第9話 は、入りずれぇ、、、なんかしんみりしてるし、、、キラキラだし、、、

 誰かの声が少し気になったが、幽霊の俺に扉を開けることは出来ないためどうすることも出来ない。というかあそこで独りでに開いたら開いたで騒ぎになりそうな気がする。


 トウリくんが殺気だったままカツカツと歩いていれば自然と生徒達は脇へ避け、自然と道は広々としている。


 いや君ら偏り過ぎ、、、転ぶぞ?

 トウリくんを避け端の方へ端の方へと寄っていく生徒達。なんかここの場面だけ見ると虐めか不良かと思っちゃうね。表情変わってないのに。

 いやそれが余計怖いのか。納得。


  特殊な空間を通り過ぎ階段を上った先には教室があった。”3ーS”と書かれているため三年生だろうか。


 トウリくんが教室へ入ったため俺もそれに続く。扉をくぐった先にはまばらだが生徒が座っている。


 くっ!?なんだこの空間は!?顔の偏差値高杉!あ、漢字が、、、いや今はそれどころじゃない。高すぎて俺浄化されそう。イタタ目が、、、。


 ちょっとこの空間に居続けるの辛いし暫く離れておこう。ということで。


『ちょっとこの空間居るの辛いから離れるわ。この階には居るから。じゃ、また』


 とだけトウリくんに一方的に告げて教室から直ちに退散した。うぅ目が、、、。後遺症とか無いよね?


 まぁその内治るよね。願望も含まれてるけど。


 俺はそのままぶらぶらと3階を回ったのだった。



* * * * *


トウリside


 おい、と声を掛ける前に立ち去って行ったあいつに、これまで溜めていた黒い思いを吐き出すようにため息をついた。そのことに近くに居た奴に聞こえたのかピクリと反応している奴が居た。

 

 その事に気づき、少し申し訳なく思ったため軽く謝り自分の席に着き。精神を落ち着けるために授業の準備を手早く済ませた。


 あいつの前で涙を流すという醜態を晒したことに加え、あの転校生共に遭遇したことで自分の感情を抑えられなかった。


 あいつが涙を流すところを初めて見たのは一番の衝撃だったが。その後転入生達に遭遇したことで俺の機嫌は急降下した。


 あいつと会えるなんて思ってもみなかった。


 、、、いや、正確には願っていた、が正しいか。


 あいつが居なくなった時、俺の中の何かが壊れた。けれどその影響は表へは出ず、前に比べて増えた仕事に忙殺されていた。


 心無い奴だと言われた。言った奴の顔は覚えていない。どうでもよかったというのもあるかもしれないし、それに、その時確かにそうだとも心の中で共感したのも事実だ。


 ただ唯一、風紀委員達は何も言わずに俺の指示に従い続けてくれていた。そしてあいつの居ない時を風紀委員長として何ヶ月か過ごし、この学園にまた春がやってきた。そんなとき、あいつとの思い出を思い出していた。


 あいつとの関係は同僚、友人、一つ上の先輩。いずれかに当てはまるものだった。、、、だったというのは、あいつが死んであいつに対する思いがそれらに当てはまるモノでは無いとうっすらと気づいたからだ。


 別にどんな関係を望んでいた、とかは無かった。どんな関係でも良かった。関係が良好なら。離れていても話すことはできる。そう思っていた。


 けれどあいつは_____居なくなった。


 突然居なくなった存在に俺の心は追いつかず、ただただ日々を過ごした。変わらぬ日々を。


 三食キッチリ食べ、仕事をし、授業を受け、仕事をこなし眠りにつく。そんな日々。殆ど増えた仕事をこなしていたと思う。


 変わったのは、あいつの居なくなった些細な空いた時間だけ。


 そして怒りも悲しみも浮かばず無表情で過ごす俺を見て、周りは恐怖したように、嫌悪するように避けた。それも当然だと客観的に考えれば納得できる。だからその事に何かを思うことは無かった。


 3年生に上がり、風紀委員長の任を後輩へ渡した。

 これまで自分がこなしていたあいつと自分の仕事は後輩達が譲り受けた。あいつも風紀委員だった、アレでも。


 空いた時間が増えた。何をすればいいか、初めて分からなくなった。


 そしてそんな空いた時間は過去を思い出させた。思い出したのは死んだあいつ____星銀ほしがねアオと過ごした日々だった。


 もう殆ど覚えていない記憶だった。もしかしたら無意識に忘れようとしていたのかもしれない。そしてその少ない記憶を手繰り寄せた。手遅れでも、縋るように後少し後少しと記憶を辿った。


 始めに思い出したのは、悲しい事にこの学園ではよく起こる事件だった。

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