こういう時はナンパされるのが常
「やっぱり、こういう時はナンパされるのが常だよね」
「だよね!」
優香が打ち立てた謎理論に、なぜか陽菜も賛成した。
春人は、なんか二人で意気投合してると思いつつ足を止めず進めると、陽菜に引き留められる。
「春人くんはどう思う?」
「僕ですか?」
なぜ自分が指されたのか困惑しつつ、精一杯考える。
「そうですね、まあいいんじゃないですか」
考えた結果ひねり出したあまりにも適当な返事に、優香も陽菜も春人をジト目で見つめる。
これはまずいと思った春人は、慌てて訂正する。
「えっと、優香と陽菜さんはとても可愛いので、普通の人よりはナンパとかに遭いやすいとは思いますよ」
満足のいく答えだったからか、優香は声を弾ませる。
「そうだよね、春人」
その笑顔から圧を感じて春人が一歩退くと、後ろには陽菜が控えていた。
その陽菜の後方から現れたのが、色とりどりに髪を染めたさらさら髪の男の一団。
髪色が派手すぎないかと春人はいらぬ懸念を抱くが、あれが警告色だと考えれば妥当だ。
「お姉さんたち、可愛いね。俺らと一緒に来ない?」
お手本みたいなナンパを見せる彼らに春人が抱いた感想は、「意外とまともなナンパだな」。強引なことはほとんどしないので、春人の介入の余地はない。
……余地はないはずだが、二人がこちらを見つめているのに気づいたので、一応喋りかけておく。
「すいません、お誘いをしているところ悪いのですが、彼女たちは僕と一緒に出かける予定があるので、お邪魔してもいいですか……?」
遠慮気味な僕の姿を認識して、彼らは申し訳なさげに去っていった。普通にいい人だった。
ただ、彼らに気まずい思いをさせるだけで優香と陽菜の機嫌をとることができたので、春人からしてみれば大収穫といったところか。
「春人くんありがとう、助けてくれて」
「いや、陽菜さん別に困ってなかったですよね」
「春人は女心がわかってない。女の子はこういう場面で助けられるのに憧れるものなの」
ちょっと主語が大きいと思ったが、それを言ったら不機嫌になりそうなので心の中だけにとどめておく。
「じゃあまあ、ちょっとだけ足止めを食らったけど、映画観に行きますか」
「そうだね。春人くん案内してよ」
自分でわかるでしょうと言いかけてやめた。これ以上ツッコんでも有意義なものは得られないだろうと判断したから。
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