進展
春人と優香は、その場の流れから付き合った。
陽菜は涙を流しながらも二人を祝福して、二人は心から感謝した。
二人が付き合っても陽菜とは定期的に出かけた。
「え、陽菜さん就職するんですか?」
「うん。やりたいことが見つからなかったんだけど、そろそろそうも言ってられないかと思って」
春人と優香が本気で意外そうに陽菜の顔を覗き込む。
「陽菜さんもまだ若いんですから、まだまだ猶予はあるんじゃないですか」
「周りのみんな、もう就職しててさ。親もそろそろ就職しろって」
その無言のプレッシャーを想像して、春人は身震いする。
優香はわかりやすい反応こそ示さないものの、悲しげな目つきになった。
「それに、君たちを見てたら、わたしはもう大人になるべきなんだって」
どちらかといえば、こちらの方が本質に思えた。前半の理由は、あくまで理由付けのためだけに後から考えたものだろう。
きっと陽菜は、春人と優香に責任を感じてほしくなかったのだ。
「僕から見れば、陽菜さんはもう十分に大人ですよ」
「どうだろうね。まだ社会にも出てない人のことを、春人くんみたいな大人びた人はどう思うのか」
就活で疲れたのか、陽菜はひねくれていた。
「なんというか、陽菜さんは体つきが大人ですよね」
優香はシンプルにセクハラをする。春人はどういう顔をすればいいのかわからず目を逸らしたが、陽菜はなぜか満面の笑みだった。
「やっぱわたし自慢の魅力のボディだから。春人くんからの評価では優香ちゃんに負けても、胸とお尻の大きさでは負けないからね」
「お尻はともかく、胸の大きさには異論があります。わたしだって善戦してるはずですよ」
これ聞いてもいいのかな、と思うような会話ばかりが繰り広げられて、春人は割と真面目に耳栓を買ってくることを検討する。
そんな中で二人の会話はヒートアップしていき、ついには実際に胸の大きさを確かめようというところまで進む。
この流れでどうやって確かめるかといったら一つしかない。もちろん、春人を使う。
「どっちの胸が大きいか、触って確かめてみてよ」
一般的な男子高校生なら翼を授けられるくらいには喜ぶような言葉だが、春人にとっては荷が重くて仕方がなかった。
「そういうのは僕にやらせないでよ……」
「こうやってわたしがふざけられる時間も減るんだよね……」
陽菜が言う。
そう言われると、可哀想になってきて胸に手が伸び―—
「いや駄目ですよ」
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