スライム狩り①

「あ~……頭痛い。ゲンさんは大丈夫ですか?」

「大丈夫……とは言い難い。が、お前もシャキッとしろよ?もうすぐギルドなんだ」


 俺とククリは足取り重く、ギルドの扉を開いた。


「あら?クラマ様にクルール様。本日はどういったご用件で?」

「はひっ」


 受付に立つテラスさんは、昨日と変わらず優しげな笑顔を此方に向けてくれる。それに対し俺は変な笑いを浮かべた。


「へへっ。そのぉ~、クエスト?ってのを受けにですね」

「ふん!!」

「あ痛!」


 ククリの鋭いカーフキックがふくらはぎを襲う。


「何すんだよ!」

「ヘラヘラしてないでシャキッとしてくださいよ!」

「しょうがねえだろ。俺ぁ、ほら。女の前じゃあ緊張しちまうんだから」

「ボクだって女なのに……」

「ん?」

「なんでもないです!」


 ぼそりとククリが何かを呟く。しかし、その声がよく聞こえなかった俺は、再び受付に向き直った。


「で、良い感じのクエストってあるんスかね?」

「少々お待ちください。お二人はDランク冒険者なので、この辺が……」


 手元の資料をテラスさんはパラパラと捲っていく。だが、俺はそんなことよりもある疑問が気になり、首を捻った。


「あの、素人質問で申し訳ないんスけど。そのB級だのD級ってのはなんなんスか?昨日から気になってて」

「ああ、これは失礼しました。実は冒険者の皆様には、それぞれの実績や能力に応じて階級をつけさせていただいております。階級は全部で五段階あり、最上級のSランク。そこから下に向かって、Aランク・Bランク・Cランク・Dランクの順になっております。そしてその階級を基に、クエストの割り振り等をさせていただくのです」

「いやぁ、ご丁寧にどうも。……ん?つーことは、Bランクとか言ってたカイルは中堅ぐらいなのか」

「いえいえ、とんでもございません。Aランクの冒険者は一握りしなれませんし、Sランクともなればこのシルウァヌス大陸でも数える程しかいないはずです」

「ふーん。じゃあBランクでもすごい方なんすね」


 俺とテラスさんがそんな話をしていると、ククリが彼女の手元の資料を指差して言った。


「そんなことよりゲンさん。クエストですよ、クエスト。あれなんかどうですか?」

「ん?『スライム討伐』?」


 その言葉を聞いたテラスさんは、一枚の紙を抜き取ると俺達に向かって差し出した。


「こちらでしょうか?」

「はい」

「そうですね。クルール様の仰る通りスライムは戦闘力も低く、経験を積むにはうってつけかと」

「ほら、ゲンさん。これにしましょうよ」

「そうだな。初心者向けっつーんなら、それが妥当か」

「かしこまりました。それでは『スライム5匹の討伐』をお二人にはお願いします。また、スライム討伐の証として『スライムの核』をお持ちください。これは損傷していても構いません」

「はーい!この資料によると、スライムは町の東口を出てすぐの森ですね。さ、行きますよ。ゲンさん」

「おい、引っ張るなよ。……じゃ、行ってくるんで」

「どうかお気をつけて~」


 ニコニコと笑いながら手を振るテラスさん。


「あれ、でもクラマ様って魔法が使えないんじゃ……」


 だが、ギルドを出る瞬間。彼女は何かを思い出したように呟いた。俺はこの言葉の意味を、後のスライムとの対峙で思い知ることとなる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る