【雲】【兵士】【激しい子ども時代】
「なぁ、お前知ってるか? 今日から俺らの部隊に傭兵が二人配属されるんだとさ。案外お前の知っている奴等かもな」俺は仲間のサトルに声をかけた。
確かこいつも傭兵上がりだったはずだ。
「さぁな、俺が傭兵だったのはもう昔話だ。最近の奴らのことはわからん。俺が知ってる奴等なんてほとんど死んじまってるだろうよ」
「全員集合!」リーダーが部屋に入ってくるなり大声で叫ぶ。
「本日より新たに二名の傭兵が戦力に加わる。では、お前たちに紹介する。入れ!」リーダーは、二名の傭兵を呼び入れた。
「あいつらは、……」サトルは青ざめた顔で言葉を失った。
「知っているのか?」
「ああ、傭兵の中で伝説的な存在だ。コードネーム『雲』と『霞』。俺も一度だけお目にかかったことがある」
「その名前なら俺も聞いたことがある。嘘か本当か忍者の家系に生まれ、その後シリアの紛争地で幼少期を過ごし、10才になる頃にはスパイとしての教育を受けたという噂だぞ」近くにいた別の兵士が言った。
「ずいぶん激しい子ども時代を過ごしたんだな」俺は思わずもらした。
サトルの仲間たちはほとんど死んでいると言っていた。つまり、この二人はその後の激動する戦地をくぐり抜けてきた猛者ということか。現在の戦況は依然厳しいものだ。そこに伝説の兵士が加われば、戦況を一気にひっくり返すことができるのではないか。テンションの上がった俺とは対照的に、サトルの顔は青ざめたままだ。
「どうした?」気になって俺はサトルに声をかける。
「あいつらが何で『雲』と『霞』と呼ばれているか知っているか?」
「知るわけないだろ」
「雲を霞と逃げ去るからだ」
「ダメじゃん」
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