不在証明
シキウタヨシ
記
朝の七時二十五分
電灯が消されるその時間
一番ホームで汽車を待つ
ぼくはあけゆく空の一部になる
錆びたクレヨンで塗り潰す
赤銅色のその朱の
色の血がぼくに通っていると
証明してくれよ
でもラインからはみ出さない
線の内側でお待ちください
それは守って生きてきた
誰に褒められもしないまま
一歩踏み出せば
何かが変わったかもしれない
でもそれはいつまでも
可能性のままで
夜の七時二十五分
灯りのともる駅のホーム
押し押されしながらたどり着く
最寄りというには遠い駅
ギター弾きがひとり
聴くものも居ないまま
声を張り上げていた駅前
その錆びた声で
何ひとつきれいで
やさしいだけのなものなんてないと
証明してくれよ
街灯は減らされ
くらい夜道を歩くだけ
でもラインからははみ出さない
それは守って生きてきた
誰に褒められもしないまま
/了
不在証明 シキウタヨシ @skutys
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