第六章:貴族潰し-13
ふむ、二つか、中々なんじゃないか? しかも両方とも結構有用な《○○術》系が二つ、これで私の戦闘も一ランクアップといったところか?まあ、取り敢えずはその権能を確認しよう。自分に《解析鑑定》発動。
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スキル名:《短剣術・初》
系統:技術系
種別:スキル
概要:初歩的な短剣技術を使い熟せるスキル。初歩的な短剣を使用した技術系スキルの熟練度、習得率を上げる。進化系スキル《短剣術・熟》の取得条件の一つ。
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スキル名:《体術・初》
系統:技術系
種別:スキル
概要:初歩的な体術を使い熟せるスキル。初歩的な体術を使用した技術系スキルの熟練度、習得率を上げる。進化系スキル《体術・熟》の取得条件の一つ。
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成る程、予想通りかなり有用なスキル達だ。これらを極めれば戦闘面で苦労する事が少なくなるな。それにしても進化系スキルか……。スキル名の後ろに「初」とあるからまだ先があるとは踏んでいたが、そうか、進化するのか……。色々と気になる事が尽きないが、今は置いておこう。今はそれよりも……。
そうして私は短剣の男の顛末を余さず見ていたであろう残された二人、手斧の男とナイフの男、二人に視線を落とす。
二人は先程の凄惨な光景を目の当たりにした事により、その目からは涙が溢れ、股間を盛大に濡らしている。
どうやら私が本気なのだと伝わりはしたようだが、汚くてしょうがないな。臭いも漂って来て大変に不快だ。思わず眉間にシワが寄る。
まあ、それはさておき、
「どうやら十分理解した様だな。では改めて同じ質問をしよう。私にスキルを全て渡すか? それとも拒否するか? さあ、選べ」
実の所、先程も言った様にスキル《結晶習得》はさっきの一回が限度であるが、この二人にはそんな事知る由も無い。自身も同じ憂き目に遭うと考え、拒否の選択肢などないだろう。
スキルより命。私ですら流石にこれの優先順位までは変わらないのだから。
想定通り、二人は勢いよく一度の瞬きをする。それはもう必死に、命乞いが伝わってくる様に。
「よし。では私が今からお前達の手をそれぞれ握る。お前達はただその際に「私に全てのスキルを譲渡する」と、念じれば良い。痛みはない」
私がそう言うと二人はまた一回の瞬きをする。私はそんな彼等に近付き、地に伏す彼等に対してしゃがむ。未だ麻痺している動かない手を両手にそれぞれ握り、目を閉じてスキルを発動させる。
スキル《継承》発動。
瞬間、私の手の平にある魔間欠と彼等の魔間欠が一時的に繋がり、彼等の魔力が少しだけ流れ込んでくる。他人の魔力が流れ込んで来た事に多少の不快感を覚えるが、それを押し殺して作業を続ける。
すると彼等の魔間欠から、いくつもの力の塊が私に流れてくるのを感じる。私はこれがスキルなのだと確信すると高揚感が胸の内に溢れてくる。それにより口角が緩みそうになるが、なんとか精神力で抑え込み、スキルの継承を続ける。
大体体感で五分、スキルの継承が終わったのか、繋がっていた魔間欠が自動で離れ、スキルの発動が終了する。私は手を離して立ち上がり、具合を確認する。内に湧くのは得も言われぬ達成感と高揚感。身に余るほどの力の奔流が身体を駆け巡り、少しずつ馴染んでいく。ああ、これがスキル《継承》。素晴らしいじゃないか!!
『確認しました。技術系スキル《手斧術・初》を獲得しました』
『確認しました。技術系スキル《投擲術・初》を獲得しました』
『確認しました。技術系スキル《ナイフ術・初》を獲得しました』
『確認しました。補助系スキル《命中補正・I》を獲得しました』
『確認しました。補助系スキル《器用補正・I》を獲得しました』
『確認しました。補助系スキル《気配感知》を獲得しました』
『確認しました。補助系スキル《気配遮断》を獲得しました』
『確認しました。補助系スキル《罠感知》を獲得しました』
『確認しました。補助系スキル《鍵開け》を獲得しました』
『確認しました。補助系スキル《品質鑑定》を獲得しました』
お、おおおおおおおお!!
ふふふふ、祭りだ。スキル獲得祭りだ!! 最高だ!! なんと素晴らしい!! 私が求めていたのはこの達成感!! 高揚感!! 私はこの快楽が大好きなんだ!!
嗚呼、なんて、なんて甘美なんだ……。嗚呼、いつまでも味わっていたい。味わっていたいが……。
私は空を見上げる。もう完全に夜だ。ここから見える月の位置から計算すると、後約二時間程で侵入作戦決行である。宿屋に戻る時間を考慮すると余裕がない。今から直ぐにでも戻らなければ。
改めて地に伏す盗賊の二人に目を移すと、二人はすっかり気の抜けた様な顔をしている。そりゃあ命が助かったとはいえ努力と汗と涙の結晶であるスキルを全て失ったのだ。その落胆は尋常ではないだろう。
まあ、だが、何も一生スキルを習得出来なくなったわけではない。苦労はするだろうが、スキルは改めて習得すればいい。今は絶望で頭が支配されているだろうが、希望が潰えたわけではないのだ。
「復讐したければ更なる研鑽を積んで来ることだ。その復讐心でまた私に挑み、またスキルを献上してくれ」
私は彼等にそう言い残し、その場を立ち去ろうと背中を向けて歩き出す。
ここで逃せば私の事を上司やら同僚やらにベラベラと漏らす可能性もあるだろうが、「五歳の身なりの良い子供に信じられない身のこなしで完封されて、スキルまで奪われた」などと触れ回るのは抵抗もあろう。
それにそんな世迷言を薬物をやってるかもしれんような木端盗賊が話したところで、上司や同僚が鵜呑みにするなど滅多な事ではないだろうしな。
仮に信じるような有能な者が居たとするならば……。まあ、私に辿り着くまでには時間も掛かろう。それを想定して幾つかの対処法を練って──と、予想以上に時間を食ってしまった。早く宿屋に戻らなければ……。
「ふ、ふざぁけんなぁっ!!」
「む?」
「おぉ俺、俺達の、な、仲間と、スキルを奪って、ただ、で、すまぁすかぁぁぁっ!!」
目を血走らせ手斧の男がよろよろと立ち上がり、背後から金属音と共に私の頭上から斧が振り下ろす。その速度と軌道は滅茶苦茶であるが、このまま行けば確実に私の頭をカチ割り、胴体まで到達するだろう。
というか斧は何処から──ああ。よく見ればこの裏路地、武器屋の裏か。廃棄予定の剣やら何やらが樽に詰め込まれている。
少しはしゃぎ過ぎてしまったかな。慢心がこんな所で顔を出すとは、私も未熟だ。
……だが──
「大馬鹿が……」
《思考加速》と《見切り》、それと先程手斧の男本人から受け取ったスキル《気配感知》により、私はその斧を半身だけを動かして避ける。そうして予め短剣の男から奪っておいた短剣を拾い上げ、手斧の男の首目掛け切り付ける。
手斧の男はその動きを止め、目線だけをこちらに向けて来る。その目は激しい怒りと絶望、そしてどこか哀しさを宿し、そのまま鮮血を撒き散らしながら前のめりに倒れる。
はあ……。駄目じゃないか……。お前がそんな死に方をしたら、
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