第六章:貴族潰し-11

 …………ふぅ。


 いやはや、なんとかなった。流石に少し危なっかしかったが、なんとか三人組を倒す事が出来た。これが裏路地とか夕刻でなかったらコイツらもここまでの体たらくを晒さずに済んでいたのかもしれないが、私に目を付けられたのが不運だったと諦めてもらおう。


 さぁて、お楽しみのスキル収穫タイムだと、言いたいところなのだが、まだ一つ、解決せねばならない問題が残っている。


 それは未だに状況が飲み込めず、ただ唖然と裏路地の入り口で倒れ臥す三人を見る少女である。《影纏シャドウスキン》を発動させている現状、私の姿までは視認出来ていないが、その目は目の前の出来事を頭で処理しようとする必死さが垣間見える。


 …………うーむ、仕方ない。こちらから問い掛けるか。


「ここは物騒だ。早く逃げろ」


「はっ! え、えーっと……。助けて下さりありがとうございます! お、お名前を伺っても?」


 ……さて、どうしたものか……。まあ、ここは無難に……。


「名前を名乗る意味が無い。いいから早く逃げろ。まだ仲間がいるかも知れん」


「そ、そうですが……お名前を伺わなくては恩をお返し出来ません!」


「…………名など知らなくとも私と君にはわかるのではないか? 君も感じているのだろう? この抑えきれない形容出来ない感覚を」


「…………そうですね……。私達の間に一体何があるか分かりませんが、きっと単純なものではないのでしょう。今は、それを信じろ。そう仰るのですね?」


「大袈裟に言えばな……。わかったか? わかったのなら立ち去れ」


「わかりました……。ですが私にとって貴方は命の恩人……悪に鉄槌を下す正義の味方です!! いつか、いつか必ず貴方に報います! その日までまたどこかで!!」


 少女はそう言って背中を向けて立ち去る。その背中はどこか寂しそうであり、また妙な熱っぽさを含んでいる様に見えた。


 …………そういえば彼女に《解析鑑定》をやっていないな……。今後の為、念の為に確認だけしておこう。では《解析鑑定》発動。


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 人物名:アーリシア・サンクチュアリス

 種族:人間

 年齢:五歳

 状態:健康

 役職:神官見習い

 所持スキル

 魔法系:████妨害されました。

 技術系:████妨害されました。

 補助系:████妨害されました。


 概要:████妨害されました。

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 なんだ、これは。肝心な所がすべて妨害されてるじゃないか。まあだが妨害されたという事は私の《解析鑑定》を妨害出来るだけの力があるという事、つまり私と同年代でありながら近い実力を持っていると見ていいだろう。結果論ではあるが、やはり恩を売って正解だった様だ。


 彼女については後々調べる必要があるだろう。あの得体の知れない悪寒……。普通じゃなかったからな。


 神官服を着ていたという点、布教活動をしていた点を鑑みると、教会関係者か? そこでならあるいは──


 と、いかんいかん、今は取り敢えずこっちに集中だ。


 私は振り返り、未だに地面に倒れている男三人に目を向ける。そしてゆっくり近付き、彼等の武装を奪っておく。これは、まあ、後々使う。色々と、ね。


 そして次に抜かりなく改めて三人に《麻痺刺突パラライトラスト》を繰り出して麻痺を上乗せさせていく。これでもう暫くは持つだろう。


 さて後は、天声?


『はい、御用件はなんでしょうか?』


 私の周囲二十メートル以内に近付く者が居たら知らせてくれ。


『了解。アラームをセット……。セット完了しました』


 よし、これで心置きなく作業が出来る。スキル乱獲タイムの始まりだ。

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