第3話 リーダーだから仕方ない

 僕は両手にはーっと息をはき、押しボタン式の横断歩道を待つ。

 ペッポーと音が鳴り、横断歩道を渡ると、誰かのお母さんが元気よく旗をふって、いってらっしゃいと言ってくれた。


 夜までTSUTAYAで借りたDVDを見ていたので僕はとても眠かった。

 頭がぼんやりとしていて、考えがうまくまとまらない感じがした。


 学校に着いても頭の中はくもったままで、一時間目から四時間目まで、とにかく、代表委員として寝ちゃいけないと思って頑張った。



 今日の五、六時間目は、僕の大好きな総合の時間だ。

 何が好きかと言われると、ただみんなと話していれば、あっという間に授業が終わるからだ。あとたまにやることがないときに、自由時間みたいになってドッヂボールができることもあるからだ。でも本当にたまに、真面目に、誰々が嫌なことをされたから、それについてみんなで意見を出し合うみたいなこともあって、その時だけはとてもつまらなくて嫌な時間だった。


 先生がわざとらしくクラスを見渡す。

「じゃあ今日はありがとう集会で何をやるかを決めたいので、今回は集会委員さんに前でお話してもらってもいいかな?」

「はい」

 集会委員の二人はとても嫌そうな顔をしていた。


 僕は代表委員になってからクラス、学年、全校生徒の前で話をする機会が増えたからか、人前で話すことにすごく嫌だという気持ちを感じなくなってきていた。二人を見ているとなんだかもう懐かしい気持ちになった。


 二人は気まずそうにしながら、ありがとう集会が日々お世話になっている先生、親、地域の人々などを招いて、おもてなしをするための集会であることなどを、つまずきながら話してくれた。


「説明してくれてありがとうね。それじゃあ具体的に何をやるかを決めるのだけど、愛川君手伝ってもらっていいかな?」

「えっ?!」


 僕は何で自分がと思った。


 集会委員の二人は「お願い!」みたいな顔をして僕を見ていた。

「僕ですか?」

 とりあえずすぐにはいと言いたくなかったから、先生に僕は聞き返した。

「大変かもしれないけど、この二人は愛川君とは違ってまだ慣れてないから手伝ってほしいんだ」


 僕の頭の中に色々な考えが浮かんできた。


 ――こういうことをみんなの前で言うのはずるい。やるかどうか聞くわけじゃなくて、やることは決まってるんだ。てか何でもう一人の代表委員の名前は出さないの。あと二人が慣れてないのは分かるけど、それは初めて代表委員として前で話してた僕も同じだし、それを自分でまず経験しないといつまで経ってもできるようにならないじゃん――


 でもだだをこねるのは良くないと思ったので「分かりました」と、なるべくやる気があるように思われないように僕は返事をした。


 そこからは僕が思った通りだった。集会委員の二人はすぐにクラスのみんな側に溶け込んでいって、いつも通り、僕が結局一人で話すことになった。

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