第2話 最後の龍
封印を免れ最後の龍主となってしまったシロトスク。アルカディアに攻め込んできた名も知らぬ(名乗っていた気はするが)勇者達との戦いで色々なものが散らばった後片付けをする事にした。散らばった肉片の懐から、下半身だけになったズボンのポケットから、中身をぶちまけているバッグから、封印された仲間を探すための情報を探った。主に、メモや携帯していた端末から情報を読みだしていく。端末に書かれている人間達の言葉はひどく難解で、読むのにはとても時間がかかる。後始末も含めて作業に三日かかってしまった。
まとめて火で焼いてしまおうと思い集めてみた勇者の山。こういう片づけはシロトスクは得意ではない。どちらかと言えばミズルズのほうが適任だ。掃討魔法でチリも残さずにピカピカにしてくれるだろう。
息もせぬ勇者達の前に座ってシロトスクは勇者達の欠片を観察する。
服装はバラバラ、性別は二つ、肌の色も複数、顔の造形はよくわからないが美醜で行くと綺麗な者が多いが、びっくりするくらい造詣が崩れている者もいる。目があり、鼻があり、口があり、稀に指が6本あったり、足が三本ある者もいるような気がしたが、許容範囲だろう。人類と言うくくりで見ればそこまでおかしくはない。
勇者達が使っていた端末の中身は規則が一緒だったため、一つを読み取った後は、そこまで大変な作業では無かった。
取る事ができた情報を整理していく。
わかった事は、三つ。
仲間は世界各地にバラバラに封印されたようだ。どうやって封印されたのかまではわからなかった。しかし、昨今、人類の技術力は高い。何かの方法があるのだろう。
場所は六ケ所。これは七龍引く一なので数は合っている。
そして、この計画はここ百年ほどで準備されたもののようだった。魔王と呼ばれる者が出現したのがその頃だったような気がしていた。
確か、ヴェルグとニーズが喧嘩していた時に、時空に穴が空いて魔界と現界がつながったとか言ってなかったか?時空の穴から出て来た物がなにかわからないから放置したと言っていた。そう言えば。
「、、、ハハ。」
意外にも近くに元凶を見つけてしまったシロトスクは乾いた笑いを上げるしかなかった。魔王に滅ぼされかけた人類が、魔王を滅ぼし、ついでに七龍主を封印し、自分達も滅ぶなどと言う、中々洒落にならない状況だという事をシロトスクは認識した。
しかも原因が身内の所業。本当に嗤うに笑えない。哂うしかない。
情報の整理をしながらシロトスクは勇者の山に指を向け、そちらへ銃を撃つようなポーズをして短い詠唱を唱えると、AI勇者の山は次の瞬間には業火に巻き込まれ一瞬で灰となり空へ舞い上がったのだった。
AI勇者 描人 @byohito
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。AI勇者の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます