第10話 よく考えたらまだ授業残ってんな、、、散歩すっか!
題名は主人公の現状の心情です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
トウリside
あれは高等部一年に上がり、風紀委員長の座を受け継いで数週間が経過した時の事だ。まだ桜もギリギリ咲いていた頃だった。
その日は慣れてきたばかりの仕事の内の一つである事務仕事を終わらせ、完成した書類を生徒会へ渡す為に生徒会室を訪れた帰りの事だった。
風紀室へ戻る途中、ついでに巡回しようと思い風紀委員の連絡網へ通達し、腕に腕章を着けた。腕章は仕事の時以外では余り着けないようにしている。といっても授業中や寮部屋に居るとき以外だと殆ど仕事中だが。
廊下を歩いていれば早速外から騒々しい声が聞こえてきた。
この騒々しさからして恐らく喧嘩だろうと当たりをつけ、近くのドアを通り抜け、駆け足でそちらへ向かった。
怒鳴る声や殴り合う音が聞こえるため、かなり激しい戦いをしているのだろう、と思っていたが、その光景を見ればそれは全くの思い違いだったことがわかった。
そこには山のように積み重なるボロボロになった生徒達と、その脇で服装を崩した生徒に殴り掛かられている白髪の男が居た。
しかし白髪の男は殴り掛けられている生徒に向かって勢いよく一回転し、鳩尾に蹴りを入れた。
あれはかなり痛そうだな、と当時は思ったものだ。
カハッと息を吐き出した生徒はそのまま倒れ込み、白髪の男は雑に倒れた生徒の襟首の後ろを掴み、人の山の天辺に向かって放り投げた。
ガフッと先程倒れた生徒から声が漏れ聞こえた気がした。追い討ちを掛けたな、、、。
そして仲裁しようと思い前に出ていた体が中途半端に止まっていたことに今更ながらに気づく。
ジャリ、、、と足音が聞こえたのか白髪の男が此方を向いた。
親衛隊が居そうな程に整った顔立ちだと思ったが、同時に見覚えの無い生徒だとも思った為、少し警戒した。
「、、、なぁ」
白髪の男が話掛けてきた。返事をしないのは失礼か、、、と思ったので一応返事は返した。
「なんだ?」
「君、ここの生徒?」
「、、、ああ」
部外者かもしれない者に教えて良いものか悩んだが、俺は今制服を身にまとって居るため隠してもしょうがない。
「じゃあこの学園の学園長室?って場所どこらへんに在るかだけでも教えてくれない?、、、一応これからこの学園に入る予定なん、だけど、、、」
少し山となっている生徒達を見ながら言う白髪の生徒らしき人物。よくわからないが最後の文が尻すぼみになっているのが少し気になった。
「一応名前を聞いてもいいだろうか?」
あれ、と言ってなかったか、というような顔をする彼に頷き先を促した。
「ごめんね、俺の名前は
ペコリと軽く会釈する彼に自分も名前を告げ、頭の隅で聞き覚えのある名前だと記憶を漁った。確かそう、生徒会の奴らが対応する予定だった転校生の名前と一緒だった。
どういうことだと思わず眉間に皺を寄せると星銀は不安そうに眉を下げた。
「すいません。やっぱこいつら伸したら駄目でしたかね、、、?」
「いや、こちらこそすまない。そいつ等については後で話を聞かせてもらう。確認だが、今日入学予定の転校生か?」
「え?はい。そうですけど、、、(転校初日に不良と喧嘩、、、俺も遂に不良認定かトオイメ)」
「生徒会、、、俺の着けている腕章と色違いのものを着けた奴は門に居なかったか?」
「え?いや誰もいませんでした。門にあったインターホン鳴らして名前名乗ったら開けてくれて、、、やっぱり何も言われてないのに入るのまずかったですかね?」
「何も言われていない、、、?暫くその場には居たのか?」
はい、と肯定するように頷いた彼に俺は首を傾げた。
彼が嘘を言っている様には見えない。というか生徒会が最近仕事を疎かにしていると聞いているためそちらに対しての信頼が薄いというのもあるが。
暫くそこに居たということは、インターホンからの聞き逃しの可能性は低いと言える。それにこの学園の機器は世界の最新で優秀なものばかりなため故障の可能性も低い。
と言う事は学園側の、というか生徒会の説明不足ということになる。そもそも転校生の迎えは生徒会の担当に含まれていた筈だ。門に居ない時点で既にアウトだった。
「すまない。完全に
そう言って腰を折る俺に星銀はえ、と声を出し固まった。
「いやいやいや大丈夫、です。のでえっとその、取り敢えず学園長室の場所教えてくれませんか?」
しどろもどろ答えた彼に分かったと返事をし、少し待ってくれと声を掛けて風紀委員の連絡網に山となっている生徒たちを医務室へ運ぶように指示した。
携帯をしまい彼の方へ振り向くと星銀は山となっている生徒たちを一人一人綺麗に並べていた。余りの奇行に目を剥いていると彼は俺の言わんとする事が分かったのか自分から話した。
「いやよく考えたら下の方にいる人息出来なくて窒息死しちゃうんじゃないかと思って」
真面目な顔で言う彼にそれもそうだな、と頷き俺も手伝おうと自然と体は生徒の山の方へと向かっていた。
数分後、駆けつけた風紀委員達は綺麗に並べられ、気絶した状態の不良達の姿を見て目を剥いたという。悲鳴を上げた者も居たとか居ないとか。
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