第9話

アリスの話を要約すると、次のような内容だった............数日前、アリスが待ち合わせの場所に到着した時、すでにリバムはその場にいて、アリスを待っていたそうだ。

しかし、彼女の姿を見るなり彼は不機嫌な表情を浮かべて言ったのである。

「何しに来たんだ?もう別れようって言っただろう?」それに対して、アリスは反論したらしい。「私は、貴方のことが好きだから来たの............」

その言葉を聞くと、リバムの態度は一変したのだという。

先程までとは、打って変わって嬉しそうな表情を浮かべた後、こう言ったらしいのだ。「俺もだよ...........愛している」

そう答えた後で、彼はアリスを抱きしめたのだがその手が震えていたのだそうだ。

それを不審に思ったアリスは、彼の顔を覗き込んでみると驚いたのだという。

そこには、大粒の涙が流れていたらしいのだ...........。

それを見たアリスは、驚きつつも心配した表情で尋ねた。「どうしたの?何があったの?」すると、彼は泣きながら答えたそうだ。

「実は............」と言いかけたところで、言葉が止まったまま何も言わなくなってしまったという。

不思議に思ったアリスが、顔を覗き込もうとした時、彼がいきなり抱き締めてきたらしいのだ。

突然のことで彼女も驚いたらしいが、嫌がることはせず受け入れたのだそうだ。

それからしばらくして、リバムはようやく落ち着いたようで、その後で彼女に謝罪したのだと言う

しかし、アリスは彼にこう言われたのだそうだ。「俺たちはお互い好きだけれど、もう別れよう。これ以上、一緒にいることはできないんだ............」それを聞いた瞬間、アリスは強いショックを受けたのだという。

それでも彼女は、諦めずにリバムを説得しようとしたのだが無駄だった。

そして今日に至るまで、何度も話し合いを試みているらしいのだが、結局状況は変わっていないらしい。

彼女としても納得がいかず、悲しさと悔しさでいっぱいだったのだという。

話を聞いた僕は、胸が締め付けられるような思いだった。

彼女の力になりたいという気持ちが込み上げてきたが、現状ではどうすることもできなかったのである............。



その後、僕たちはアリスを連れて王都に戻ることにした。

彼女の為にも、一度頭を冷やした方が良いと思ったのだが、それでもアリスはリバムのことが心配で仕方なかったのだろう.............道中ずっと浮かない顔をしていたのである。

それから数日間は平穏な日々が続いたのだが、ある日突然事態は大きく動いたのだった。

それは、リバムからの手紙が届いたためである。

手紙には「明日会って話がしたい」という一言だけが書かれていたのだが、アリス曰くその筆跡は明らかにリバムのものだったのだという。


翌日、アリスはリバムに指定された場所に一人で向かったのだ。

そしてそこで待っていたのは、紛れもなくリバム本人だったのだが、その表情には以前のような明るさや優しさは、一切感じられなかったらしい............。

「君の荷物が残っていたから、持ってきたんだ。」

リバムはそう告げると、大きな荷物を差し出したのだ。

その中には、アリスの衣服や所持品などが入っていたのだが、一つだけ見慣れない物があったのだという。

それは一冊の本であり、表紙には『愛』という文字が書かれていたのだ。「これは...........?」アリスが尋ねると、リバムは答えた。

「それは大事な物なんだ。君に持っていてほしい」そう言って彼は微笑んだらしいのだが、その目は笑っていなかったのだ。

それから、しばらく沈黙が続いた後で、ようやく口を開いたのである。

「それで、君はどうするつもりなんだい?」とリバムが尋ねると、アリスは返答に困ってしまった。というのも、彼女自身もどうすれば良いのか分からない状態であり、未だに解決策を見出せていない状態だったからである。

そんなアリスの様子を見て、リバムはため息をつきながら首を横に振った後、言った。

「もう会うのはこれっきりにしよう、ありがとう」

その言葉を聞くと、アリスは呆然と立ち尽くしてしまったのだという。

しかし、それでも諦めきれずに何かを言いかけた瞬間だった..............。

突然後ろから声がしたのだ。

アリスが振り返ると、そこには見覚えのある姿があった。

僕が遠くから見守っていると、ルナが慌ててアリスの元に向かっていっていたではないか。

僕もつられてアリスの元に向かうと、「アダルバート様、アリスは大丈夫ですか?」と心配そうな表情を浮かべて尋ねてきた。

僕は優しく微笑んで答えた。「大丈夫だよ。今はちょっと混乱しているみたいだけど............でもすぐに落ち着くはずだよ」そう言いながら、彼女の頭をポンポンと撫でた後、僕自身も安心していた。


その後しばらくの間、アリスは塞ぎ込んでしまい部屋に籠もったまま、出てこなくなってしまったのだ。その間も、僕は彼女を励まそうと色々と工夫を凝らしていたのだが、なかなか上手くいかなかったのである...............。

それでも、少しずつ元気を取り戻しつつあるようではあったのだが、まだ心ここに在らずといった様子だった。

そんな時、僕の元に一通の手紙が届いたのである。差出人の名前は書いていなかったが、封筒には宛先として僕の住所が記載されていた。僕は不審に思いながらも、封を開けて中に入っていた便箋に目を通したのである...........すると、そこに書かれていた内容を見て驚愕したのだった。

それは、リバムからの手紙だったのである。

手紙の内容は、至ってシンプルなものだった。『アリスは元気だろうか、彼女のことを頼んだ』とだけ書かれていたのだが、その筆跡は明らかにリバムのものだった。

なぜ、彼がこのような手紙を送ってきたのか理解できなかったが、それ以上に気になることがあったのだ。

それは、リバムが残した言葉である『アリスのことを頼んだ』という言葉だ。それが、どういう意味なのか分からず、頭を悩ませていたのだが答えは見つからなかった。

その後、僕はルナと共にもう一度話し合いをすることにしたのだ。

僕の考えを彼女に説明したうえで、協力してもらうことにしたのである.............。

数日後、僕とルナはリバムの元へと向かっていた。

事前に連絡をしていたので、彼は既に待ち構えている状態だった。

僕たちの姿を見つけると、彼は笑顔で迎えてくれたが、その表情にはどこか影を感じたという。

「アリスのことを任せます」そう言って頭を下げるリバムの姿を見た時、僕は嫌な予感を感じていたのだ。

「任せるも何も、あなたはアリスのことをどう思っているのですか?」

と聞くと、リバムは答えた。「俺はただ、アリスのことが好きだっただけです」

その答えを聞いて、僕は納得した。やはり、彼は今でもアリスのことを愛していたのだ。だからこそ彼女を傷つけたくなかったし、一緒にいたかったのである............しかし、彼が選んだのはアリスと一緒にいることではなかったのだ。

こうして話し合いは終わったのだが、やはり問題は解決していなかった。

そして彼が立ち去った後、その予感は的中したのだ..........。


その日を境にして、リバムは姿を消したのである。まるで、煙のように消えてしまったのだという..........残された僕たちは、彼の行方を必死に探したのだが、結局見つけることはできなかったのだった。それが、1か月前の出来事である。



その後、アリスはしばらくの間塞ぎ込んでいたが、少しずつ元気を取り戻しつつあったようだ。そんなある日のこと、アリスは僕に声をかけてきたのである。「アダルバート様、もしよろしければルナも誘って、明日一緒にお出かけしませんか?」

と誘いを受けた僕は、嬉しくなって承諾したのだが、翌日待ち合わせ場所に行ってみると同じ場所でルナも一緒に待っていた。

そして、3人で出かけることになったわけだが、途中で事件が起きてしまったのだ..........。

「今日はありがとうございました!」そう言って頭を下げるアリスを、僕は家まで送り届けることになったのだが、そこでも不思議なことが起こってしまったのだ。

突然、雨が降り始めてしまったのである。



その時、僕は空を見上げながらふとあることを思い出した。数ヶ月前の、リバムからの手紙が届いていた時のことを、思い出したのだ。

その中身には『アリスのことを頼んだ』という短い文章が書かれていただけだったが、今になってその意味が分かってきたような気がしたのだ............つまり、リバムは最初からこうなることを予想していたのかもしれないと感じたのだった。そして、もしそうであるならば、僕はアリスを守り抜く覚悟で臨まなければならないと思ったのである。


翌日、僕はアリスと共に王宮へ向かった。

そして、そこで僕たちを待っていたのは国王陛下だった。

「よく来たな。まずは話を聞こうか............」陛下は、僕の顔を見るなりそう言ったのだが、その表情にはどこか疲れが浮かんでいるように感じられた。それはきっと、気のせいではないのだろう。

そう思った僕は、真剣な表情で話し始めたのだった。

僕が話し終える頃には、すでに夕方になっていた。長い時間喋り続けていたせいで、喉がカラカラに乾いてしまったのだが、それでもまだ語り足りなかったくらいだ。

それから、しばらくの間沈黙が続いた後で、ようやく陛下が口を開いたのだ。

「そうか...........そんなことがあったのか」

彼の表情には、様々な感情が入り混じっているように見えた。怒りや悲しみといった感情が見える一方で、どこか安堵の色も感じられたような気がしたのだ。「これから、どうするつもりだ?」と尋ねられたので、僕は正直に答えた。「これからも、アリスのそばにいようと思っています」そう答えると彼は少し驚いた様子を見せたが、すぐに納得してくれたようだった。それからしばらくの間話し合った後、僕たちは解散することになったのだが、去り際に陛下から呼び止められたのである。

「アダルバート、君はすごいな」

陛下のその言葉には、様々な意味が込められていたに違いない。そして僕も、その意味を理解していたのである。だからこそ、僕は力強く頷いて答えることができたのだった...........。


アリスが眠りにつくと、僕はこっそりと部屋を出た。向かう先は、人探しを行っているギルドだ。

「それで、僕の力が必要ということですね?」と尋ねられ、ギルドの職員は真剣な眼差しで見つめてきた。その目はやる気に満ち溢れており、思わず圧倒されそうになるほどだった。

その後、僕はアリスの事情を伝えると共に、調査を依頼したのだ。すると、職員は快く引き受けてくれたのだった。

これで安心して眠れるようになるだろうと思い安堵のため息をつくのであった。

翌日、僕はアリスの部屋を訪ねることにしたのだが、部屋の前で見慣れぬ男が立っていたのである..........彼は、僕に気がつくと近づいて来た。

「あなたが依頼人ですね?」と聞かれたので、僕は戸惑いながらも肯定した。すると、その男は嬉しそうな表情を浮かべながらこう言ったのだ。「ギルド職員から話は伺っていますよ。本当にありがとうございます」と頭を下げた後、彼は自己紹介をした。

彼の名はジャクリーンといい、王宮で働いている使用人の一人であるということが分かったのだが、どうしてここにやって来たのだろうか?その疑問を解消するために、僕が尋ねようとするよりも先に彼が話し始めたのである。

その内容を聞いた僕は、絶句してしまったのだった。なぜなら、彼の話によれば最近になって王宮内で不穏な動きが見られるようになり、国王陛下の身辺警護を強化していたのだが、その矢先に事件が起きてしまったのだという。

「陛下を守ってくれると約束してくれるなら、何でも協力しますよ。貴方が依頼した人探しもね」そう言って微笑むジャクリーンの表情が、どこか不気味に感じられたが、今は信じるしか選択肢はないのである。それからしばらくの間話し合った後、僕は彼と別れたのだった。

数日後、僕は再びアリスの元へ向かうことになったのだが、その目的は他でもないアリスが元気かを確かめるためである。

そして部屋で待っていると、扉が開き彼女が姿を現したのだが、その表情はどこか暗く沈んでいた。僕は、慌てて駆け寄り彼女の肩に手を置いたのだが、その瞬間彼女はビクッと身体を震わせたのである。

「どうしたんだ?」と優しく尋ねると、彼女は無言のまま首を振った後で、泣き出してしまったのである。

一体何があったのだろうか...........?

何が起きたのか全く分からないまま、時間が過ぎていく中、アリスがようやく落ち着きを取り戻したところで、事情を聞いてみることにしたのだが、彼女はただ一言だけ口にしたのだった。

「ごめんなさい...........」と謝るだけだったので、それ以上追及することはせず、僕は黙って頭を撫でてあげた。すると、アリスは安心したのか笑顔を見せてくれたので、安心することが出来た。それから、しばらくして彼女は小さくあくびをしたかと思うと、そのまま眠ってしまったのだった。

翌朝、僕が目を覚ますと隣で眠っていたはずのアリスの姿が、見えなかったのである。慌てて、周囲を探してみると彼女は庭にいることが分かったのだが、そこで目にしたのは驚くべき光景だった。

なんと、アリスが剣を手に持って外で素振りをしていたのだ............。

そして、それを見守っているのはジャクリーンだった。二人は真剣な表情で向き合っており、互いに言葉を交わしている様子はなかったが、本気のあまり睨み合っているようにも見えたのだ。

僕は、驚きのあまりその場に立ち尽くしていたが、ふと我に返ると急いでアリスのもとへ向かったのである。


「アリス!何をしているんだ?」と声を掛けると、彼女は驚いた様子を見せたが、すぐに笑顔になって答えた。「アダルバート様こそ、どうされたのですか?」

その言葉を聞いても、僕は安心できなかった。なぜなら、彼女の目は笑っていなかったからである。

まるで獲物を狙っているかのような、鋭い目つきをしていたからだ。僕は不安になりつつも、彼女に尋ねたのだが、返事はなかったのである。

その代わりと言わんばかりに、ジャクリーンが近づいてきたのだった。

「アリスに頼まれたんですよ。力をつけたいと。」

その言葉を聞いた時、僕はますます混乱してしまった。なぜ彼女は、急にそんなことを思ったのだろうか?思い当たる節はなかったし、何よりも危険だと思ったので、僕は必死になって止めさせようとしたのだが、アリスは首を横に振って拒絶したのだ...........。どうして、そこまで頑なに拒むのか理解が出来なかったのだが、彼女の瞳を見ているうちに何か理由があるのではないか?と思ってしまったのである。

結局、僕は渋々承諾することになったのだ。それからというものの、毎日のように繰り返される特訓風景を、目の当たりにすることになったのだが、そのあまりの大変さに思わず口を出したくなるほどであった。

しかし彼女からは意思を感じ、もしかしたらリバムのことも関わっているのだろうかと疑問に思った。


翌日、僕はギルドジャクリーンと共に、王宮へ向かった。もちろん、目的は国王陛下の護衛である。昨日までの特訓の甲斐があってか、アリスの動きは格段に良くなっており、ジャクリーンに引けを取らないくらいの強さを身につけていた。しかし、それでも不安が拭えないのは、彼女がまだ19歳という若さだからだろうか...........。

それとも、彼女が持つ特別な能力のせいだろうか?どちらにせよ、今は見守ることしか出来ないだろう。

僕はそう考えていたのだが、その考えが甘かったことを思い知らされることになる。


それは、まさに一瞬の出来事であった。

「危ない!」そう叫んだ時には遅かった..........刺客が剣を振り上げた瞬間、ジャクリーンは身を翻して避けたのだが、その拍子に足を滑らせ転倒してしまったのである。

その隙を逃さずに襲いかかってくる刺客だったが、間一髪のところで防御に成功したので、事なきを得たのだが、その時には既に手遅れだった。なんと彼の持つ剣には、毒が仕込まれていたのだ。それは、国王陛下に少しでも危害を与えるために、刺客自身が仕掛けたものだったに違いない...........。

僕は思わず言葉を失ってしまったが、その直後に我に返った僕は、即座に行動を開始したのである。

まずは刺客を捕らえ、尋問を始めた。彼はあっさりと情報を吐いたのだが、その内容は驚くべきものだった。彼曰く、命を狙ったのは命令によるものだという。

なぜ、そのような考えに至ったのか尋ねると、意外な答えが返ってきたのだった。

それは、数ヶ月に起きた出来事が原因だった。

何者かが、国王陛下を暗殺しようと企んでいるという情報をどこからか手に入れた彼は、いち早くその計画を未然に防ぐために動いたらしいのだが、それが仇になってしまったのである。

彼が情報を伝えた相手は悪徳商人であり、国王陛下ではなく自分の利益のために動いていたため、言うことを聞くどころか逆に利用されたということだったのだ。

結局、彼は証拠不十分で釈放されることになったのだが、ショックのあまり立ち直れなかったという。彼は「本当に申し訳ありませんでした..........」と、深く頭を下げたのだった。

彼は自分の国へと帰って行ったのだが、今回身に起こった出来事は、アリスにとって大きな影響を与えることになったのは、間違いないだろう。

彼女はそれ以来より、一層鍛錬に励むようになったのである。そして、今日もまた剣を手に持って素振りをしている姿を見た僕は、ため息をつくばかりだった。

日が過ぎて、王宮にも平和が戻ってきた時に、ジャクリーンが話しかけてきた。

「やっと平和になりましたね。では、貴方が望んでいた探し人を見つけることにします」

彼がそう言うと、僕は自然と笑みがこぼれてしまった。ついにこの時が来たかと思うと、感慨深いものがあったからだ。

ジャクリーンが調べてくれるまでの間、僕もリバムの足跡を追うために、準備することにしたのである。

こうして僕の冒険は、新たな展開を迎えたのだった。

それから数ヶ月が経過した頃のことだった...........ある街を訪れた僕は、そこで驚くべき光景を目の当たりにするのだが、その出来事こそがリバムに関する手がかりを探すための旅の大きな転機となったことに、自分自身ではまだ知る由もなかったのである。

「情報を辿っていけば、この地域にいるはずなんですけどね」

ジャクリーンが、顎に手を当てながら呟いた。

僕は「ここから近い場所なのかい?」と尋ねると彼は頷いて答えた。「はい、この辺りから西に向かった先の村だと思われます」

彼が指差す先には小さな村があり、その近くには川が流れていた。僕は、その場所に向かって歩き始めることにしたのだが、途中ジャクリーンが立ち止まったまま動こうとしないことに、気が付いたのである。

不思議に思っていると、彼女は申し訳なさそうな表情でこちらを見つめてきたので、何事かと思った瞬間のことだった。

突如として、背後から何者かの気配を感じたのである!急いで振り返ると、そこには怪しげな男が立っていたのだ。その男は、明らかに敵意を抱いている様子で、こちらを睨みつけていた。

「お前が、噂に聞くジャクリーンだな?大人しくしてもらおう」

そう言って男は、懐から短剣を取り出すとこちらに向かって一直線に走ってきたのである。僕は、咄嵯の判断で身を躱すと距離を取ったのだが、相手も諦めるつもりがないらしく、何度も攻撃を仕掛けてきたので僕は必死に応戦したが、相手の動きが素早くなかなか攻撃を当てることが出来ない...........このままでは埒が明かないと考えた僕は、意を決して反撃に転じることにしたのだ!そして、渾身の力を込めて剣を振るったところ、相手の服を切り裂くことに成功したのである!

「ぐあっ...........しまった!」

男は苦悶の表情を浮かべると、手に持っていた短剣を落としてしまい、それをジャクリーンが拾って遠くへ投げ飛ばしてしまった。「諦めなさい」と言うと、彼はそのまま立ち去ろうとしたのだが、男が叫び声を上げたのだ!すると、彼の身体が突然発火し始めたのである..........。

僕は、驚いてその様子を見ていたが、彼が苦しんでいる姿を目にすると急いで駆け寄ったのだが、目の前の光景が信じられなかった。

やがて男はその場に倒れ込んだので、僕は呆然として立ち尽くしてしまった。

しばらくして、我に返った僕は急いでジャクリーンの後を追いかけていったのだが、彼は既に姿を消してしまっていた。一体どういうことなのか理解が追いつかないまま、途方に暮れている僕だったが、しばらくすると謎の老人に声をかけられるのだった。「君が、リバムを探しているという冒険者かね?」

老人は僕の名前を知っていた上に、リバムに関する情報を教えてくれそうな雰囲気だったので、僕は藁にもすがる思いで話を聞いてみることにした。するとら老人は微笑みながら口を開いた。「君はリバムという男を探しているそうだが、私が知っている限りでは、リバムは遥か昔にいなくなってしまったはずだ」

その言葉を聞き衝撃を受けた僕だったが、同時に疑問が浮かんだので、尋ねてみたところ意外な答えが返ってきたのだった..........。

「リバムという名前は偽名であって、本当の名前があるんだよ」

それを聞いた僕は驚いてしまったが、老人は続けてこう言ったのだ。「彼の本名は、オランドという男だ」と。

その名前を聞いた瞬間、僕は背筋が凍るような思いだった。

動揺する僕に対して老人はさらに驚くべき事実を告げたのだった。「実はオランドには、生き別れの双子の兄弟がいたんだ..........それが、もう一人のリバムだ」

僕は、その言葉を聞いた途端に目眩を起こしそうになったのだが、何とか持ちこたえることができたのだ。そして、改めて老人から詳しい話を聞くことにしたのである。

オランドともう一人のリバムは瓜二つの容姿をしており、性格や仕草も全く同じだったそうだ。

しかし、ある日を境に二人の運命は大きく変わっていくことになる。

リバムはある日を境に失踪してしまい、オランドだけが残されたのである。その後の行方を知るものは誰もいないようだが、現在もどこかで生き続けているという噂もあるそうだ。

僕たちが探し求めているのは、双子の兄でオランドあるであり、僕の目的は彼と接触することであった。僕は、覚悟を決めて老人からの情報を頼りに、ある村へと向かうことに決めたのだった..........。

翌日、朝早くに出発した僕は途中で休憩を挟みながら歩き続けていたのだが、ようやく目的の街が見えてきたことに安堵した。

「ここまでくれば、大丈夫だろう」

そう思いながら、街の中へと足を踏み入れようとした時、突然背後から声をかけられたのである。

驚いて振り返ると、そこには黒いフードを被った男が立っていたのだ!男は、無言のままこちらを見ており、不気味さを感じた僕はその場から離れようとしたのだが、それよりも先に男の手が伸びてきたのだ..........。

そして、次の瞬間には僕の意識は遠のいていったのだった。

目が覚めると、そこは見知らぬ部屋の中だった。窓もなく薄暗い空間の中で、身体を動かすことも出来ずにいると、徐々に記憶が蘇ってきたのだ。

そうだ!僕は、謎の男に捕らえられてしまったのだということを、理解したのである。

不安に襲われつつも、何とか脱出する方法を模索していた僕だったが、そんな時にある男が姿を現した..........その男は、黒いフードを被っており素顔を隠していたが、聞き覚えのある声を耳にしたことで誰なのか瞬時に理解したのだった。「君は............」

思わず呟いた言葉に対して、男はにっこりと笑ってみせたのである。そしてこう口にしたのだ。

「お久しぶりですね、アダルバートさん」と!彼は間違いなく、リバムないしはオランドであった!僕は驚きながらも、彼に話しかけることにしたのだ。

彼の返事は、意外なものだった。「ご心配なく、私は貴方の敵ではありません。むしろ、協力したいと思っているのです」彼はそう言うと、僕に手を差し伸べてきたのである。

僕は、戸惑いながらもその手を取ったのだった。

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