第一章:満たされる予感-4
『先程から言っている様に貴様は
ほう、流石は神。伊達ではない。魂の取り違え
『そも世界は数万数億もの数が存在している。其の世界一つ一つに我等の様な神々が居り、
世界が数億……。またえらい数を管理しているという印象だが、それもそうか。
この世に存在する数多の選択肢の先……つまりは並行世界なんて物が存在するのならばその数も
まさに神業だ。だか干渉〝出来ない〟ではなく、〝してはならない〟なのか。
『何故干渉してはならないのか。其れは
成る程。神の仕事にもルール、というか禁止事項があるらしい。当然といえば当然だが、神様とて間違いを犯さぬよう必死になのだろう。生前の日本でも5Sやらコンプライアンスやらと色々口煩い決まり事があった。神のような立場にもなるとそもそも職務の規模が違う。そういった事に気を配るのも当然の話か。
『さて、
……まあ、話を聞く限りそんな予感はしていた。というかただの取り違えなら問題ないと言っていた時点で察していたのだが、まさか今居るこの場所が正に〝異世界〟だとは……。ん? じゃあ何故私は無事なんだ?
『其れは此処は我等神々による〝神域〟であり、自覚は無いだろうが貴様は今我等が主神により其の魂を保護されているからだ。其れ故其の点については何も問題は無い』
いつの間にそんな所業を……。だが、問題無いと言われてもな……。消滅云々の説明を受けた後に言われてもイマイチ信用ならない。
『いやしかし、本当に危なかった。我等が貴様を引き上げた場所を覚えているか?』
引き上げた場所? いや、私にはただの永遠に続く真っ白な発狂空間としてしか見えなかったが……。
……まさか。
『そう。あの空間には本来ちゃんとした〝道〟が在るのだ。魂は其の道を辿る事によって輪廻転生を果たすのだ。しかし、貴様の魂は此の世界の魂では無い。故に当然拒絶反応を起こし、其れ故貴様には道が認識出来ずに無為に彷徨ってしまった。引き上げる直前、実は貴様の魂は消滅寸前まで消耗していたのだ』
……それは冗談では済まされないな。あの時点で消滅寸前だったなどと……。あのまま見付かっていなかったら今頃私は……。想像して私は思わず無い筈の身体で身震いする。本当、冗談では無い。
だがしかし、結果として私は助かった。助かっている。こうして魂だけだが無事でいる。後は神によって静かに輪廻転生を──
……とは行かないのだろうな。
そもそも何故私は取り違えられたんだ?世界創生から一度のミスもなく続けられて来た業務を、今更新人分神だからと早々間違う筈は無いと思うのだがな……。
『ああ、其れはだな……』
そう言って今迄説明していた分神は私を取り違えたという新人分神に視線を送る。新人分神はその視線に肩をビクつかせながら深々と頭を下げ、説明を始める。
『え、えーと……、じ、実は貴方の魂、此方の世界、貴方にとっての異世界の魂の波紋に
……何?
『実は私、新人として様々な経験を積む様にと先輩に言われて、他の世界の輪廻転生を少し手伝っていたのです。そうしたら其の中に此方の魂に良く似た波紋の貴方の魂を見付けて、私かなり慌てちゃって……』
……ほう。
『他の先輩方なら間違えないと思うんですが、私は未だ未だ経験が浅く、私自身仕事に対して自信が無いのも相まって、貴方の魂を私が間違えて持って来てしまった物だと勘違いしてしまったんですっ!!』
……あぁ。成る程。取り違えたとはそういう事か。しかしこれはまさに……。
『はい……。私は自分がとんでもない失敗をしてしまったと思い、怒られるのが怖いからとちゃんと他の先輩方に確認も取らず……。貴方の魂を此方の世界にコッソリ持って来てしまったのです……』
ふむ。やっぱりか。なんとも人間臭い。というかそのまま会社で失敗を隠したがる新人じゃないか。これでは上司も……。
『愚か者がッ!! 貴様仮にも転生神様の分神の一体で在ろうがッ!! 其れを貴様は幾ら似ているからと別の世界の魂を間違えるものでは無いぞッ!! 恥を知れッ!!』
まあ、怒るだろうな。これは上司の教育不足、監督不行き届きな面もあるにはあるが……。
というか似てはいるのか、私の魂。だが所詮は〝似ているだけ〟。この世界には合わなかったのだろう。故に消滅しかけた訳だしな。
『だが、不幸中の幸い。其処の新人が言うように貴様の魂は此方の世界の魂の波紋に似ている。其れ故此方の世界に混ざっても即刻消滅する事は無く、我等が見付ける迄彷徨えていたのだ』
いや、そもそも似ているから取り違えが発生したわけで論点をすり替えられてもこまるのだが……。
『しかし、事態は未だ解決していない。そう今此の場に在る貴様だ』
そう、それだ。何故間違えられたかは分かった。納得するしないの問題はこの際置いておいて、今後の私の処遇。私の命運である。
『結論から言おう。貴様を、貴様の魂を元の世界に戻す事は出来ない』
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