パーティ結成①
「で、だ。まずは……どうしたもんか」
ボロボロの服を着るナギを見つめると、俺は顎に手を置く。
「まあ、服だな。こいつの服を買いに行こう」
「えっ!あの……おれはこれでも大丈夫ですよ?」
「こっちが大丈夫じゃねえんだよ。見て呉れが悪いと流派の品位まで下がる。だから遠慮すんな」
「流派?……えっと。よくわかんないけど、ししょーがそう言うなら、お願いします」
ペコリと頭を下げるナギ。それを見届けると、俺は傍らに立つククリの肩を叩いた。
「じゃ、こいつの服は頼んだぞ」
「えっ!?今のゲンさんが選ぶ流れじゃないんですか!?」
「俺に人並みのファッションセンスがあると思うか?」
「まあ……、無いとは思いますが」
「ま、そういうこった」
我ながら無責任だとは思うが、ガキの衣服なんぞ選んだことはない。ましてや異世界の流行り廃りなど尚のことわからん。故に俺は、
「こんなもんでどうでしょう?」
「んー。いいんじゃないか」
しばらくして現れたナギは、子供らしい活発な格好に身を包んでいた。その様子に俺は首を縦に振る。それを見たククリはニヤニヤとこちらを見た。
「どうですか?ボクのファッションセンス?一応妹もいますし、子供の服とかも選んだことあるんですよ」
「おーおー、大したもんだ」
「ですよね。自主的に奴隷を購入したあげく、その子の服すら選べない人とは、ファッションのステージが違いますよね?」
「言い過ぎだろ、コラ」
「すいまふぇん」
ククリのもちもちとした頬を、俺は鷲掴みにした。
「……ぷっ」
そんなやりとりを見ていたナギが、唐突に吹き出す。そして、緊張の糸が切れたのか、続けざまに腹の虫が鳴き出した。
「……まあ、なんだ。次は、飯だな」
ナギの腹を満たすべく、アカシアの市場にある食堂へ俺達は足を運んだ。
「あの、すいません。おれ、お腹空いちゃって……」
余程空腹だったのだろう。ナギは適当に注文した料理を口いっぱいに頬張った。その様子からも今までの苦労が見てとれる。
「気にすんな。ガキが遠慮すんなって。あと、よく噛んで喰えよ」
その横では、ククリが同様に料理を口いっぱいに頬張っていた。
「ふいまふぇん。ボクもお腹空いちゃって」
「いいけど、そんなに食ったら太るぞ?お前」
「もお!やっぱりゲンさんってデリカシー無いですよね!?」
「おい。俺が悪いのか?コレ」
最早定番となりつつある、くだらないやりとりをする俺とククリ。それを尻目に、ナギは運ばれてくる料理を次々に平らげていた。
「……ところでナギ。邪魔じゃないか?その髪」
何度も黒い長髪をかき上げながら、食事を口に運ぶナギ。そんな彼を見て、俺は問いかけた。
「あ、はい。村が無くなって、奴隷になってからは髪も切ってなかったから……」
「なるほどな。因みにククリ。お前、散髪は?」
「出来ますよ?左右非対称なうえ、前衛的な髪型にはなりますが」
「……素直に出来ないって言え」
まあ、俺も髪など切ったことはないのだが。
(仕方がない)
俺は立ち上がると、刀の装飾の一部である紐を一本引き抜く。そして、それでナギの髪を一つに束ねてやった。
「とりあえずはそれで我慢しとけ」
「えっ?あの、いいんですか?ししょー」
驚いた顔のナギ。その横で、彼の束ねられた髪をピョコピョコと振りながらククリが頷く。
「わぁー。似合ってますよ?ナギくん」
「本当ですか?」
仲が良さそうに髪を弄る二人。そんな彼女らを前に、俺は小さく咳払いをした。
「あー……飯を食いながらでいい。聞いてくれ」
「はい?なんですか?ゲンさん」
「明日からのクエストなんだが、ナギも同行させたい。危険だとは思うが、心眼流を継承してもらうには実戦を見るのが一番だからな」
俺の言葉にナギが頷く。
「はい!おれ、囮でもなんでもやります!」
「いや、そういうんじゃなくてだな……」
俺の言葉を遮る様に、今度はククリが口を挟んだ。
「つまり、ボク達も遂にパーティ結成というわけですね!?」
「パ、パーティ?」
その耳馴染みの無い言葉に、俺はただただ首を捻るのだった。
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