスは少し怯えながらも私の方をキッと睨む。
「シスター! コイツきっとマルガレンをこき使う気だ!! だから渡しちゃダメだ!!」
「そんな事はありません! 確かにこの子は貴方より年下ですが、貴方よりずっとしっかりしていますよ?」
「だからってこき使わないかは分からないだろう!? オレはコイツ信用できない!!」
まあ、側付きの使用人として世話するのだし、こき使うっちゃ使うが、多分コイツらが想像しているのはもっと大袈裟なもんなんだろうな。
「アタシも信用できない! こんな見た目だけの奴にマルガレンちゃんは渡さないよ!!」
見た目だけって……。確かに外行きの格好はしているが、何をもって判断してるんだ?
「ぼ、ボクだって! せっかくボクより年下の子が来たのに、居なくなったらお兄さんできない!!」
あらら、なんとも可愛いらしい願望で。弟分が欲しいのかコイツは?
ふむ、総評するにどうやらこの三人はマルガレンを私達が雇うのに反対らしい。そんなにマルガレンと仲良くしていたのか? この短期間で?
「聞き分けなさい! それに私から見たらマルガレンをこき使っていたのは貴方の方に見えていたわよ? それはどうなの?」
あ、ドロシーが敬語を使わなくなったな。どうやら怒っているらしい。
後コイツ等が不満なのは体の良い子分が居なくなるのが嫌らしい。現にドロシーに問われてぐうの音も出ないのか悔しそうな顔をしている。
「はあ……。すみませんクラウンさん。この子達はマルガレン同様この教会で預かっている子達です。普段はやんちゃはするけど良い子なんですよ?それなのにこんなワガママを……」
「別に構いませんよ。でも──」
私はそう言ってエイスの前ににじり寄り、少し見上げる様にその顔を見る。
「な、なんだよ!!」
「いや、舐められっぱなしなのも少し癪だと思ってな。どうしたらお前等は納得する?」
「なんだオレ達とやろうってのか!? 年下のクセに生意気だぞお前!!」
「お前等がそうしたいなら私はそれで構わない。やり方もお前等が好きにしろ、付き合ってやる」
そう啖呵を切る私に少し気圧されたのか、苦い顔をして後ずさるエイス。それでも彼のプライドが許さないのかその目は依然私を睨み付けたままだ。
「い、いいぞ! 勝負だ!! 剣で勝負しろ!!」
剣で勝負? 私と? 話にならないじゃないか。
そう私が内心で困惑していると私の肩を後ろで静観していた姉さんが叩く。振り返ると姉さんはなんだかソワソワとした様子で落ち着きがない。
あー、姉さんは早く買い物に行きたいのか、ならここは適当にあしらって──
「三対一は卑怯だ、私も加勢するか?」
はい?
いやいやいやいや……姉さん? 死ぬ。この子達死にますからねっ!?
「姉さん冗談はやめて下さい! 私一人で充分ですから! 余裕ですから!!」
「む? 冗談ではないぞ? なに、極力手加減はするし、可能な限りハンデも受ける。ケガはさせんさ」
「ですが……」
「おい!!」
その呼び掛けに私と姉さんが振り向く。そこには顔を真っ赤にしてワナワナと震えているエイスが地団駄を踏む。
「オマエらフザケンナよ!! バカにしやがって!! 早く勝負しろ!! ボコボコにしてやる!!」
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