第5話 あれ俺また覗き、、、いや違います(冷や汗)

 二階の窓枠を軽々越え、中へと入る事が出来た。

 イエーイ。成功だぜ☆


 生徒はまばらにだが歩いていた。

 窓の外から突然人が入ってきたら流石に驚くだろうが生憎今の俺は実体の無い幽霊だ。誰も反応せずに通り過ぎて行った。それが少し寂しく感じた。


 きっとこの気持ちは記憶が無いからこそなんだろう。記憶があったならもっと辛かったかもしれない。ポジティブに考えるなら今記憶が無くて良かったと思おう。


 そんな事を考えながら、窓の枠に座り生徒たちを眺めていた。それにしてもさっきのヒカルって奴(いろんな意味で)凄かったなぁ。やっぱこの学校凄いなぁ。


 幽霊も居るしね。自分のことだけど。


 あ!学校と言ったら七不思議があったなー。俺以外の幽霊に会えるかもしれないな~まぁ見間違いとかがほとんどだろうけど。


 七不思議と言ったらトイレの花子さんだが、小学校でもないし、そもそも女子トイレがなさそうだからこれは無いか。


 生徒たちが早足で駆けて行くのを見ていると、とうとう最後の生徒が通ったようだ。生徒たちに付いていって授業風景見ようかと思ってたけどやっぱり止めるかな。校舎の探索するわ。


 どうやら自分は思っているよりも気分屋な様だった。


ーーー


 俺は今、ぶらぶらと二階の廊下を歩いていた。


 廊下には、全体的にキラキラとした雰囲気が漂ってる気がする。綺麗過ぎてちょっと居心地悪いが、、、これも俺が幽霊だからか?

 ここは学校の筈なんだが、城を彷彿とさせるような作りになっているんだよな、、、。



 ふとどこからか歌声が聞こえた。


 その声に誘われるようにふよふよと体を漂わせながら向かうとドアの横に綺麗な字で音楽室と書かれた扉が見えた。


 ドアが少し開いて半開きになっていた為扉に手をそっと添えて間から中を覗く。(あれ、、、俺また覗きして、、、?)という思考は置いておいて。


 中を覗くと生徒たちが席に座りながら1人の生徒の歌声を聴いていた。


 まさに天使の歌声と言おうか。聴いている生徒たちはほうっ、、、と聞き惚れているようだったし俺も同じような反応をしていると思う。


 今歌っている生徒じゃなければ今頃俺は、あんな大勢の前で歌うなんてなんて恐ろしいっ、、、とでも思っていただろうが、あいにく今歌っている生徒を前にしてみるとそんな考えは浮かばなかった。

 むしろもっと歌って!と俺の心の中のオタク魂がノリノリになっている。


 しかし自分の思うとおりに進むのは難しいもので、彼はもう歌わない様子だった。


 そのまま授業風景を眺めていたがやはり彼は歌わないようで授業は滞りなく進んだ。そのことを残念に思いながら立ち上がり、自分の気分が赴くまま漂いながら校舎二階を探検した。


 二階をあらかた探索し終えた頃、ちょうどチャイムが鳴り響いた。

 人の気配がしていた教室から生徒たちがぞろぞろと出て行く。その様をなんとなしに見ていると彼らはほとんど同じ方向に向かっていることが分かった。


 付いていってみると彼らは5人は横に並んでも余裕で通れそうな扉を潜っていた。


 人の流れに従って漂っていると美味しそうな香りがした。俺って嗅覚残ってたのか。


 衝撃の事実に目を見開いていると同時に此処は食堂なのだと実感した。

 生徒たちはそれぞれに動きメニューを選んで行く。生徒たちの持つトレイに乗った食べ物たちはとても美味しそうだ。


 流石に食べれないよな、、、。


 ちょうど近くの生徒がポテトを頼んでいたので手を伸ばしてみる。案の定手はポテトをすり抜けた。


 うわ、、、自分でやったけどさ、こんなん見たく無いよ。窓枠は触った感じしたんだけどな、、、。


 くっ、俺には匂いを楽しむ事しか出来ないのか!?


 そんな思いに苛まれていると


バァンッッ!!


 扉が力任せに開かれる音がした。


 びっくりしてずっこけていると辺りがしん、、、と静まりかえっていることに気づいた。


 ま、まさか俺が転ぶ所を見たのか、、、!?

 という妄言は置いておいて。


 原因は流石に俺でも分かる。さっき扉力任せに開けた奴だろ。そうだろ?

 案の定扉の方を見れば見覚えのある黒い固まりを頭に乗せた制服姿の奴が居た。


 、、、、、、ふっ。


 思わず笑いが漏れ肩が震えた。いやみんなに見えないのは分かってるんだよ?勝手に体が動いてこうなったんだ。うん俺悪くない。いや失礼なのは分かてるから一応謝っとくねヒカルくんとやら。すまん。


 ヒカルくんとやらは両開きのドアを両手で勢いよく開けたのか両手を中途半端に空中に浮かせたまま辺りをキョロキョロ?と見渡している。いや顔ごと動かすの大変そう。首痛くない?大丈夫?


 皆さん覚えているだろうか?彼の頭には重厚感のある髪が乗っているのだ。絶対重いと思う(確信)。絶対キログラムあるって。


 ってそんなことを言っている内にヒカルクンは何かお目当てのものでも見つけたのか顔を輝かせた。、、、と思う。


 彼の顔は重そうな髪と漫画でしか、いや今時の漫画でも余り見ない瓶底眼鏡を掛けているため表情など口元と雰囲気だけしか分からないのである。


 いやほんと君どうしてそんな格好してるの?え、首鍛える為?


 それと___その瓶底眼鏡ってどんな景色見えんの?(そこ?)

 おそときれい☆って叫んで?たけどあの瓶底眼鏡越しで見たら綺麗に見えるのかそれとも外が本当にとても綺麗だったか、、、。


 そういえば外見てなかったな。ふと思ったのだった。

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