拝啓、昔のぼく
シキウタヨシ
拝啓
拝啓、昔のぼく
お元気ですか
相変わらず工事の音は大っ嫌いで
片耳はお母さんにふさがせていますか
昔から慎重な子どもで
喧嘩は大っ嫌いでしたね
本を与えればそれで良くって
分厚い本でもすぐ読んでしまい
斜め読みだろうなんて
お父さんに揶揄われていました
外ではお姉ちゃんにつきっきり
金魚のフンなどと呼ばれても
一生懸命追いかけてまわっていました
大人に早くなりたかったのですよね
でもあなたはひとつ早々に諦めた
絵で食べていくこと
お姉ちゃんと喧嘩したくなかった
だからですね
それからあなたは
いわゆるレールに乗ろうと決めた
それからあとはぼくも知っています
覚えていますか
くつ下を片方無くしてしまって
おばあちゃんと探しに行ったこと
あれはもう夕方の山で
けーん、けーんと狐が鳴くので
きっと狐さん持ってっちゃったねえ…
なだめられながら
二人帰途についたのでした
あなたの最初の記憶も
ぼくは覚えていますよ
それを手放したくなくて
岩手にゆけないことも
弘前の桜はまだ見事でしょう
石割桜もまだ
ピーマンを好きになってくれてありがとう
/敬具
拝啓、昔のぼく シキウタヨシ @skutys
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