第六章:貴族潰し-10
まずは手斧の男。コイツはスキル《気配感知》を持っている
私はスキル《思考加速》を発動させ手斧の男の死角を探す。降り注ぐガラス片に気を取られている手斧の男に一気に距離を詰め、懐から取り出したナイフを使いスキル《
これで手斧の男は完了。次に短剣の男を狙う。短剣の男を選んだのは、残りのナイフの男よりも単純に戦闘面で厄介だからだ。目眩しのガラス片も時間が経てば当然効果が薄れる。ナイフの男はスキル構成的に戦闘を得意とするタイプではない。それに比べ戦闘面でスペックの高い短剣の男は目眩しがまだ若干効果がある中で潰す必要がある。
《思考加速》で体感時間が引き延ばされている中、麻痺と足の腱を切られた事によって膝から崩折れる手斧の男に短剣の男が気が付く。短剣の男はその戦闘経験からか、すぐさま何者かの奇襲を受けたと理解し、腰にぶら下げていた短剣に手を掛け、私が居る所へがむしゃらに振り抜く。
短剣の男の凶刃が私の胴体に迫るが、私はすかさず《見切り》を使い、その刃を最小限の動きで躱し、短剣の男の懐へ一気に飛び込む。突然至近距離に迫った私に対し、短剣の男は反応し切れずに仰け反ると、私は短剣の男の股間目掛け全力で金的を蹴り込む。短剣の男がその衝撃と痛みに耐えかね前屈みになったのを見計らい、手斧の男と同じく《
《解析鑑定》でしっかり麻痺状態になったのを確認し、次は最後、ナイフの男だ。
だが既にナイフの男は私に対して完全に戦闘態勢を整えている。二本のナイフを逆手に持ち、こちらを睨みつけるナイフの男。しかしその目は私を正確には捉え切れていない。
何故ならば、既に時刻は夕方を過ぎ、日が沈んでしまっているためだ。夕陽に照らされてかろうじて陽が入っていた裏路地は夜の闇に完全に沈み、灯りが無ければまともに歩けない程に陰っている。
ただでさえこの闇の中で他者を視認するのは困難な事に加え、私は
「お、おい! マッシュ! トード! 無事か!? 何があった!! おい!!」
……返事はない。まあ、麻痺していてまともに口も開けない状態なだけなのだが、こんな視界が効き辛い暗闇の中で仲間からの返事が無くなれば、きっと想像してしまうだろう。最悪の状況を。
「クソっ!! クソぉっ!! で、出てきやがれ腰抜け野郎が!! 正々堂々やりやがれっ!!」
馬鹿だなぁ、そんな震え声で煽られてもちっとも琴線に触れないぞ?寧ろそんなに怯えられたら、脅かしたくなるじゃないか。
私は《
「うわぁあぁぁっ!!!!」
突然に首元に走る炎の熱と痛みにナイフの男は飛び上がり叫び声を上げる。うん、いいリアクションだ。さてさてでは……。
ナイフの男は思わず上げてしまった叫び声に対し羞恥で顔を紅潮させながらこちらに振り返る。そんな彼に私は満面の笑みと左手で《演算処理効率化》によって一切の魔力の無駄を省いた火球を腹部目掛けてプレゼントする。
ナイフの男は呻き声を上げながら狭い裏路地の反対の壁にまで吹き飛ばされ、激しく身体を強かに打ち付ける。ナイフの男はそのまま重力に従い地面に倒れるもギリギリで意識を保ったのか、なんとか起き上がろうとする。だがそんなマネを私は許さない。倒れ臥すナイフの男に近付き、すかさず《
ふう、と一息吐き、私は辺りを改めて見回す。そこには五歳児の奇襲に無様に敗北し、麻痺で動けずにいる大の大人三人の横たわる姿が裏路地の暗闇に包まれてた。
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