幼馴染≒夫婦
玄関のチャイムが鳴る。どうやら春人と優香が帰ってきたらしい。優香は立ち上がり、ドアの鍵を開けた。
「陽菜さん、ただいま」
「春人くん、優香ちゃん、お帰り」
春人だけが帰りの挨拶をして、優香はちらっと陽菜の顔を見て目を逸らした。
春人と陽菜はそんな優香の様子を見て苦笑し、春人と優香は玄関に荷物を置いて陽菜の部屋に入る。
陽菜が二人にコーヒーを飲むか尋ねると、二人は頷き、陽菜は先ほど沸いたばかりのお湯で三人分のコーヒーを用意した。
陽菜がちゃぶ台に三人分のコーヒーを運び、床に座って二人に尋ねる。
「わたしの部屋にいるのはいいんだけどさ、二人の親はなんて言ってたんだっけ」
「うちは、なにも。優香がいるから大丈夫だって思われてるみたいです」
「わたしのところも、春人といるなら大丈夫って判断っぽいです」
春人と優香は古くからの幼馴染だから家族ぐるみでの付き合いがあり、それゆえに互いに互いの両親から信頼されていた。
陽菜は、二人のそういう関係を見ているのが好きだった。
「なんか、いいね。そういうの」
互いに信頼し合っていて、気遣い無用みたいな雰囲気が漂っている。
実際はそんなことなく、親しき仲にも礼儀ありということで互いに気を遣い合っているのだが、周りからはそうは見えない。
「夫婦みたい」
陽菜が無意識に吐いた言葉に、春人と優香は陽菜が淹れたコーヒーを同時に噴き出した。
二人はしばらく咳き込む。
「大丈夫?」
「すいません、部屋汚しちゃって。すぐ拭きます」
陽菜が二人を心配すると、真っ先に春人が部屋を汚してしまったことを謝罪する。同時に、優香も頭を下げた。
対して陽菜は、気にしないという風に手を振ると続ける。
「それはいいんだけど。二人は大丈夫?」
「わたしは、大丈夫です」
「僕も。突然夫婦みたいって言われてちょっとびっくりしただけなんで」
「それならよかった。掃除、手伝ってくれる?」
「もちろん」
陽菜が笑顔で言うと、春人は即答し、優香は台所からタオルを持ってきた。
「二人とも、ありがと。そのタオルは汚れてもいいやつだから、それで拭いてくれる? あと春人くんの分も用意するね」
なぜ優香が汚れてもいいタオルがどれかわかっているのかは誰にもわからなかったが、三人は協力して春人と優香が床に噴き出してしまったコーヒーを拭き始めた。
優香も陽菜も四つん這いになって床を拭いたことで、春人はその二人の谷間(なんの谷間とは言わないが)を見てしまったことを、ここに報告しておく。
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