第16話
~トウリside~
アオが鳥(?)を一匹お供につけた頃、トウリは…。
「ふぅ……」
一人家庭科室の中、最後の荷をおろし一息吐いた。
夕日の橙色の明かりが窓のカーテンから差し込み、淡く家庭科室を包み込むように光が広がっていた。そんな家庭科室を見て先ほどのことを思い出す。
家庭科教師の
何事だと思いそちらをジッと見つめたが、人の声は聞こえず気のせいだったのかと頭を傾げながら音源に背を向けて家庭科室へと向かったのだ。
そして今に至る。
トウリは先ほどの事が喉に小骨が引っかかるように気になった。幸い後は鍵を返して帰るのみ。この後予定は何もない。
行ってみるか、そう決めるのにそう時間は掛からなかった。
元風紀委員長としては不審な点があれば即調べるような行動をこれまで取っていたが、今は引退してそうではないせいか気が抜けているのか不審な点があっても気のせいだったで済ませてしまった。
――しかしもしあそこで何か問題が起きていたら…?
そう考えてしまえば行動に移さない訳がなかった。
ガチャリ‥と窓の戸締まりをしてから二カ所の出入り口の鍵を閉める。幸い家庭科室と鍵を返す職員室は近いので直ぐに用事は済ませられた。
トウリは無意識下で早歩きで音の聞こえた方向へ向かうのだった。
◇
「確かこの辺りだったか…?」
トウリは一つのドアの前で首を傾げながら立っていた。
部屋の中を確認すると、埃を被った机と椅子しか置かれていなかった。加えて不自然な事に鍵がかけられておらず開けっ放しになっている。
誰かが出入りしたのか…?
それ以外に不自然な点はなく、埃を被った教室には誰もいない。むしろ誰かが居た気配がしなかった。←(幽霊は居た)
誰も居ないことを確認すると、埃臭い教室から退出しあてもなく歩く。
気のせいであったのなら良かった。だが、既に何かあってからでは駄目なんだ。そう、アイツみたいに…。
…不謹慎だったな。
それにしてみても、アイツの夢を見るとはな…。しかもかなり鮮明に覚えている。そして夢の中のアイツは泣いていた。(食堂の時)
その後に転校生に話しかけられて気分は最悪だったが…夢の中にまで出てくるとはな…。あいつが幽霊として俺の前に現れるなんて、そんな都合のいい話ある訳ない。
――でも、もしも夢で無かったら?
動かしていた足を止める。
――食堂を出て、それで…教室に来て…。あいつは何処へ行った?…何処かへ行った。行き先も告げずに。
この記憶は本当に夢なのか?
それとも俺の願望が作り出した記憶?
また足を動かした。
それも先ほどよりも早い足取りで。
会いたい。
その一言だけが頭に浮かぶ。
そして早足で歩く内、それらの疑問の答えがトウリの前に姿を現した。
―――肩に雀のような半透明な鳥を乗せて。
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