第五章:魔法の輝き-2
再びやって来たのはメルラのスクロール屋。
今回は一人でお忍びで来ている。
相も変わらず昼間だというのに路地裏な事もあってかなり暗いこの場所。妖しく光る魔法の炎がそんな薄暗さを不気味に演出している。
こんな店構えでよく潰れずにいるなと、心底謎に思うのだが、懇意にしている客がいるのだろうと適当に納得しておく。
さて、では気合いを入れ──
「あっらぁーーっ、クラウンじゃなぁーいっ!!
どぉーしたのこんな所にぃーーっ!?」
……早速見つかったな。
というか、何故メルラが店外に……。買い物でもしていたのか?しかし凄くあっさり背後に立たれてしまったな……。
「あ、ああ、メルラ、数日振り……」
「ホントよぉー、まさかこんなに早く会いに来てくれるなんてぇー。さぁさぁ、こんな所に突っ立ってないでお店に入りなさいなぁーー♪」
そう言いながら私の背中をぐいぐい押して店内に押し込めようとするメルラ。
私は前にこの店でも言った通り、メルラのこういうノリというか、テンションが若干苦手だ。というよりはこのタイプの女性が苦手なのだ。
姉さんも割とこんな感じのノリな時があるが、姉さんの場合は年齢的な意味合いもあって愛らしいので問題ないのだ。
と、そんな事より現状だ。取り敢えず店に入って来れたのは良いのだが、問題はこれから。どうやってメルラから複数枚のスクロールを調達するか、それが今回のメインミッションだ。
「さあーてっとぉー……、それでぇーー、今日はわざわざこんな所ににどぉーしたのぉー?」
「え、ええ……実は、私もっと強くなりたいと思いまして……」
取り敢えず嘘は言っていない。強くなるのは確かだ。だが、多分メルラは一筋縄じゃいかない。
「あらぁー、そうなのぉー? と、いうことはぁ、スクロールを買いに来たのねぇーー?」
「そう、なのですがぁ……。今、持ち金はこれくらいしかなくて……」
そう言って私は懐から私のお小遣い全財産が入った皮袋をメルラに差し出す。
「……うぅーん……流石にこれだけじゃ一枚、安いのだったら二枚が限界ねぇー。でもクラウンはそんな中途半端なスキルが欲しいわけではないのよねぇーー?」
まあ、はっきり言えばそんな中途半端なスキルも私の収集対象なのだが、今は真剣に隠密向きなスキルを妥協なく選ぶ。そうでもなければ侵入成功など程遠い。
「はい。なるべく有用なスキルが望ましいです」
「そうよねぇー……。でもぉー……うーん……。」
メルラはどうやら私の提案に悩んでくれているようだ。これは予想以上に好感触である。悩んでいるという事は検討しているという事。これは条件次第ではゴリ押しできるのでは?
「私に出来ることなら……まあ、可能な限り、出来る範囲でやります。ですからそのお金でなんとかなりませんか?」
「うぅーん、そぉーねぇ……」
顎に手を添えて店の中をぐるぐる回るメルラ。さあ、どうだ? 余程無茶なお願いじゃなければ私はこなしてみせるぞ!!
そう覚悟を決める私に対し、メルラは依然ぐるぐると回る。ホントこの人の言動はよくわからない。はっきり言って私は今回メルラには素気無く断られると踏んでいたのだ。
母上の姉なだけあってこの人は実は堅実な所がある。スーベルクが店に来た時もスクロールを渡せと言われたにも関わらず怯えたりせずに事情を聞いたりしていた。
故に「商売を舐めるな」と断って来ると思っていたのだが……。
「そうねぇー……、クラウンは魔法って使えたりするの?」
「え、魔法ですか? いいえ、使った事は有りませんけど……。」
魔法? なんでまた魔法なんだ?
「ならそうねぇー、じゃあクラウンには今回
「…………はい?」
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