最終話 絶対的存在

大晦日を迎えることになる。

朝から佐倉潮からチャットが届いており、彼女は既に家を出たようだった。

僕はそれに返事をすると身支度を整えて彼女の来訪を待つのであった。



正午に彼女は家にやってきてすぐに台所に立った。

「夜は鍋にしようと思うんだけど…良いかな?」

「もちろん。僕も手伝うよ」

「え…休んでいて良いんだよ?いつも疲れているでしょ?」

「いやいや。それはお互い様でしょ?手伝う」

「ありがとう…優しいね」

「そんなこと無いでしょ?これぐらい普通だよ」

「うん…そうだね…」

そうして僕らはそこから鍋の用意と年越しそばの天ぷらを揚げたりして時間をともにしていた。

鍋の用意が完了して彼女が天ぷらを揚げ終えると僕らはリビングに向かう。

「もう飲む?年末だし…昼からでも良いでしょ?」

少し砕けた表情を浮かべて彼女に問いかける。

彼女もそれに微笑んで頷くのでキッチンの冷蔵庫へと向けて歩いていく。

中から缶ビールを二本取り出すとコップを用意してテーブルの上に置く。

お互いが缶ビールをコップに注ぐと乾杯となった。

「お昼食べたの?」

彼女に問いかけられて僕は本日何も食べていないことに気付く。

「そう言えば…何も…」

「じゃあ鍋をつつきながら飲もう。空きっ腹だとすぐに酔うよ」

「だね。そうしても良い?」

「もちろん」

そうして僕はカセットコンロをテーブルの上にセットするとキッチンから鍋を持って来る。

カセットコンロの上に置くと火をかけて鍋を食していく。

そんなのんびりぐうたらした年末の時間が過ぎていく。

いくらか飲んだ辺りで僕らはこたつに向かいぬくぬくとしながら眠りについてしまう。



起きた時には既に日が落ちていて肌寒さを感じていた。

彼女は先に起きていたらしくテレビを眺めていた。

「ごめん。寝てしまって…」

謝罪の言葉を口にすると彼女は微笑んで首を左右に振った。

「かわいい寝顔が見れたから…」

その言葉に少しだけ胸が高鳴ったが、これはアルコールのせいかもしれない。

そんな事を思うと僕は心を落ち着かせるのであった。



夕方から再び鍋を食しながらテレビを観る時間が過ぎていく。

深夜に差し掛かる頃、彼女は年越しそばを作ってくれて僕らはそれを食して新年を迎えるのであった。



「初詣行こうよ」

深夜の事。

寒い夜空の下、僕らは厚着をして外へと出る。

近くの神社は賑わっており僕らは初詣を済ませる。

「何を願ったの?」

彼女からの問いかけに僕は首を傾げた。

「一年の感謝を伝えただけだよ」

「え?そうなの?」

「うん…」

「なんか私だけ下心があるみたいで…嫌だな…」

「何を願ったの?」

「えっと…」

そうして彼女はもじもじとした態度を少しだけ取ると一気に口を開いた。

「ずっと片思いしている人と付き合えますようにって…」

「へぇ〜。叶うんじゃない?きっと神様も見ているよ」

「告白してみてもいいかな?」

「………きっと上手くいくよ」

そんな言葉を口にすると彼女は僕を指さした。

その行動の意味が分からずに少しだけ首を傾げると…。

「私の好きな人。ずっとずっと好きな人。付き合ってください」

「………」

その運命的な言葉を耳にして僕はゴクリとつばを飲み込んだ。

「うん。僕もずっと潮の事が好きだった。忘れられなくて…胸を占めていて…圧倒的存在。僕の絶対的存在メインヒロインは潮だよ」

「じゃあ付き合ってくれる?」

「もちろん。僕こそよろしく」

そうして僕らは新年早々交際を始めるのであった。


お互いにとっての絶対的存在と付き合うことが出来て…。

僕らはいつまでも幸せに過ごすのであった。

                完

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

初恋相手はどうやら僕にとっての絶対的存在【メインヒロイン】らしい… ALC @AliceCarp

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ