第2話

……聞こえていますね?

返事くらいしたらどうなんですか。

もう二か月ですよ!?二か月!

私言いましたよねえ!?魔王が復活するって!

聖剣を!取りに!行って!くださいって!

このままだと世界が魔王に支配されちゃいますよ!?

もう今日は怒っています。

しりません。

あ~あ~。

貴方が裸の聖女とお風呂場で鉢合わせたこと、幼馴染に神託(チク)っちゃおうかな~。


……え?今日は村でベーコンをもらってきた?

村で一番美味しいベーコンを作るおじいさんの?

……それを、厚めに切ってステーキにして?

薄く切ったやつは、昨日のスープに……?


……いやいや


……いやいや~


……


_____________________________


勇者へ。

まだ寝てますね?

起きたら鶏小屋を覗いてみるといいでしょう。

素敵な恵みがあります。


……ベーコンエッグって、美味しいと思いません?


_____________________________


勇者へ。

お昼の休憩中に失礼します。

さっきの神託で言うのを忘れていたので、魔王討伐の旅に出るように伝えておきます。

昼から収穫する芋を使ってポテトグラタンを作ったら美味しそうだけど、チーズがないと聖女が言っていたので、村の者に神託っておきました。

夕方頃に持ってくるそうなので受け取りお願いします。

_____________________________


勇者へ!

朝昼晩の三回も神託してすみません!

ですが夕食のポテトグラタン!これはすごいですね!

お芋がホクホクで、口の中をヤケドしそうになるのに、この熱々を口の中に入れる瞬間が本当に幸せです!これなら毎日食べたっていいです!

え?チーズは高級品だからあまり頻繁には食べれない?

村の貴重な財源でもあるから、あまり何度も神託で頼むとよくない?

そ、それは……そう、ですね、すみません。


……いや、そうやって周りを案じる心があるのなら魔王討伐もあっこの男また都合悪くなると起きt

_____________________________


勇者へ。

顔の腫れは大丈夫ですか?

冷たい水を含ませた布で冷やしておくといいでしょう。

しかし……貴方、聖女が居候していること、幼馴染に伝えてなかったんですか?

私の神託を夢扱いしてる時から鈍い鈍いとは思っていましたが、ちょっとそれは配慮が足りなかったんじゃないですか?

しかし、大きな音の平手打ちでしたね。神界にまで聞こえてきましたよ?

……なんて、ちょっとした神界ジョークです。

それにしても、聖女にも驚きましたね。

まさか平手打ちされた貴方と幼馴染の前に立って貴方を庇うなんて……

あの子は幼い頃から聖女として育てられたので、同年代の友人なんてほとんどいなかったので……

あんなにしっかりとした意思で他人と相対するとは思っていませんでした。

聖女としてだけじゃなく、一人の人間としても成長しているのですね。

なんだか感慨深いです。


……あぁそうだ、これは光の女神ではなく、彼女達と同じ女性として、貴方にひとつだけ神託を授けます。

……貴方の幼馴染、今、貴方達が昔よく遊んでいたという沢にいますよ。

行ってあげたらどうですか?


_____________________________


勇者へ。

昨晩はおつかれさまでした。

……まぁ、女性へのフォローとしては及第点なんじゃないでしょうか。

しかし、これからが大変ですね?

まさか幼馴染と聖女が互いに貴方を奪い合う宣言をするとは……

なんだか昔読んだ恋物語のようです。

う~ん。神界から見ている私もどちらを応援するのか困ります。


とはいえ?

貴方、幼馴染、聖女。

これはもう、パーティー結成と言ってもいいのでは?

そろそろ魔王討伐の旅に出る時が来たのではないでしょうか?

旅先で出会う驚き、彼女達の新たな一面……

ほら、なんだか旅に出たくなってきたんじゃないですか?

_____________________________


勇者へ。

たしかに収穫は大事です。仮に魔王を倒しても、食べ物がなければ生きていけませんからね。認めましょう。

……ですが貴方、今日、次の種まきの話をしてなかったですか?

……え?次は麦?

パンが作れる?

その後は収穫祭で、村総出で御馳走が振舞われる……?

そ、そんな……そんなので懐柔なんてされませんよ、私は!

ラクレット……?

なんですかそれ……ちょっと調べてみますね。

……えっ!?

うわぁ、こんな、火であぶって、とけたチーズを、こんなに……?

わぁ……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

無題。異世界ものです。 @katabira

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る