第8話
しかし、そんな思いを振り払って、できる限りのことをしようと決意した僕は、レリアーミさんの看病を、することにしたのである。幸いにも軽症だったため数日で、彼女は元気を取り戻したのだが、その後も彼女の体調には注意を払うようにした。
そんなある日のこと、ルナが僕に対して言い出したのである。
「最近、あまり2人の時間がとれてないわね、忙しいの?」と............。それを聞いた僕は、思わずドキッとしたが平静を装って答えた。「確かに最近は忙しかったけど、これからまた時間を作っていこうと思ってるよ。ごめんね、趣味が楽しくて」
それを聞いたルナは、笑顔を浮かべたのだった。「本当!?嬉しいわ!楽しみにしているわね!」
それからというものの、僕たちはお互いに忙しい日々を送っていた。しかし、そんな中でも時間を見つけては会っていたし、二人の仲は決して変わることはなかったのである。
(本当に幸せだな............)と思いながら過ごしているうちに、あっという間に時間が過ぎて行ったのだ。そしてある日のこと、僕は彼女にプレゼントを贈った。それは、手作りのブレスレットであった。楽器作りの時に培った能力を駆使して、試行錯誤したのだ。彼女は、とても喜んでくれた上にその場で右手につけてくれたのだ!その姿を見て、僕は胸が熱くなった。
それからというもの、僕とルナはより一層愛を深めていった。彼女と一緒にいることで、安心感や幸福感を得ることができるようになったのである。
(やっぱり、僕にはこの人しかいないんだ............!)と思いながら、日々を過ごしていたある日のこと。
ルナがこんなことを言い出したのだ!「私ね、ずっと考えていたことがあるの............」と前置きした後で、言った言葉が衝撃的だった。「あのね、あなたと一緒に住むことを考えているの!」と。それを聞いた瞬間、僕は頭が真っ白になってしまった。まさか、そんなことを言い出すとは思いもしなかったからだ。
そして僕たちは、早速引っ越しをした。ルナは新しい生活にワクワクしているようだったが、僕としては緊張していたし不安もあったのである...........だが、時間が経つにつれて、その不安も徐々に薄れていったのだ。彼女が、手料理を作ってくれるおかげで食事面でも非常に満足しており、家に帰るのが楽しみで仕方がなかったのだ。
ーーそんなある日のこと、僕はルナに誘われて出かけることになったのだ。
行き先は、郊外にある宝石店だった。
そこで、僕たちは色々な店を巡りながら、楽しい時間を過ごしたのだった。そしてその夜、彼女は僕にこう言ったのだ。「あなたのことを、もっと知りたいの!............教えてほしいことがあるんだけど、良いかしら?」と。
それを聞いた僕はなんだろうと思いながら、受け答えた。「いいよ、どんなことかな?」すると、ルナは少し恥ずかしそうにしながらも、照れ隠しをした。
それからというものの、僕たちはお互いのことを語り合うようになったのである。その中で、彼女が悩みを抱えていることを知った僕は、アドバイスをしてあげたり、時には相談に乗ったりしていたのだ。
そしてある日のこと、彼女が突然こんなことを言い出したのだ!「ねえ、噂で聞いたのだけれど、あなたって音楽の才能があるのね!」と...........それに対して、僕は笑いながら答えた。「そんなことないよ!ただの趣味だよ!」と。すると、彼女は少し黙り込んだ後で、言ったのである。
「それでも、私はあなたのことが好きなのよ」と。それを聞いた僕は、思わず動揺してしまったが冷静を装って答えた。「僕も同じ気持ちだよ」と答えると、彼女も嬉しそうに微笑んでくれたのである。
(こんな幸せな時間が、ずっと続くといいなぁ............)
「あなたってこんな曲が作れたのね、すごいじゃない!」
アリスは感心したように、そう言った。
「いやいや、皆の応援があればこそだよ」
僕は、謙遜しつつも彼女に感謝の気持ちを伝えた。すると、彼女は笑顔を浮かべながら、こう言ったのである。
「これからも、頑張っていきましょうね!」
そう言って、僕の手を握ってくれたのだった。
僕は思わず嬉しくなり、それと同時にやる気も湧いてきたのである。「ああ、絶対に成功させるよ!」と言って、力強く握り返したのである............。
そして演奏会当日、会場は満員御礼であった。僕も興奮している中、隣に座っているレリアーミさんがそっと手を握ってくれた。彼女の手の温もりを感じるだけで、安心感が込み上げてきたのである。
(大丈夫、きっと上手くいくさ)
そう思いながらも、不安な気持ちは隠しきれなかったが、それでも彼女と一緒なら乗り越えられると信じることができたのだ。そして、ついに本番が始まり、僕たちはステージの上に立ったのである。
僕たちの演奏する曲は、クラシカルな雰囲気の中にも、遊び心を取り入れたアレンジを加えたものであった。観客たちは最初こそ戸惑っていたものの、次第に曲に引き込まれていったようで、手拍子や合唱が起きたほどだった。僕と、レリアーミさんもそれに応えるように演奏し、会場全体が一体となっているかのような感覚を味わっていたのだ............。
演奏会が無事に終了し、興奮冷めやらぬまま会場を後にすると、レリアーミさんが笑顔で振り返った。「ありがとう、本当に感謝しているわ!あなたと一緒に音楽を作っていけることが、何よりも嬉しいのよ!」
彼女の目には、涙が浮かんでいた。
僕は、そんな彼女の頭を撫でてあげながら「僕も同じ気持ちだよ」と言って、微笑み返したのだ。そして、僕たちは帰路についたのである。
「前回の演奏、聴いたわよ」ローネットさんが、感心したように話しかけてきた。
「ありがとうございます」
「それでね、またお話したいことがあるんだけどいいかしら」
「はい、喜んで引き受けます」僕はそう答えた。彼女は、嬉しそうな表情を浮かべながら、言った。「ルナの誕生日が近いじゃない?プレゼントを、用意しようかと思っているの」
「なるほど、それいいですね!」
「それで、相談に乗ってもらいたいんだけどいいかな?」
「もちろんです。どんなプレゼントがいいかな?」
すると、ローネットさんは考え込んだ後で答えた。「実はね、あの子は本が大好きなの。だから、本をプレゼントしようと思っているのよ」
「本ですか............でもそれだけじゃ寂しい気がしませんか?」僕は、疑問に思って尋ねた。
それに対して、彼女は少し考えた後で言った。「そうね..........確かに、それだけでは寂しいかもしれないわね.........」そしてしばらく沈黙が続いた後で、ローネットさんは言った。「それなら、私たち二人で一緒に作るのはどうかしら?」
「ああ、それはルナも喜びそうだ!」僕は思わず声を上げた。
そして僕たちは、早速取り掛かることにしたのだった。
それからというもの、僕たちはアイデアを出し合いながら試行錯誤を重ねていた。本のジャンルは様々であり、恋愛ものから冒険ものまで様々だった。ルナが特に好きなジャンルは、ロマンス小説だったので、それを中心に取り組むことにしたのだ。そして、ついに完成した本をプレゼントする日がやってきた...........。
「ルナ、誕生日おめでとう!」ローネットさんが差し出したプレゼントを見て、彼女は驚いた表情を浮かべた。
「これは............!」
「あなたへのプレゼントよ」ローネットさんは、笑顔で言った。「本当にありがとう...........大切にするね!」そう答えた彼女の目には、涙が浮かんでいた。その後は、彼女とローネットさんと一緒に楽しくお喋りをして、過ごしたのである。
(素敵な一日だったな..........。)と僕は心の中で思いながら、幸せな気分に浸っていた。そして、二人の笑顔を見ながらこれからもずっと仲良く過ごしていけることを、願うのだった。
次に僕たちが訪れた場所は、博物館だった。
展示されているものを、興味深そうに眺めながら、僕はアリスと一緒に歩いていた。
「この絵画、とても美しいですね」僕は、隣を歩くアリスに言った。
すると、彼女は笑顔で答えた。「ほんとね!こんな絵を描けるようになれたら、素敵よね」そんな彼女の言葉に僕は思わずドキッとしてしまった。
(こ、この子は何という向上心なんだ.............)と思いながらも、平静を装って会話を続けたのだ。
その後僕たちは、昼食を食べるためにレストランに入ったのだが、そこでふと思いついたことがあったので、彼女に聞いてみた。
「アリスって、料理とかするんですか?」すると、彼女は少し驚いた表情を浮かべた後で、言った。「えっ...........!?どうしてそんなことを聞くの?」
僕は、慌てて訂正し直した。「いや、別に深い意味はないんだけど、何となく気になってね」
すると、彼女は少し考え込むような仕草をした後に答えた。「ごめんなさい、あまり得意じゃないの」申し訳なさそうに言う彼女に、僕は慌てて答えたのだ。「いやいや!謝らなくていいよ!ちょっと気になっただけだったから、気にしないでください!」
焦って僕がそう話すと、でも、と言ってアリスが目を輝かせた。
「でも最近は、ルナと一緒に色々作ったりしているわ」
と、彼女が言った。
それを聞いて、僕は安心した。「そっか、それならよかった」と言って微笑むと、彼女も笑顔で返してくれた。
そして食事を終えた僕たちは、美術館の見学を続けることにしたのだが、歩いている最中にふと思いついたことがあったので、彼女に聞いてみることにしたのだ。
「アリスは、本を読むことは好きですか?」そう尋ねると、彼女は少し考えた後で答えた。「うーん............そんなに読むことはないけど、嫌いではないです」その言葉を聞いた僕は、目を輝かせて言った。「実は、僕も本が大好きなんです!」
すると彼女も嬉しそうな表情を浮かべた後で、言った。「それなら、今から一緒に図書館に行きませんか!?」
僕は、笑顔で答えた。「いいですね!行きましょう!」そして僕たちは、次の目的地として図書館へ行くことになったのである。
それからというものの、僕らは図書館巡りを楽しんだ後、帰り道で再びアリスと一緒に話し込んでいた……
そこでふと思い出して彼女に尋ねた。
「最近、アリスの前ではルナはどんな感じ?」
すると彼女は微笑みながら答えた。「最近のルナは、結構色々な方と交流を深めているようだからあまり話せていないけど、すごく元気そうよ」
僕はそれを聞いて安心したと同時に嬉しく思った。
「そっか、それならよかった」と言った後、僕は思い切って彼女に尋ねてみた。「ねえ、アリスはルナのことをどう思ってるの?」すると彼女は少し考え込んだ後で言った。
「私にとって、ルナはとっても大切な存在よ!」と答えた。そして、続けて言った。「でも今はあまり会えないから、ちょっと寂しいけどね...........」そんな彼女の言葉を聞いた僕は提案した。「そっか、それじゃあ、今度三人で話さない?アリスの話も聞きたいし」
それからというものの、僕たちは定期的に三人で話す時間を作ることにしたのである。
最初に、言い出したのは僕だった。
「ルナ、最近忙しいみたいだけど大丈夫?」と尋ねると、彼女は少し間を空けてから答えた。「うん、大丈夫だよ」と笑顔で答える彼女だったが、その表情は少し曇っていた気がした。
そこで、僕は話題を変えた。「そういえば、この前読んだ本が面白かったんだよ!」と興奮気味に話すと、彼女も興味深そうに聞いてくれた。そして、しばらく話した後で、最後にこう付け加えたのだ。「また近いうちに一緒に読書しようよ!」と言った途端、彼女は目を輝かせて大きく頷いた。
次に、アリスに尋ねた。
「アリスも最近どう?」と尋ねると、彼女は笑顔で答えてくれた。
「ええ、楽しいことばかりで毎日充実しているわ」
と彼女は嬉しそうに話した。「特に最近はルナと一緒に過ごす時間も増えてきたし、とても幸せよ」
アリスがそう言うと、ルナは聖女のように微笑んだ。
そんなルナが可愛すぎて、僕はつい見惚れてしまった。
そしてルナは「先生から頼まれた仕事があるの」そう言うと、彼女は苦笑いをしながら続けた。
「ちょっと大変だけど、楽しいから全然苦じゃないわ」と言った後、少し照れたようにはにかむ彼女はとても可愛かった。
最後に、僕は皆に微笑みながら言った。「そっか!これからも、三人で仲良くやっていこうね」と言いながらルナの頭を撫でたのだが、彼女は少しくすぐったそうにしながらも、嬉しそうだった。
ある日のこと、アリスが嬉しそうに僕に報告してくれた。「実は今度、ルナと一緒に旅行に行くことになったの!」彼女は、興奮気味だった。
その様子を見て、僕も嬉しくなりながら尋ねた。「どこに行く予定なの?」すると、彼女は答えてくれた。「まずは温泉に行って、その後で美味しいものを食べにいく予定なの!それからも、色々巡って遊ぶつもりよ!」と楽しそうに話すアリスの姿は、まるで子供のようで可愛らしかった。
3人で出かける当日、僕は待ち合わせ場所で二人を待っていた。すると、二人が手を繋いでやって来たのが見えた。それを見た僕は、微笑ましく思いながらも、心の中では少し寂しさを感じていた。
「二人ともおはよう!」と声をかけると、二人も笑顔で応えてくれた。それから、三人で歩き出すと早速アリスが話し始めたのだ。「あのね!実は、今日のためにルナと一緒にお弁当を作ったんだよ!」と言って自慢げにお弁当箱を取り出したのだ。
それを見た瞬間、僕は思わず感動してしまった.............。
何故なら、アリスの手作りの料理を食べれる機会なんて滅多に無いからである。
「わあ!すごいじゃないか!」と言うと、アリスは嬉しそうに笑った後で、言った。「それじゃあ、早速食べようか?」
昼食の時間になり、僕は箱を開けた。
すると、そこには色とりどりのオムレツやカルパッチョなど入っていたのだ。
どれも美味しそうで、思わず涎が出てしまいそうになるほどだった。
「さあ食べてみて!私たちの自信作だから、美味しいと思うよ」そうアリスがニコニコしながら勧めてくれたので、早速一口食べてみると.............これが本当に絶品だった!あまりの美味しさに、絶句してしまったほどだ。
そんな僕の姿を見て、ルナが微笑みながら言った。「良かった............喜んでくれて」
その言葉に、僕は満面の笑みで答えた。「凄く美味しいよ!ありがとうアリス!」
そして楽しい時間はあっという間に過ぎ、帰る時間になってしまった。
帰り際にアリスとルナはお互いの手を取り合い、僕にお礼を言ってくれたのだ。
その瞬間、僕の心は温かい気持ちで満たされた気がした............。
それから数日後、僕が休憩に本を読んでいると突然声をかけられた。振り返ると、そこにはルナの姿があったのだ! 彼女は、手に一冊の小説を持っていたのである。
「これは一体...........?」と尋ねると、彼女は微笑みながら答えてくれた。「これ、私が書いた小説なんです!是非読んでみてください!」僕は、驚きながらもありがとうとお礼を言って、受け取った。
その夜、僕は早速家でその小説を読むことにした。最初は、ドキドキしていたが次第に物語に引き込まれていき、一気に読み終えたのだ............そして最後、主人公が恋人に向かって語りかけるシーンで、僕の目からは自然と涙が流れてきたのだ。
そして、最後のページを読み終わった後、僕は余韻に浸っていた。
驚きつつ振り向くと、そこには笑顔のルナが立っていたのだ。「アダルバート様、どうでしたか?」と聞かれたので、素直に答えることにした。「とても感動したよ」
すると、彼女は嬉しそうに笑った後で言った。「そう言っていただけて、嬉しいです!」そして、彼女は少し恥ずかしそうな表情をしていた。
彼女の小説を読んだ感想としては、主人公たちの恋愛模様が丁寧に描写されていることが、印象的だったように思う。
特に主人公が恋人を想う気持ちや葛藤などが上手く表現されており、読んでいる側も共感できるような内容になっていたのではないだろうか。
そして何より驚いたのが、彼女が自ら小説を書いたという点である。
以前まで、小説を書くことに消極的だった彼女がこんなにも素晴らしい作品を書けるようになったことは、本当にすごいことであると思うし、彼女自身の成長を感じた瞬間でもあった。
翌日から、僕たちの仲はさらに深まっていったように思う。
以前は、お互い忙しい日々の中ですれ違いが多かったのだが、今は定期的に集まって一緒に過ごす時間を、作るようになっているのである。
その中で僕たちは、色々な思い出を作っていったのだ.............。
ある日のこと、ルナが僕に頼み事をしてきたのだ。「今度、またアリスと一緒に旅行に行くのですが、アダルバート様、お留守番を頼めますか?」と尋ねられたので、僕はもちろん承諾した。
「うん、大丈夫だよ!」と答えると、彼女は嬉しそうな表情でお礼を言ってくれた。「ありがとうございます!ちゃんと、お土産も買ってきますからね」と言いながら彼女は、僕を抱きしめたのである。
僕はドキドキしながらも、笑顔で応えたのだった。
(ああ、多分前に言っていた温泉旅行のことかな?)と思い出し、1人でほっこりしたのであった。
そして一週間後、旅行から帰ってきた二人は僕にお土産を渡してくれたのだ。アリスからはハンカチを貰い、ルナからは香水を貰ったのである。
どちらもとても素敵なデザインで、使うのが勿体無いくらいだった............。
アリスは、僕の顔を見るなり尋ねてきた。「あれ?なんか元気ない?何かありました?」
僕は首を横に振って、答えた。「ううん、何でもないよ!それよりもお土産ありがとう!」と言うと、アリスは微笑んで言った。「気にしないで!また今度も何か買ってくるね!」
その日の夜、アリスが泊まるということで、ルナとアリスは寝室に行っていたのだが、僕はまだ寝付けずにいたのだ...........。
そこで、本を読むことにして読み始めた。
しかし、集中できず結局そのままベッドに入ったのである。
それから数時間後、夜中になって目を覚ました僕は、起き上がるとリビングに向かったのである。そこには二人がソファに座っていたが、何故か少し不思議な雰囲気を感じた。
「おはよう」と声をかけると、ルナは驚いたような表情で振り返った。その表情からは、焦りのようなものが感じられたのである。
続いてアリスも振り返ったが、何故か無表情だった。
しかし、すぐにいつもの笑顔に戻った後で言った。「すみません、ちょっと夜更かししてしまったようで............」
彼女はそう答えた後で時計を確認した後、急に立ち上がったかと思うと、僕に向かって微笑んできた。そして、そのまま僕の横を通って寝室に行ってしまったのだった。
その後ろ姿を見ながら、僕は何故か胸騒ぎを覚えたのだが、今はどうすることもできなかったのである.............。
翌日から、アリスとルナの様子がまたおかしくなったのである。
それは、まるで演技をしているような感じだった。
僕の前では笑顔で接してくれるのだが、どこか無理をしているような雰囲気を感じていた。
そしてある日のこと、僕は意を決して尋ねてみたのだ。
「最近、何か悩んでいることでもあるの?」と尋ねるとアリスは一瞬戸惑った様子を見せたが、すぐに笑顔に戻って答えた。「いえ、何もありませんよ」と言う彼女の言葉とは裏腹に、僕は直感的に嘘をついているのだと感じたのだった。
そんなある日のことだったのだが、急にルナが僕の部屋に遊びに来たのである。しかも、珍しくアリスも一緒ではなかったのだが、それでも僕は嬉しかったのだ。ら
「こんにちは」と挨拶すると、らルナは微笑んで答えてくれた。
しばらく雑談した後で、ふと気になったことがあったので、尋ねてみたのだ。
「そう言えば最近、アリスの様子が少し変なんだけど何かあったのかな?」すると、彼女は少し考え込んだ後で言った。「いえ、特に思い当たる節はないですね...........」と言った後、続けて言ったのである。
「でも、心配ですよね..........」その言葉に、僕は頷くことしかできなかったのである。
そしてしばらく沈黙が続いた後で、彼女が口を開いたのである。
「アダルバート様、一つお願いがあるのですが.............」
「ん?なに?」と聞き返すと、彼女は真剣な眼差しで僕を見つめながら、言ったのだ。
「実は、アリスに想い人ができたそうなのですが、御相手が中々厄介そうな方で............」
そう言った後で、、ルナは悲しげな表情を浮かべた。そんな彼女を見て、僕は心臓を鷲掴みにされたような思いだった。
「何があったの?」と尋ねると、彼女は話してくれた。
ーーある日のこと、アリスは偶然街で出会った男性に、一目惚れしてしまったらしいのだ。そして、何度かデートを重ねていくうちに、二人はお互いに惹かれ合っていくようになったらしく、ついに恋人同士の関係になることができたのだそうだ............。
そこまで話すと、ルナは一旦息を吐いてから再び話を続けたのである。
「しかし、最近になって彼がとんでもない人物だという噂を、聞いたのです」
と、真剣な口調で言ってきたの。
「..............とんでもない人物?」と聞き返すと、彼女は真剣な表情のまま話し始めたのである。
彼の名前はリバムと言い、かつては王都でも有名な騎士団の隊長を務めていた。しかし、数年前のある事件をきっかけにその地位を追われてしまった..........というのも、彼は自分自身の利益のために権力や財力を使い悪事を働いていたという噂があり、そのせいで多くの貴族や市民たちから、忌み嫌われていたのだという............。
そして、現在は辺境の地にある小さな村でひっそりと暮らしているということだが、その村というのがまた厄介な場所だったのである。
僕はその話を聞いて、背筋が凍るような思いだった。
何故ならば、リバムという男の話は、王宮では前から持ちきりだったからだ...........しかし、それは秘密にしておくことにして、今はアリスとルナのことだけを考えることにした。
そして、ふと視線を上げると目の前には心配そうな表情を浮かべた彼女の姿が、あったのだ。「大丈夫ですか?顔色が悪いようですが............」彼女はそう言って、僕に微笑みかけてくれたのである。
その言葉を聞いて。僕は思わず涙ぐんでしまったのである。
すると、ルナは優しく抱きしめてくれたのだ。
それからしばらくした後で、僕はルナと二人で出かけることになった。
目的地は辺境の村であり、そこでリバムとアリスが待ち合わせをしているということらしい.............不安を抱きつつも、僕は覚悟を決めて出かけたのである。
そして到着したその村は、辺境の地に相応しい寂れた雰囲気だった。建物はほとんどが木造であり、畑や小屋なども点在しているものの、人影は少なく閑散としていた。そんな村の外れにある、小さな家の前にやってくるとルナが言った。「ここが、待ち合わせ場所のようです............」彼女はそう言ってひっそりと張り込んだのだ。
それから数分程待つと、家のドアがゆっくりと開いた。そこから現れた人物は、紛れもなくアリスだったのだが、いつものような明るさや笑顔はなく、憔悴しきっているように見えた。
「ルナ、アダルバート様............」彼女は弱々しく僕たちの名を呼びながら、こちらへと近づいてきた。その瞳からは、一筋の涙が流れた直後だった。
僕とルナは、慌てて彼女に駆け寄ったのである。
すると、アリスは安心したのか更に泣き出してしまったのである。
そして、しばらくの間泣き続けた後でようやく落ち着いたようだった。
そんな様子を見ていたルナは、優しく微笑みながら言った。「何があったのか話してみて............」彼女は、頷きながら答えた。
「実は、リバムとの関係が上手くいってなくて、昨日喧嘩をしちゃったの............それで、彼が怒って家を出ていった後、私は一人でこの家にやって来たの。そしたら...........」そこで言葉を切ると、彼女は再び泣き出してしまった。
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