第七章:事後処理-3
ディーボルツは顎に手を当て考え込む素振りを見せる。そんな彼をただ黙って見つめるキグナスとハーティー。ディーボルツの考えがまとまるまでは傍観し、次に彼が口を開くのを待つ。
「…………危険は無いのか?」
「まあ、危険っちゃ危険ですけど、お館様が信頼してるジェイドさんの息子なんでしょう?」
「ふむ、だが奴とて人の子、失敗もする。何かの間違いで取り返しが付かなくなってしまっては遅いのだ」
「でもだからって五歳児をどうこうするのはちょっと……。いや大人気なく殺し掛けた俺が言うのも何ですがね?」
そう言いながら頭を申し訳なさそうに掻くキグナスに横に並ぶハーティーは呆れる様に溜め息を吐く。
「まあ、そうだな……。一先ずこの件は経過観察に留めておくとしよう。それと──」
ディーボルツは一息置いて執務机の引き出しから数枚の紙束を取り出し、それに目を向けながら話を再開する。
「お前達にも一応知らせておこう、スーベルクの件だ」
「スーベルクですか……。まさか奴も
「それに使用人にまでお館様の配下が紛れていたのでしょう?周りが敵だらけだったっていうのに一切気が付かないなんて…………。哀れな男」
そう辛辣な意見を口にするキグナスとハーティーだが、そんな二人を余所にディーボルツの表情は明るくない。寧ろ厄介事に直面した様な苦い表情を見せる。
「どうしたんです? 面白いくらいお館様の思惑通りだったんですよ? 少しくらい嬉しそうな顔をしても……」
「スーベルクが死んだ」
ディーボルツのその言葉に気楽に聞いていた二人の表情が強張る。そして互いに顔を見合わせ聞き間違いでなかったのを確認する。
「詳しくお願いします」
「見付かったのは昨日の早朝。上街を流れる川に使用人と思われる二人と一緒に発見されたらしい」
「死因は?」
「小型の刃物による失血死。どうやら腹を刺されたようだな」
ディーボルツは手に持っていた書類をハーティーに差し出し読むよう促す。ハーティーはそれを受け取り内容を確認する。キグナスもその横で覗き込むよう内容を読む。
「まさかあのチビの仕業じゃあ……」
「バーカ、ジェイドさんの息子さんはアンタが痛め付け過ぎたじゃないの! そんな状態でどうやってスーベルクまで殺すのよ!!」
そう言われバツが悪そうな顔をするキグナス。
「じゃあ一体誰が……」
「…………異種族、だろうな」
その言葉に書類に目を落としていた二人の視線は再びディーボルツへと向けられる。その視線を受け、ディーボルツもその理由を口にする。
「スーベルクと取引をしていた異種族、エルフの連中だ。奴らは狡猾で侮れん。恐らくスーベルクにどの段階かで見切りを付け行動したのだろう。でなければここまで早い動きは取れん」
「エルフですか……。ですがエルフ相手ならスーベルクも警戒するのでは?」
「《幻影魔法》……もしくはスキルを使って近親者を装ったのだろう。ただでさえ誰も頼れる者が居ない中に親しい人間が現れれば緊張の糸も切れるかもしれんな」
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