第13話 はげまし



「チヨ姉ちゃん大丈夫か?」

「大丈夫っ!」

「それならいいけど。ほら、厨房で余ったオヤツ貰ってきたから」

「えっ、くれるのっ? ありがと~っ」


 カイネ君が差し出してくれた砂糖をまぶしたクッキーをぱくぱく。


 おいしい!


 ふわふわ。


 もちもち。


 さくさくのもあります。


 お貴族様のお抱えシェフさんやパティシエさん達は、すごい腕前ですねっ!


 甘いものを食べると、落ち込んでても気分が軽くなってくるから好きですっ!!


「チヨ姉ちゃんは単純だなぁ」


 呆れつつもカイネ君の耳がぴこぴこしてます。


 もふっとしててさわったらとっても気持ちよさそう。


 さらわせてくれないかな。


「チヨ姉ちゃん。何で俺の耳みてるんだよ」

「えっ、見てないよっ!」


 慌てて誤魔化すけど、カイネ君にはお見通しみたいでした。


「ちょっとだけなら、触ってもいいけど」

「本当? やったー! 前から触ってみたいと思ってたの、ありがとねっ、カイネ君!」


 お礼を言いながらさっそくお耳を堪能。


 ふわっとした耳にそっと手を近づけたら、ちょっとぴくっと動いてます。


 そっとふれると、あたたかくて何だか変な感じ。


 なでなですると、ふわふわの毛が気持ちいい。


「うっ、ん。チヨ姉ちゃん、それくらいで。くすぐったい」

「もうちょっと。もうちょっとだけ」

「~~っ」


 けど、真っ赤になったカイネ君が、「これでおしまい」と頭をガード。


「じゃあ、明日な」


 とっいって、走っていってしまいました。


 もうちょっと、触りたかったなぁ。


 名残惜しい気持ちで、カイネ君が走っていった方を見つめていると、視線と寒気を感じました。


 これは、まさか。


 ゆっくり振り返ってみると、意地悪そうな笑みを浮かべたご主人様がっ!


 通路の角からにゅっと顔を出しました。


「今日の出来栄えは50%らしいな。そうかそうか。ならば屋敷の主人として、従業員を教育するのも俺の仕事だ。よかろう。俺にイジメられる覚悟はできているだろうな(にやり)」


 ひいいい~っ。でた~っ。


 ご主人様、三日に一度こういうのやるのやめてください。


 趣味なんですかっ。


 心臓に悪いですっ。


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