第六章:貴族潰し-18
私は今屋敷の裏手にある食料庫に身を潜め、消灯までの時間待機している。事前情報では屋敷内は子爵級という事もあってそんなに広くはない。
ただ厄介なのはやはりその警備兵の多さ。一つの廊下に最低二人、部屋があればその両脇にもう二人、大広間には五人もの警備を置いている。かなり過剰な数だが、それはスーベルクが父上の協力者と面会する時の為に用意した所謂〝見栄〟の面が大きいという。
「自分は貴方の警備にこれだけの数を用意出来る」というパフォーマンス。自己顕示欲ここに極まれりである。
と、そんなことは置いておいて、問題はその異常な警備である。いくら私が多くのスキルを所持しているとはいえ流石にこの数を見つからずに潜り抜ける事は不可能だ。故に先刻に聞いた消灯を待つわけだが、
「協力者、か……」
父上の協力者。父上は名前を教えてはくれなかったが、スーベルクがここまでのパフォーマンスをひけらかす相手、そしてこの国に国防を担う大貴族。一目くらい見ておきたい。だが当然、
「面談室なんか一番警備が厚いだろうな……。まあ、無理して見る必要もあるまい」
そう考えていると、予定通り屋敷内が一気に暗闇に包まれる。屋敷内は途端に騒がしくなり、一斉に動き出した警備兵の忙しない足音が重なり屋敷が微妙に揺れる。
私は一目散に食料庫を飛び出し、窓をスキル《鍵開け》で開け、屋敷内に侵入する。
スキル《鍵開け》は私に渡されているスキルアイテム「万能鍵」に付与されたエクストラスキル《開錠》の下位互換スキル。金庫ほどの複雑な鍵を開ける事は出来ないが、窓の鍵程度であれば針金一本で開錠出来る地味に便利なスキルだ。
私はその後金庫が置かれているというスーベルクの書斎に向かう。途中何度か警備兵と対面したが、スキル《
帰りの事も考え、すれ違い様に《
因みに《
そうして《
『確認しました。スキル《
随分と急だな。まあ、すれ違い様に警備兵を片っ端から《
私は廊下の曲がり角で一旦止まり、廊下の先を覗き込む。そこには暗がりにも関わらず一切微動だにしない警備兵が二人佇んでいる。聞かされていた情報が正しければあの二人の警備兵の間にある扉、あの扉の先がスーベルクの書斎、目的の部屋である。
チッ、そう簡単に事は運ばないか……。恐らくあの二人はスーベルクから何があっても動くなと命令されているのだろう。それに恐らく警備兵の中でも手練れ、その証拠に……。
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種族:人間
状態:健康
役職:派遣警備兵
所持スキル
魔法系:なし
技術系:《剣術・初》《小盾術・初》《
補助系:《危機感知》
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種族:人間
状態:健康
役職:派遣警備兵
所持スキル
魔法系:なし
技術系:《槍術・初》《大盾術・初》《
補助系:《危機感知》
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うん、これだけのスキル所持者が素人な訳がない。だがこうしてスキル確認をすると、胸の内がザワザワと騒がしくなって仕方がない。悪い癖だ、持っていない物を見るとつい欲しくなる。だがここでこの二人を相手にするのは無謀。盗賊の様なしっかりした技術のない者であれば不意打ちでなんとかなるが、警備のプロが二人相手、しかもスキル《危機感知》というのがある以上、勝つのはほぼ無理だろう。
さて、どうするか──んっ?
私は《気配感知》に引っかかったモノに気が付き、勢いよく背後を振り返る。すれ違った警備兵は全て麻痺させた。スーベルクがいる筈の面談室はこの廊下の先、背後から来るのはおかしい。じゃあ誰だ? もしやカーラット?
そう警戒する私に、陰る廊下の先からその姿を少しずつ現す小さな人影。ん? 小さな人影?
それは私よりも小さく、どこか怯えながらも私に話し掛けて来る。
「だ、だぁれ?」
それは紛れも無い子供。私より小さな子供であった。
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