初恋相手はどうやら僕にとっての絶対的存在【メインヒロイン】らしい…
ALC
第1話中学卒業から十年後の同窓会からスタート
誰にとっても初恋相手は居るだろう。
もしもそんな相手が自分にとっての
忘れられない相手。
いつまでも心を占める圧倒的存在。
誰にだってそんな相手が一人は居るのでは無いだろうか。
僕にとっての
中学を卒業してから十年が経過している。
現在の僕は二十五歳の会社員になっていた。
多感な時期は遠に過ぎ去り今では落ち着いた大人となっている…はずだ。
自分ではそう思いたい。
冷静で思慮深く知性に富んでいて教養がある。
そんな大人になっていることを願いたいのだ。
そんな話はともかく…。
僕のスマホには旧友からのチャットが届いている。
「中学卒業から十年が経過したので同窓会を開催しようと思います。日時と場所は追って連絡致します。参加、不参加の旨をご連絡ください」
確か彼は生徒会長を勤めていた男子生徒だったはずだ。
懐かしい旧友の名前を目にして少しだけ心が綻んだ。
「参加します。
そうして後日送られてきた日時と場所に僕は向かうことを決めるのであった。
もちろん初恋相手のあの娘に会いたい一心で…。
会場はホテルの大広間を貸し切っての同窓会だった。
年末の仕事納めの翌日に同窓会は開かれて寒い夜空の元、僕は目的地に到着する。
会場の受付で名前を記入し参加費を収めると本会場へと足を向ける。
中に入ると一斉に旧友が僕の方へと視線を向けた。
仲の良かった悪友達がぞろぞろと僕の元を訪れては会話が弾んでいった。
「青。お前…何か変わったな」
過去の友人にその様な言葉を投げかけられて嫌な気分はしなかった。
昔と変わらないな。
などと言われなくてよかったとほっと胸を撫で下ろす。
「どう変わったと思う?」
意味深な質問に彼らは苦笑の表情を浮かべると適当に頷く。
「何ていうか。周りの大人と同じ様な雰囲気と言うか…目というか。ガキらしさがまるで無いぞ」
「そうかな。褒め言葉として捉えておくね。ありがとう」
「褒めているわけじゃないんだけどな…」
友人たちは少し戸惑っているような、やり難さを感じているようだった。
僕は友人たちの輪から少しだけ離れて辺りを見渡していると…。
バチッと視線が交わる人物が一人。
ゴクリとつばを飲み込んだ僕は彼女の元へと自然に足が向く。
彼女も僕の存在に気付いているらしく自然とこちらに向かってきていた。
「久しぶり。随分大人になったね」
初恋相手の彼女は美しい笑みを浮かべると軽く髪をかき分けるように耳に掛ける。
「久しぶり。そっちこそ。随分大人になったね」
そんな会話のやり取りを行ったところで飲み物を取るために入口近くまで揃って向かった。
「お酒は得意なの?」
「どうかな。嗜む程度だよ」
「へぇ〜。酒豪自慢の一つや二つしないの?」
「どうして?それに意味なんて無いでしょ」
「なんか…達観しているね」
「そうかな。普通だと思うけど」
「………普通じゃないよ」
彼女は意味深な言葉を残してグラスに注がれているビールのコップを手にした。
同じ様にビールのコップを手にした僕はそのまま乾杯をする。
少しずつアルコールを口に運んでいく僕らは次第に砕けた会話を繰り広げていく。
「恋人は?」
端的な質問が飛んできて僕は覚悟をしていなかったため軽く動揺してしまう。
「え…?居ないね」
「どうして?」
「どうしてって…あまり恋愛体質じゃないのかもしれない」
「へぇ〜。何か珍しいね。年頃の男性にしては恋愛に興味ないの?仕事ばっかり?」
「そうかも。忘れられない人がいるというか。その人への想いが胸を占めなくなってからじゃないと恋愛は出来ないかも…」
「忘れられない人?高校とか大学の同級生?」
「そうじゃないよ。小学校からずっと一緒の人」
「え…?この中に居るってこと?」
「そうだね。相手はまるで僕のことなんて…どうも思っていなさそうだけど」
「そうなの?青くんが好きな人?誰?」
「んん〜。初恋相手だよ。僕にとっては絶対的存在。ずっと忘れられない女性だよ。再会してもその美しさに陰りはないし…話していて落ち着く相手だよ」
「もう話したの?」
「そうだね…」
「………」
僕らは次第に少しだけぎこちない会話になっていく。
これ以上、僕も踏み込んだ会話をすることは出来ない。
出来ないと言うよりも勇気が足りないし確信がない。
彼女にはきっと恋人が居るはずだし、困らせるのも本意ではない。
「彼氏が居るんだけど…」
そうして僕の初恋は時間とともに育ってきていたはずなのに…。
現在、絶賛打ち砕かれたのであった…。
「でも…歳上なのに子供っぽくて…だらしなくて…別れようと思っているんだよね…どう思う?」
しかしながら打ち砕かれたと思っていた初恋の種はまだ咲く可能性を秘めているようだった。
「どう思うって…自分次第だと思うよ。無理だって思うなら次の恋に移れば良いんだろうし…他に良い人は居ないの?」
「そうだよね…別れようと思う。他に良い人っていうか…私にも初恋の相手が居て…忘れられない人がいるの」
「へぇ〜。高校の同級生とか?」
「うんん。今まさにこの空間にいるよ」
「………そうなんだ。偶然だね。一緒だ」
「うん…本当にね…」
再びぎこちない雰囲気が流れてきて同窓会も中盤に差し掛かってきている。
各々が輪を作って飲んだり食べたりの立食形式の宴会が進んでいた。
特にこれと言って特別な催し物は無く。
旧友と成長した自分を見せては過去の話をする同窓会だった。
時間が過ぎていき次第に場所を変えて二次会に向かう面子も出てくる。
時計で時間を確認した僕を目にした彼女は問いかけるように口を開いた。
「もう仕事納めした?」
「そうだね。明日からゆっくり過ごしながら大掃除だね」
「へぇ〜。一人暮らしで大掃除するの?」
「うん。今年の邪気は今年の内に落としておきたいからね」
「真面目なんだね…」
「そうかな?周りの大人は皆やっているでしょ?」
「………そんなことないよ」
コップを返却すると僕は友人たちに別れを告げて会場を後にしようとする。
「青くん。もし良かったら…大晦日とか初詣とか…一緒にどう?」
まさかの彼女からの誘いに僕の少年のような恋心が芽を出して急成長していく。
可能性があると思ってしまう僕の心には既に邪気が存在しているのだろうか。
そんな事を軽く想像したのだが…。
僕は
いいや、自分の幸せのためにこの甘い誘いに乗ることを決める。
「彼氏は良いの?」
一応だが探りを入れるように問いかける。
彼女は一つ頷くときっぱりと答えを口にする。
「今日中に別れるから。大丈夫」
「分かった。ではよろしくお願いします。連絡してくれたら助かるよ」
「分かった。帰ったら連絡していい?」
「どうぞ。じゃあまた大晦日に。でいいの?」
「うん。私も色々と整えてから向かうから」
「僕の家で良いの?」
「うん。私は実家住みだから…」
「そうなんだ。じゃあ後で住所送っておく」
「うん。再会できて嬉しい」
「僕もだよ」
そうして僕らは会場で別れを告げると各々の帰路に就くのであった。
帰宅した僕に彼女は恋人と別れたことを教えてくれる。
ここから僕と初恋相手の女性。
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