二回目には彼女がやってきた。
面倒だな、と思った。彼のクラスメイトとはいえ、女の子一人で参加するわけがない。事実、彼女はわたしに穏やかならぬ敵意を向けている。わたしは大人であり、講師という立場なので、それには気づかぬフリをするが、生意気な子だ。
きっと、夏休みのデートを試みたのに邪魔をされたと思っているのだろう。前回の体調不良よる失点を取り返したいのか、彼から離れようとしない。わたしは彼らを隣同士の席に座らせてからプリントを配った。彼女を見ると、母親が見たら卒倒しそうな丈の短いスカートを履いている。どうせ、その中身はお子様の下着のくせに、彼にそんなものを見せようと思っているのか。
「さて、貴女はどこから始めましょうか」
「そんなの、先生が決めてください」
おお、と感心する。どんなに青臭くとも女は女。嚙みつかんばかりな態度だ。いったい、彼から何を聞いたのだろうか。わたしは彼の方を見ると、彼はプリントを手に持って真剣に考えていた。
わたしは彼と彼女の間に身体を入れて、それぞれの問題を説明した。彼女の方からは、似合わない大人用のトリートメントと香水の香りがする。そのちぐはぐさに、なんだか愛おしさを感じてしまい、彼女に対して少しだけ優しくなれそうな気がしてきた。わたしは彼には聞こえぬよう、彼女に「後でお話しない?」と言うと、彼女は素直な表情をして頷いた。
彼へのスキンシップは控えて、講師としての信頼を得ることに集中した。彼もだんだんと楽しくなってきたようで、あどけない笑顔をわたしと彼女に向ける。調子に乗ったのか、彼はわたしとハイタッチすることに抵抗を感じなくなってきた。彼女はわたしたちの手のひらが重なる度合いに応じで、眉の角度が鋭利になる。わたしはそれがとてもおかしくて、思わず笑ってしまうのであった。
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