第6話 正しいのは僕だ

 僕は少し緊張していた。


 先週の金曜日にクラスのみんなの前で大きな声を出してしまって、どう思われているのかがすごく気になっていた。みんなに避けられたり、嫌われたりしていないか凄く怖かった。

 教室に入り、何事もなかったかのように友達に声をかけると、普通に元気な返事が返ってきた。

 そこからはいつものようにお笑い番組の話をしたり、今日の昼休みに何をして遊ぶか話したりしていたら、すぐにいつも通りの雰囲気になっていった。


 どうやら僕の考え過ぎみたいだった。



 今日の五時間目は国語だった。

 先生はいつも通り、腰を低く落として足を大きく広げながら授業をしていた。でもみんなは少しいつも通りじゃなかった。なぜか少しざわざわと無駄話をしていた。

 きっと特に理由があるわけではないと思う。

 意味もなく誰かがこそこそ話しているのがきっかけで、私も、私もとつながっていってうるさくなってしまったのだろう。


 先生は少し困りながら「静かにね」と言った。


 でもみんなは誰も言うことを聞かなかった。確かに僕からしても教室はうるさかった。先生の声も聞こえにくくて、授業に集中できないから静かにしてほしかった。でも先生は困ったような顔をしているだけだった。


 僕は少し大きめの声で「静かにしなよ」と言ってみた。


 すると教室はすぐに静かになった。 

 先生はじゃあ授業続けるよとだけ言った。



 それからは教室がうるさいときに僕が注意することが多くなった。


 注意するとすぐ静かになるのがなんだか面白かった。


 でもその効き目もだんだん薄れていった。特にクラスのお調子者のS君は、僕が注意しても全く言うことを聞かなくなっていった。


 気が付けば僕はそれにとてもイライラするようになっていた。


 うるさくしているそっちが悪くて、静かにさせようとしている僕が正しいのに、それを分かってくれないS君が嫌いになった。

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