第14話
9話で矛盾してた所があったんで書き換えました。
他にあるんじゃないかと不安( ・_・;)
前の13話よりも長いですが飽きずに見てくだせぇm(_ _)m
以上
□ □ □ □ □
アオが謎の存在と攻防を始めた頃。
トウリside
はっ、と。目が覚めたかのように意識が戻る。過去を思い出していた内に居眠りしていたらしい。
気づけばもう授業の終盤だった。
頬杖を立てていた体勢を崩し、せめて残りの時間だけでもと教師の言葉に耳を傾ける。
運良くここまで自分は当てられなかったようだ。もしかしたら委員長という役職から免除されたのかもしれないが。過去を思い出していぼーっとしていた様だ。
気を取り直すようにペンを握りせめて残りの時間だけでもと聞く姿勢を見せる。予鈴が鳴るまで手を緩めることなくそれは続いた。
教師がチャイムが鳴る前に時間に気づき、そろそろ終わる気配を感じさせる。真面目に授業を受けていた生徒はそれが分かったのか必要のなくなった文房具からカチャカチャと音を立てて仕舞い始めた。
その姿を後ろの席からなんとなく観察していた。
……あいつは今頃何をしているだろうか。
今思うとあれは夢だったんじゃないかと思う。
確かにあいつは棺桶に入っていた。死んだのだ。
人間に限らず生物は死ねば二度と会えない。それが常識だ。
ならアレは俺の弱い心が見せた幻覚だったんじゃないか、この目で見たものだとしても信じられ無かった。
もしかしたら先程の事は、授業中に居眠りしたから見た夢だったのだとしたら……。俺は、少なくともあいつが死んで悲しんでいた、ということか。
はっ。思わず胸の中で失笑した。
今更…か、何もかもが手遅れだったのだ。あいつが死んだ時点で……。
あいつが追い詰められていたことにも気づけなかった。恐らくこの学園の中で一番一緒に居た期間が長かった俺が。
腕っ節と頭脳の高さから転入したての異例の速さで風紀副委員長にまで上り詰めた
何を思ってここまで来たのかは知らなかったが単純に人手が増えたことを歓迎した。風紀は万年人手不足だったのだ。
丁度副委員長の座は空いていた。
その頃はタイミングが良すぎて狙って転校してきたのかと思ってしまったほどだ。
……実際は親の転勤がありすぎて面倒に思い、寮暮らしで親に金以外に文句の言われなさそうな此処を選んだそうだが。
本人はそのとき清々した、というような顔をしており初めて見た表情だったので今でも覚えていた。星銀が口にした言葉の他にも含まれていそうな気がしたが、結局最後まで聞くことはなかった。
◇
今日最後の授業が終わった。
手早く机の上のモノを片付け鞄を肩から下げ、教室を出ようとすると廊下を通りがかった教師に呼び止められた。
家庭科担当の教師だった。曰わく、モノを運ぶのを手伝って欲しいと。
特に用事も無かった為、星銀の事は半分俺の弱い心が見せた夢だと思い込み、それを軽く了承した。
「すまんなぁ。最近腰の調子が悪くてのぉ、力持ちを探しておったんだ」
「何時もお世話になっていますから軽く使って下さい。仕事が無くなって丁度暇だったので」
「おお、そうかそうか。ありがとう。私が不調の時は力を貸してもらおうかの」
ほっほと柔らかに笑う相手にこちらの気持ちも和らぐ。
この家庭科担当の教師は最近赴任したばかりの教師だ。
新任がやってくると聞いて生徒たちは若干浮き足立った様子だったが、人の良さそうな高齢の教師が来たことで何事も無かったかのように興味を一瞬で失い勉強を始めた。
改めてこの学園の特徴を知らしめられた気分になり、複雑な心境に陥った。
だが、その人の良さと仕事の早さから高齢という多くの者から見れば弱点になる部分を覆していた。
外から来た教師ということもあり、この学園に少ないノーマルの異性愛者からは安心して話せる相手として知られている。
愛する妻が居ると公言しており暇さえあれば妻との写真を生徒に見せてくる変わった教師と評判になっていた。こういう所がノーマルの生徒たちや他の生徒たちにも安心材料になっているのだろう。
実際仲むつまじい様子の写真を見せてもらった事があるので事実だろう。
……だが一時。
彼の言った名前で生徒たちを静まり返らせた事があった。
―――名を
名字の漢字と下の名前こそ違えども、彼をどうしても連想させてしまう名字は、生徒たちに衝撃を与えた。
あるものは”復讐に来たのではないか”とか”死に関わった者の顔を見に来たのではないか”などと噂され、不謹慎な話題が学園中を駆け巡った。
だがそんな話題も白金という教師の仕事や人柄が知られていく内にただの少し変わった教師と認識されていき噂は数週間も経たずに消えていった。
生徒たちの記憶から白銀と白金の関連性の念は薄れていき徐々に話題にも出なくなるほどに。
だからこそ俺だけが、白銀とこの教師の関連性を忘れられずにいるのがおかしいのだ。
だが俺自身。何故周りはそんなにも早く忘れてしまうのかが分からなかった。
「あ、」
「? どうかされましたか」
「いやぁね、風紀に渡す予定の書類が出来ていなくってね。今日中に仕上げるつもりだったんだが……」
白金は風紀委員会の顧問をしていた。この学園で家庭科の科目の回数が少ないことから役割が回ってきたらしい。
風紀の書類はおおよそこれからある新入生歓迎会のことだろう。風紀を辞めた為、今年は普通に参加する事になりそうだ。
「…でしたら俺だけで荷物を運んで行きましょうか?」
「本当かい? 助かるよ」
「まぁ元々白金先生の分まで持つつもりでしたし、問題ありません」
「ほっほ。本当に優しいのぉ。……ほれ、これが準備室の鍵と家庭科室の鍵じゃ。往復する場合は手間だと思うが毎回鍵をかけてくれ」
「わかりました」
「ではのぉ」
「はい」
平坦な返事にも関わらず、穏やかに笑って職員室に向かった白金先生にやはり似ている…と感じた。
誰と言わずとも分かるだろう。彼、
去る白金先生の背中を見てから深く目を瞑り思考を切り替えた。そのまま考えていればその場を動くことが出来ない。
今俺がする事は決まっている。ならばそれを行動に移すだけ。
そう考え準備室へと歩を進めたのだった。
―――俺は忘れられない。
何故ならば……彼によく似た少年が写った写真を見たのだから。
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