第六章:貴族潰し-8
男達は影に潜む私には気が付いていない。そのまま私が隠れる物陰の前を通り過ぎる。どうやら彼等は既に私を追って来た少女にしか目が向いていないらしい。その証拠に男達の口元は不気味に吊り上っている。
少女もその男達に気が付き、一瞬表情を強張らせる。だが流石私をここまで追い詰めた相手なだけあってその表情をすぐさま引き締める。
まったく、面倒な場面に出くわしたものだ。このまま男達と彼女が入り口に居座るなんて状況は勘弁願いたい。私が王都に来たのは初めてなんだぞ? そんな私が彼等が居る入り口以外の場所から宿屋に戻るなど不可能だ。なるべくなら早目に解決してほしいが……。
「あの、すみません、こちらから私と同じくらいの男の子が来ませんでしたか?」
なっ!? 何話し掛けてるんだっ!? 普通は逃げるだろっ!? どれだけ私を見付けたいんだっ!!
「へっへっへっ、しらねぇ〜なぁ〜……。それより嬢ちゃん、こんな裏路地に一人で危ねぇじゃねぇか、なんなら俺達が〝道案内〟してやろうか?」
あー、これはあれだ。よくある〝何処とは言わないが〟って奴だな。付いて行ったら最後、待っているのは奴隷という名の〝お人形〟生活。しかし、これはマズイな。何がマズイって──
「いいえ、結構です。知らないのであれば失礼しました。他をあたろうと思いますので、私はこれで……」
「おいおい待てよ、俺達の好意を無下にしようってのか? 案内してやるつってんだよ! 聞こえなかったのか!?」
「聞こえていますよ。ですから〝失礼しました〟と言ったんですが……。わからなかったんですか?」
「こぉ……こぉのクソガキがぁ……。ナメてんじゃねぇぞっ!!」
当然こうなる。私を一目見て全力で追いかけて来る様な彼女なら、こういう塩対応すると思ったんだ……。なんというか……、一つの事に集中すると視野が狭くなるという典型的な……。って、私は何を知った様な事を……。
「…………はあ、なんて不幸な方々なのでしょう。これは私自ら貴方方を〝幸福〟に導いて差し上げねばなりませんね」
「何をごちゃごちゃと訳の分からない事を……。大人を怒らせたらどうなるか、たっぷり痛みつけて教えてやるよ!!」
…………あーもうなんか滅茶苦茶だな。少女はなんか幸福に導くとか別の意味で怖い事言ってるし、男は子供相手に大人気なく暴力を振りかざそうとしているし……。ここからどうすればいい……。
…………待てよ?
私は物陰からこっそり顔を出し、男達三人に目をやる。そして私は《解析鑑定》をその三人に使う。だが余計な情報は表示せず必要な情報だけを読み取る。
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種族:人間
役職:盗賊
所持スキル
魔法系:無し
技術系:《短剣術・初》《体術・初》《窃盗術・初》
補助系:《筋力補正・I》
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種族:人間
役職:盗賊
所持スキル
魔法系:無し
技術系:《手斧術・初》《投擲術・初》
補助系:《命中補正・I》《気配感知》《気配遮断》
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種族:人間
役職:盗賊
所持スキル
魔法系:無し
技術系:《ナイフ術・初》
補助系:《器用補正・I》《罠感知》《鍵開け》《品質鑑定》
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ふむ。どうしようもないろくでなしのゴロツキでも、こうしてスキルを確認するとコイツらが宝箱に見えてくるから不思議だ。
さて、では私が何故この三人に《解析鑑定》を使ったのか……。それは勿論決まっている。
コイツらには私のコレクションの一部として還元されて貰うのだ。
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