第4話 お仕事ができません



 肌着に上着に、靴下に、あとは。


 あ、ハンカチも。


 懐中時計も用意して…。


 あれこれせわしなくしていると、ご主人様が邪魔してくるのでお仕事ができません。


「お前の頬はよくのびるな」

「あうう」

「大人しくしていろ。あくびした罰だ。朝ごはん抜きにするぞ」


 ご主人様の名前はカーライル・ディン・クルガート様です。


 知ってますよね、はい。


 でも私はメイドなので、名前を呼んだら叱られてしまいます。

 だから呼ぶときは「あう。ご主人様、朝ごはん抜きにはしないでください」こうやって、ご主人様呼びです。


 けどご主人様は、にたりと笑って「さあ、どうしてやろうかな」と言いました。


 ひぃっ。


 ――ご主人様が笑ってる!


 とってもご主人様のお顔はイケメンなんですけど、笑うとなぜか背筋が凍ります。


 「決めた。チヨ。お前には直々に俺がおしおきしてやろう」


 悪魔な笑みを浮かべたご主人様は、そう言って私の首根っこをつかみました。


「やぁっ、離してっ、離してくださいぃぃ」


 私はいやいや、と首を振り拒否しますが、それで引き下がるご主人様ではありません。


 さすが性格終わってる人!

 これまでに異世界で会った人の中で一番ヤバい人です。


 まあ、あまり異世界の地をうろついていないので、数えたらもっとひどい人がいるんでしょうけど。


ご主人「なあに遠慮するな、俺からの直々の指導とお仕置きだ。ありがたく思え」

私「ひいいーっ!ありがたくないですー!」


 あうう。


 抵抗は意味をなさず、私はさっさとご主人様のベッドの中へ引きずられていってしまいました。


 Q ご主人様とはどういう人か。


 A こんな人なんですよねー。


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