第五章:魔法の輝き-3
魔法。この世界における重要なファクターであり、私が全スキルを習得するという目標において必ず通る道。
そして今後私が一番力を入れる予定のスキル群である。
それを今?
「あの……そんな事可能なんですか?」
そう。魔法の習得は一朝一夕で覚えられるものではない。何故ならば、魔法スキルにだけスクロールが存在しないのだ。
スクロールというのは罪人からスキルを抽出し、封印した代物であるが、魔法スキルだけはそれが失敗してしまう。
理由としては魔法のその性質に由来するとされている。魔法は使用者の魔力を燃料とし発動する物なのだが、そのせいかスクロールに魔法スキルを封印する際にその魔法スキルそのものが魔力と共にかなり溶け出し易いらしい。
故に魔法スキルを封印したスクロールは存在しないのだ。
加えて魔法スキルを習得出来たとしても、それでは万全とはいえない。魔法そのものの修練も勿論必要ではあるのだが、それよりも重要な前提条件が存在する。
それが補助系スキルに分類される各魔法適性スキルである。
魔法適性スキルとは、その名の通り魔法に適性が出来るスキルである。
実はこの世界の魔法、ただ魔法スキルだけを習得したのではまともに扱えない。正確には使えないわけではないが相応のリスクを負うハメになってしまうのだ。
例えば火の魔法を習得した場合、そのものの発動は可能なのだが、魔法を行使した際に軽度の火傷を負ってしまうのだ。それも一発撃つ毎に必ず負ってしまうという割とシャレにならない事態になる。
他にも風魔法なら身体をカマイタチが襲うし、土魔法なら砂塵に巻かれる。水魔法にいたっては何故か体内の水分が失われるという極悪っぷりだ。
そんな魔法の副作用を無くしてくれるのが各魔法適性スキルだ。使用者が使いたい魔法と同じ属性の魔法適性スキルを所持する事で漸く魔法がまともに使えるようになるのだ。
つまり魔法を習得するということは覚える属性に則した魔法適性スキルも習得しなければならないのだ。
「うぅーん、それはクラウン次第ねぇーー。でも私、クラウンには才能あると思うのよねぇーー。」
才能って……。だからって今直ぐに習得など無理な話である。仮にそんな荒技が可能であるならば私の周りは魔法使いだらけだ。
だがメルラの言い分ではそれが可能である様な口ぶりだ。これは……何かあるな?
「つまりは可能なんですね? しかもまともな方法じゃない。危険なんですか?」
「うーん、まぁーねぇー。でもそのお金で満足いくスクロールを買おうって言うんだから、それくらいは覚悟、出来てるんでしょぉーー?」
うむ。実を言うと、望むところだという話である。いつかは必ず魔法は習得しなければならない。だが現状でその余裕が無いし、何より半年後には私も王都にある魔法学校の分校か剣術学校のどちらに入学する選択をする。そして私は魔法学校に入学する予定なのだ。その点において今からでも魔法を習得出来るのなら寧ろ好都合なのである。
「はい、望むところです。私に魔法を教えて下さい!!」
「えぇー♪ 良いわよぉー♪ でもぉ、教えるのは私じゃないのぉーー」
メルラは私に背中を向け、右手を耳に当てがい、誰かと会話を始める。その声は普段とは違い物静かでどこか暗い印象を含んでおり、私の耳までその会話の内容が届く事はなかった。
私が一体なんのスキルを使っているのかと訝しんでいると、会話は唐突に終わり、メルラがいつもの調子で私に振り返る。
「おっまたせぇー、今ぁ、先生を呼んだからもうちょっとだけ待ってねぇーー」
そう言ったメルラの顔は満面の笑みであったにも関わらず、どこか怪しさを潜ませているように見えた。
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