幕間:とある少女の出会い

 少女は一人、森を歩いていた。


 その容姿はとても美しく、白黄金プラチナゴールドの長い髪が森から僅かに差し込む陽光を煌びやかに反射する。


 しかしそんな少女の服装は、とても綺麗とは言えない。白いワンピースは寧ろ所々に穴が空いており、泥で至る所が汚れている。その足には靴などもなく裸足だ。


 少女はそんな状態でも構わず森を歩いている。その足取りは覚束ない様子で、時々隆起した石や木の根に足を引っ掛け転びそうになっていた。


 何故そんな少女が森などをボロボロになりながらも歩いているのか。理由は単純、


 彼女は捨てられたのだ。


 少女はとある裕福な家に産まれた。それもただ裕福なだけではなく、少し特殊な家柄を持つ家庭だ。


 そんな家庭に産まれた少女には同じ日、同じ時に産まれた姉妹、双子の片割れである姉がいた。


 姉である彼女には特別な才能があり、それが判明してからは姉はまるで国宝でも扱う様に大切に育てられた。


 しかし妹である少女には、彼女程の才能は無かった。


 ただでさえ忌み嫌われる双子として産まれ、その上特出すべき才能を持っていない少女は寧ろ厄介者扱いされてしまったのだ。


 産まれて間も無く、少女の父は乳母に少女を捨てて来るように命じた。どこかの森にでも放置して魔物のエサにしてしまおうと考えたのだ。


 乳母はその命令に従い、まだ赤ん坊の少女を森まで捨てに来た。


 しかし短い時間とはいえ面倒を見た少女に情が湧いていた乳母は少女を森に捨てる事なく、こっそり自身の舎宅に持ち帰り育てる事にしたのだ。


 そんな少女は少しずつ、順調に成長し、四年の月日が経つ。


 乳母がいつもの様に仕事に出かけようとしたタイミングで舎宅に複数の憲兵が乗り込んできたのだ。


 乳母はそれを見て少女を匿っていたのがバレたのを察し、少女を裏口からこっそり逃すと自ら憲兵に出頭した。


 少女は戸惑いながらも無事に舎宅から逃げ延び、現在居る森へと至ったのだ。


 しかし、少女は既に限界だった。齢四つの少女にはこの森は過酷過ぎたのだ。


 飲まず食わずで二日、魔物に遭遇しない様気を張って森を歩む彼女は、ついに地面に倒れ込んでしまう。


 意識が薄れる少女。


 幼い彼女の頭に、死という体験するには早すぎるモノが迫る。


 そんな少女に、一つの人影がゆっくり歩み寄り、倒れる少女に手を伸ばす。魔法をかけ、薬を飲ませ、一命を取り留めると、人影は口を開いた。


「まったく、こんな子が一人で何をしてるんだい? まあいい、取り敢えずウチにおいで」


 人影、老婆は少女を優しく立たせると、その頼りない折れた腰を屈め、少女を背負う。


 これが少女ととある老婆の出会いであった。

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