第五章:魔法の輝き-9

「さぁて、と」


 私は目の前にあるスクロールが積もった山を前に気合を入れる。この山から五枚、隠密に有用なスキルを厳選して習得する事になる。


 まあ、今は先日の魔力欠乏から復活しきれていないし、魔法を習得するのに限界ギリギリまで魔力を更に使ってしまった。この状態でスクロールからスキルを習得しようものならまたブっ倒れるハメになる。だから習得自体は後日になる訳だが……。


 そうして私はまた頭痛がしないように山全体を《解析鑑定》でスクロールのスキル名だけを表示させる。まあ、これでも少し痛むのだが、《解析鑑定》の熟練度を上げるという点においては丁度良かったりする。


 そうして探す事一時間。時刻は既に八時を回り、メルラが言っていたようにそろそろ帰らなければ本当にマズイ。


 だが時間を掛けたお陰で中々良いスキルを厳選出来た。色々と惜しいスキルが多くあったが、背に腹はかえられない。そんな厳選されたスキルは以下の通り。


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 スキル名:《隠匿》


 系統:補助系


 種別:スキル


 概要:自身の情報を隠すスキル。熟練度に比例してその隠匿性が増していく。

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 スキル名:《見切り》


 系統:技術系


 種別:スキル


 概要:相手の動きを捉える事が出来るスキル。一度発動すれば再使用に五分の時間を要する。熟練度に応じて再使用までの時間が短くなる。

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 スキル名:《敏捷補正・I》


 系統:補助系


 種別:スキル


 概要:自身の敏捷性に少しだけ補正を掛けるスキル。自身の身体能力に応じて数値は変動する。

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 スキル名:《思考加速》


 系統:補助系


 種別:スキル


 概要:自身の思考時間を加速させるスキル。思考する時間のみを加速させ体感時間を倍に出来る。ただし使った時間に比例して魔力を消費する。

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 スキル名:《演算処理効率化》


 系統:補助系


 種別:スキル


 概要:演算処理能力を効率的にするスキル。魔力の操作や消費等の演算処理を効率化し、無駄な処理を省く事が出来る。

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 以上、かなり本気目に取捨選択をした。


 《隠匿》は単純に情報を渡さない為の備えだ。《解析鑑定》がいくら珍しいスキルとはいえ相手が持っていない保証などないし、それに準ずるようなスキルもあるかもしれない。そもそも屋敷に侵入するのに私の素性が知られる等以ての外だ。


 《見切り》は私の屋敷に侵入して来たハーボンのスキルを覗いた際に見付けたのと同じものだ。コイツがあれば万が一接敵してしまった時でもその場はなんとかなるだろう。まあ、運が良ければだが。


 《敏捷補正・I》は子供の私でも素早く身動きが取れる様にと選んだのだが、数字で分かるように本当に微々たるものだろう。だが無いよりかなりマシだ。


 《思考加速》は危機的状況に陥った際に解決策を模索したりする為に選んだ。まあ、別の意味合いの方が大きかったりするのだが。


 《演算処理効率化》は完全に魔法に頭が引っ張られた結果選ばれたスキルだ。何時間も魔法の訓練をして感じたのはもっと効率的に魔力を操作したいというものだ。どうも魔法の炎を作る際に不要な魔力を消費してしまっていたらしく、かなり効率が悪かった。そんな魔力操作を効率化してくれるスキルなんて願ったり叶ったりである。それに《思考加速》との併用や先程の別の意味合いとも関係していたりする。


 こうした理由で選ばれたスキル達。このスクロールを見ているだけで口元が緩んでしまって仕方がない。ああ、これで私はまた強くなり、スキル集めも更に上手く行くだろう。


 さあて、本当にそろそろ帰らなければ。母上の無言の微笑みは本能的な部分が逆らってはならないと訴えてくるのだ。あれをやられるととても敵わない。


「ねぇーー、もぉー決まったぁー?」


 おっと、メルラが帰って来た。というか私が選んでる間ずっと外にいたのか?


「はい、お陰様で。ところで、私が選んでる間ずっと外に?」


「んー? あぁー、リリーを家に送って行ったのよぉー。呼び出したの私だしねぇー、それくらいは私だって流石にやるわよぉー」


 成る程。まあ、リリーも中々の歳に見えたし、こんな夜じゃあ視界も悪いだろう。父上が治める都市とはいえ厄介な輩が全く居ないわけではない。まあ、リリーならそこらの輩じゃ相手にならないだろうが。


「ところでぇー、なんのスキルを選んだのぉー?」


「え?あ、はい、これです」


「………………見事にスキルの中でもトップクラスに高価なの選ぶわね貴方…………。ま、まあ……、言い出しっぺ私だし、良いんだけどねぇー…………」


「そうなんですか?まあ、約束ですので遠慮なく貰っていきますね」


「はいはい……。あ、そうそう、カーネリアが迎えに来てるわよ? 結構怒ってたみたいだけどぉ?」


 それを聞き私は一目散にスクロール屋の扉を開け放ち、その場を後にした。そこに立っていたのは顔に微笑みを貼り付けた紛れもない母上だった。

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