第二章:歩み出す転生児-3
早朝。体力全快で心地の良い目覚めを迎えた。
昨日無理をして頭を使った反動で寝こけてしまった。赤ん坊の身体を大人の調子で使ってりゃ限界なんてすぐ来るという想定をするべきだったか。
だがしかし、そうも言ってはいられない。
自我が確立している以上、思考しないなんて出来るわけがない。故に今後はなるべくエネルギーを使わないよう、最低限のアクションに留めなければならないだろう。まったく、融通の効かない身体は不便だ……。
まあ、そんな事は一まず置いておいて、昨日出来なかった事を済ませてしまおう。
それはスキルの確認だ。転生神を信用していない訳ではないが、やはり自分で確認しない事には落ち着かない。丁度今私は部屋で一人寝かされている状況。赤ん坊らしからぬ行動をしても怪しまれないだろう。
何より赤ん坊特有のリアクションをしなくて済む。アレは本当に、精神的にクるからな……。
そんな事で、スキルを確認しようと思うのだが……。
……どうやって確認すれば良い?
確かエクストラスキル《天声の導き》があった筈。それを発動させれば確認出来るか?
そう思い取り敢えず心の中でスキルを確認しようと念じてみるが……うむ、何も起きない。
次に良くあるゲーム画面の様な物が出ないかと手を左右に動かしたりしてみるが、やはり何も起きない。
……もしや……。コレはもしかして……。スキルを確認するというのは、今出来ない?
流石にそれは……、マズイのではないか?
転生神は確かに私にスキルを宿した筈だ。まさか神が私如きを
ならば出来ると思うのは自明の理だろう……。それなのに使えないとは……。
考えられる可能性としてはまだ赤子である私にその能力がまだ備わっていない、というもの。転生神は魂だけでなく肉体にもスキルの存在は影響するような事を口にしていた。
ならば赤子である私の肉体にまだ《天声の導き》を発動出来るだけの機能が無く、故に空振りしている……。
恐らく当たらずとも遠からず、だろう。まあ何も出来ない今の私ではこうして推測する事しか出来ないわけだが。
にしても、赤子とはいえそんな感じで問題無いのか?
あの転生神の物言いだと、この世界ではスキルの存在はかなり重要、それこそ生命線だ。なんせ魔物なんてものが居る世界。その分人間──まあ、他にも種族が存在するかもしれないが──が優位に立ててなくては繁栄など出来ない。
前世の世界で人間が盤石に繁栄出来たのは、人間の立場を脅かす他生物が居なかったからだ。
だがこの世界にはそれこそ人間並に、そしてそれ以上に知恵や暴力を振るう存在が跋扈していると聞いたぞ。そんな世界で人間が優位性を発揮出来るのが神々が作りし権能、スキルなのだと私は考えていた。
そんなこの世界の重要な要素であるスキル。それが赤子とはいえまともに使えない? あり得るのか?
そう思い、まだまだ成長し切っていない脳ミソで唸りながら考える。
もしや、スキルを発動するのにもスキルが必要だったりするのか? 流石に可能性は低いだろうが、だとすれば、厄介だ。
何せ今現在、新たなスキルを習得する術が恐らくだが一切ない。それを習得するまで自分のスキルが発動出来ないとなれば……かなり痛い。
私にとって、未知の力であるスキル。
ちゃんと習得しているのかという不安もあるが、それ以上に自分の力を把握出来ないのが不安なのだ。
今の私は赤子。例えどんな強力なスキルを持っていようと恐らく使いこなせないし、そもそも赤子など大人の前では無力に等しい。だからこそ自分の力をいち早く完全に把握し、どんな状況にも対応出来るようにしたいのだ。
こんな魔物やらドラゴンやらが存在しているらしい世界でなら尚の事。自身の力量を知る必要がある。
どうにかしてスキルを発動──ないし確認がしたい。本気でどうすればいい……。
……ん? 待てよ、確かにスキルは確認出来ないし《天声の導き》は発動出来ないが、他のスキルも使える筈だ。
なら私のスキル《
スキル《
これを発動出来れば、今抱えている問題を取り敢えず解決出来る筈。《天声の導き》のように肉体が伴っていなければそもそも使えない可能性もあるが、念の為に確認しておこう。どうせやる事など今は無いに等しいのだ。
ならば善は急げ、即実行だ。
そう思い、私は自分の心の中に意識を向け、そして強く念じてみる。《
その瞬間、私の意識は暗闇に落ちていった。
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