第9話 親の心、子知らず。
「それで? 家で可愛い妹が待っているのに、女の子を2人も連れて帰るなんて……ちゃんと説明してくれるんだよね、お兄ちゃん?」
俺は今、絶賛土下座中だ。それも玄関の冷たい床の上で。
ちなみに
「下着が透けるまで濡れた女の子を、お兄ちゃんの前に置いておける訳がないでしょ!? ヘンタイ! えっち! すけべー!」
「ちょっと待て! 陽夜理はなにか勘違いをしているぞ!」
「ちなみに美愛ちゃん、何色だったの?」
「紫。アレはエロ過ぎ……痛っ!?」
陽夜理に頭をスリッパでスパーンと叩かれた。
「それ以上よけいな口を開いたら、たとえお兄ちゃん相手でも去勢するから」
ひどい。俺は嘘偽りなく正直に答えただけなのに。
軽い痛みの走る頭をさすっていると、陽夜理はプリプリとしながら買い物袋を持ってキッチンに向かってしまった。
ちなみにスカートから見えるお尻もプリプリしている。あ、今日は俺がプレゼントしたヒヨコ柄パンツだ。
「怒ってもあの二人を追い出さないあたり、俺の妹だよなぁ……」
きっと陽夜理だって、本心では行く当てのない2人を助けてあげたいハズだ。
俺たちが家に着いてからも、2人は身を寄せ合いながら震えていたしな。そんな
「迷惑ばっかかけてごめんな……」
去りゆく陽夜理の背中にそんなセリフを掛けながら立ち上がると、自分も濡れた服を着替えるために自室へと向かう。
「へっくし! ……うぅ、だいぶ体が冷えちまったな」
濡れた衣服を脱ぐと、さっとタオルで拭いて部屋着に着替えた。
ふと自分のベッドを見れば、トイプードルとチワワのミックスである愛犬のチョコがスヤスヤと眠っているのが視界に入る。
ちょうどいいや。茶色のモコモコふわふわな毛を撫でて、冷えきった手を温めさせてさせてもらおう。
「よいしょっと。チョコ~、ちょっと失礼するぞ~」
「ぷぅ……くぅ……」
俺がベッドに潜り込むと、チョコは寝ぼけながらも「何?どうしたの?」といった感じでお腹を見せてくる。
想像していただけるだろうか? この犬がお腹を
吸い込まれるように、俺はそのお腹に顔をうずめる。すぅはぁ、と深呼吸。多少の犬臭さが、これまたクセになる。
あぁ~、可愛すぎる。これこそが我が家における、人間をダメにするクッションだ。
「…………すぅ」
チョコは薄目でキショイ俺を見ると、何事もなかったかのように夢の世界へと再び旅立った。
「猫みたいな人間が増えるけど、今度は仲良くしてくれよな。頼むぞー」
先住民である黒猫のオハギと後輩のチョコ。出会った当初は喧嘩ばかりで、互いに吠えまくっていた。
今では一緒に昼寝をするぐらいの仲だが、チョコはどうも初対面の動物には厳しいらしい。
ひとしきり撫でて満足すると、俺は陽夜理の待つキッチンへ。
「ヒヨリお待たせ〜、ってアレ?」
いると思った人物は不在で、キッチンはもぬけの殻だ。
「おかしいな? 2人の様子を見に行ったのかな?」
居るのはテーブルの下で毛繕いをしている親猫のオハギと子猫のボタンだけだった。
2匹は『にゃ〜ご』と言いながら、それぞれ俺の足元をグルグルと回り始めた。
「なんだ、お前たち。ご飯は食べたんじゃないのか?」
オハギたちは揃って首を
「なんだ、知らない匂いが付いているから気になるのか? ……っといけない。さっさと夕飯を作らないと怒られるな」
オハギとボタンの頭をひと撫でしてから、手を洗って調理を始める。
買ってきた材料は陽夜理が冷蔵庫に入れてくれていた。本当にできた妹だ。結婚するなら陽夜理みたいな子がいいな。
『なぁ〜ご』
『にゃぁ〜ん』
なんだ? 2匹とも嫉妬しているのか?
残念ながら猫とは結婚はできないにゃあ。
「心配すんなって。誰かと結婚しても、お前らを置いてどこかに消えたりはしないよ」
――どっかの子供泣かせな親と違ってな。
俺は誰に向かうでもなく一言呟くと、黙々とハンバーグとシチュー作りを始めた。
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【ラノベでことわざコーナー】
親の心子知らず:子供を想う親心を理解せず、子供は好き勝手な言動をすること。
とはいえ肝心の親がいなければ、子供は親がどんな想いを抱いていたかなんて知る
作者「イメージとギャップのあるドスケベな下着、王道な下着、どっちも良いよね……(迷言)」
続きは1/20の19時過ぎを予定!
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