第二章:歩み出す転生児-6
と、綺麗に意識を戻そうかと考えたが、私はここに来ていくつか疑問を抱いた。
エクストラスキルになってしまった《
という事は《
そう判断し《強欲》のユニークスキルを触れてユニークスキルがなんなのかの説明を見る。
どうやらユニークスキルとは複数のスキルの複合体という訳では無く、上位のスキルを親として他のスキルを子とした
故に親スキルにも当然権能が存在している訳なのだが、つまり元々ユニークスキルであった《
危ない危ない。もう少しでこんな単純な事に気が付かずに勝手の分からない異世界に挑むところだった。いや、逆にこのタイミングで知れたのは僥倖と言えるか?まあ、それはいいか。
今はもう一つ、《強欲》に初めから備わっていたスキル《魂魄昇華》と《魂魄進化》。この二つの結晶が展示されている場所である。先程館内を見て回った時にはその二つのスキルは確認出来なかった。
一先ずはこの二つ。この二つを確認したら今日の所は止めておこう。なんだかんだ体感でかなり時間が経過している。
もしかしたら心象世界にいる間は時間の経過が遅いとか、そんな事もあるかもしれないが、希望的観測は止めておこう。
そうと決まればまずは《
私は急ぎ足で《
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スキル名:《
種別:ユニークスキル→エクストラスキル
概要:この世界に存在するあらゆる物品を収集する事が出来るスキル。収集したいと思う物品、生物に触れた状態でこのスキルを発動すると、自身が取得している《
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おお、これは素晴らしい。つまりは私自身が広大なコレクションルームを所持出来るという事だ。収集癖に呪われた人間にとってこれ以上ない権能だろう。まあ、かなりピンポイントではあるが……。
さて次は《強欲》そのものの権能の確認だ。コイツは恐らく厄介な権能だろう。事と場合によってはスキルの発動を常時OFFにしておく必要がある。心しておこう。そうして私は改めて《強欲》台座の元へ向かいネームプレートにて説明書きを表示させる。
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スキル名:《強欲》
種別:ユニークスキル
概要:知恵ある者に宿る七つの罪源の一つを司るスキル。所持者に対し強烈な貪欲を宿らせるが、それらを支配下に置いた者を主人と認め権能を授ける。
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……権能というか、もはやバッドステータスだ。所持者に対して強烈な貪欲を宿らせ、か。まあ、心当たりはかなりあるが、この「主人と認め権能を授ける」という条件が判明しない限りは一応スキル発動をOFFにしておいた方が良いのか?うぅむ……。
……いや、別に問題無いのではないか?そのままでも。
そもそも私のこの世界での目標は全スキルコレクションという途方も無いものであり、そんな目標を掲げて居られるのは私の中の強欲のお陰でもある。もしこの強欲が薄れてしまった場合、私は今の人生に対し、何か他に遣り甲斐を見出せるだろうか?
ここは
魔法に剣術、未知の植物に未知の生態系、ドラゴンに精霊に、そして魔物に……。前世で体験出来ない刺激が私を待っている事だろう。
きっとそれだけで楽しい。
だが、私は確信している。それじゃあ私は満たされない。
それは果たして《強欲》のせいなのか?そうかもしれない。だがだからなんだというのだろう。それが私だ、関係ない。
これは誰に強要された訳でもなく自分で決めたのだ。だから曲げないし曲がらない。それで良い。
ユニークスキル《強欲》。私に貪欲を授け続ける呪いだが、寧ろこれは福音だ。一生飽きの来ない貪欲を授けてくれる。願ったり叶ったりじゃないか。
これで人生が楽しくなる。どうやら私はまた自分の強欲に背中を押されているらしい。
ならばスキルのOFFなど以ての外だ。このまま私に貪欲を注ぎ続けてくれるスキルを切るなど愚の骨頂だ。
さあっ! 私を導いてくれ《強欲》っ!!
その瞬間、目の前で妖しく光る《強欲》はその輝きを強める。血の様な光が辺りを埋め尽くし、視界が塗り潰される。
今度はなんだっ!?
私がそう反応した時、何処からともなく、小さい声が響く。
『共に征こうじゃないか、私よ』
一瞬、本当に一瞬だが、塗り潰された中に何かが見えた。
それはまるで手……そう右手が、私を見ていたような……。
と、そんな事を薄ら思っていると、塗り潰された視界が一気に開ける。目の前には《強欲》が先程より光が増した威容で展示されていた。
今のは一体……?
取り敢えず輝きが増した《強欲》の説明書きを改めて確認してみる。
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スキル名:《強欲》
種別:ユニークスキル
概要:知恵ある者に宿る七つの罪源の一つを司るスキル。所持者に対し強烈な貪欲を宿らせるが、それらを支配下に置いた者を主人と認め権能を授ける。このスキルを発動している間、スキルを習得する際に大幅な補正を掛ける。仮にスキルの習得に失敗した場合、代わりに魔力を消費する事で再習得に挑戦出来る。その際の習得に対し更に魔力を消費する事で習得率を上昇させる事が出来る。この権能は所持している全てのスキル習得に関わるスキルに適応可能である。
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……おぉ。おぉっ!
良いなっ! 良いなぁ、最高じゃないかっ!!
もはや感動している。素晴らしいっ!! 素晴らし過ぎるぞ強欲よっ!! ふふふふふふっ……。
……さてさて、若干呆れるくらい順調にスキルが整ってしまった。他人が見たら順調過ぎて怒られてしまうのではないか?もしかして空から転生神が私に加護でも与えてるのか?と妄想してしまう程だろう。
だが、今まで私が獲得したスキルは全てが全て〝スキルを習得する〟に特化したスキルだけである。そしてそれらは先程言った通り、〝戦って勝つ〟のが前提なものばかり。
順調は順調だが、今現在私には戦闘に対するスキルが何一つ無いのである。決して楽観視してはいけない。
まあ、現状赤ん坊である私にそれらのスキルを習得する術が無いのだから仕方がないが……。
今はいざ戦闘するとなった時に全力で備えるのが最善だろう。
さて、仕切り直しだ。後は《強欲》に備わっていた《魂魄昇華》と《魂魄進化》の二つを館内で探すだけなのだが、これに関しては結構アッサリ見付かった。
見逃していた、というより勘違いしていたのだ。私は展示されている結晶は全て台座に飾られているものだと思っていたのである。だが先程の二つスキルはネームプレートが取り付けられた〝盾〟に埋め込まれる形で展示されていたのだ。
私は全て台座に展示されていると思っていたのもあって目線が壁に行っていなかったのだ。それに加えて《
いやはや、知らなかったとはいえ何という間抜け。一人で騒いだのが虚しい。だが、これで今現在憂慮すべき案件は片付いた。
そろそろ現実世界に戻り、赤ん坊を続けよう。精一杯に生きるのだ。この世界を。
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