第二章:歩み出す転生児-4
私は、どうなった?
スキル発動を念じた瞬間、急に意識が暗転した。今も私の視界は暗闇に支配されている。
そんな私の現状はというと、コッチの世界に来る前の私──身体が無く、意識だけで漂う様な、
まだ全然時間が経っていないというのに懐かしく感じたりするのだが、何かがオカシイ。
もしかして、何か失敗でもしたのか? まさか赤子という未熟な肉体がスキルの発動に耐えられなかった? ……もしかしてまた死んだのか!?
そう考えた瞬間、止めどない不安が心に溢れ出る。
マズイ……マズイ、マズイぞっ!!
やはり赤子がスキルの発動に耐えられる筈がなかったのだ……。それなのに無理矢理使いでもすれば異常が起こるというもの……。もっと憂慮すべきだった……。マズイ、どうする?
私は思わず何か解決方法が無いかと辺りをあの時の様に目のない身体でキョロキョロと見回す。
しかし。そんな都合の良いものなど見当たる筈もない。
こんな事をしてもなんの解決にもならない……。馬鹿なのか私は……と、内心毒吐いていると──
ん? アレは……。
暗闇の中、何やらそう遠くない場所に何かが見えた。
アレは…建造物?
その瞬間、私はスキル《
そうこのスキル、自分の結晶化したスキルを博物館に展示出来るというモノなのだが、ではその博物館は一体何処に出現するのか?
……そう。そうだ博物館は自分の〝心象世界〟に顕現するのだった。
よくよく考えてみればそれもそうだ。自分のスキルを展示する博物館なんて、現実世界に反映出来る訳がない。
ということは、この暗闇は私の心象世界か? 随分とまあ殺風景ここに極まれりといった印象だが……。これも赤子の肉体故か?
いやしかし、確かに肉体は赤子で未熟だが、私には記憶や自我が確立されているんだぞ? なのにこの景色──というか最早景色と呼ぶのも
……心象世界……。
そうか、心象世界か。ならば──
そう思い私は試しにとある景色を思い描いてみる。場所はそう、見渡す限りの草原。遠くには大きな山脈が
と、そんな景色を想像した瞬間、何処までも続く暗闇はまるで色が足されていくかのように一変。目にも留まらぬ速さで変化した景色は先程思い描いた通りに視界に寸分違わぬ形で広がり終える。
おおっ……。これはまた、凄いな。
まさかここまで思い通りの景色になるだなんて思いもしなかった。これは面白い、心が躍る。他にも色々試したいが……。
そう、この心象世界に来たのは他でもない。自分の保有スキルを博物館で確認する為だ。目的を違えてはいけない。
そう思い至り、先程まで暗闇に浮き、今は広々とした草原の真ん中に
景色の変化にも対応し、先程から形を変えずにその博物館は存在するのだが……。
うぅむ。これが私の博物館か……。
私が最初暗闇の中に放り込まれて暫く博物館を中々見つけられなかったのには理由がある。それは──
かなり、小さいな。
その大きさは博物館と呼ぶには少々……いやかなり無理がある。見た目は大理石の様な素材で構成された寺院の様だが、どう見ても一般的な一軒家より小さい。山小屋より一回り大きいくらいだ。
これが、私の博物館?
いや、取り敢えず中を見てみなくては……。
そんな感想を抱きながらも私は博物館に入ってみる。
中は展示物を飾る必要があるからか、部屋が壁で区切られておらず、所々に柱が見える。そんな壁が無いお陰なのか、外見の割には広々している様にも感じた。
そして肝心の展示物、スキルはというと──
それはしっかりとその中央に展示されていた。
中央に置かれた台座には木目模様に輝く全長約五センチの正八面体の結晶が展示されていた。そしてその展示台にはネームプレートが取り付けられており、その結晶の名称が刻まれている。
そしてそのネームプレートに触れると、その結晶のスキルの説明書きが宙に浮いたスクリーンとして表示されるのである。
成る程、この中央の結晶がスキル《
浮かんだ予想を確認する為、私は博物館内を探索し始める。まあ、探索と言っても先程から言っている様に館内はそんなに広くは無い。軽く動き回る程度で他のスキルも見付けられた。
スキル《強奪》。同じく正八面体の結晶であり、その輝きは朱色と灰色のマダラ模様。
スキル《継承》。同じく正八面体の結晶であり、その輝きは黄緑と空色のマダラ模様。
といった具合にユニークスキル《
ついでにちゃんとクリーム色に輝く《天声の導き》も発見出来た。これで転生神が私を
……のだが、そこで私はとある違和感に気が付く。
《
最初は見間違いをしたのかとも考えたのだが、どうも気になる。
そこで私はどういう事かと館内を更に詳しく見て回る事にした。すると、館内の奥に少し薄暗い部屋が一室設けられていたのを発見したのだ。
訝しんだ私がその部屋に入ると、その部屋には広さの割には七つしか台座がなく、その一つ一つが他の台座と違い、何やら黒い鉱石の様な素材で作られており、少し禍々しい装飾まで施されていた。そしてそんな七つの台座の内一つだけ、一際妖しく光り輝く結晶が展示されていたのを見付ける。
なんだこれは? これも私のスキルなのか?
私は既に、《
ではこの結晶は?
私は恐る恐るその結晶が輝く台座に近寄る。その輝きは血の様に赤黒く、凶悪ささえ感じる程だ。いっそ美しさすら感じるそんな妖しい光を浴びながら、私はネームプレートの名称を確認する。
ユニークスキル《強欲》。
それが台座に刻まれた、そのスキルの名であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます