第66話 十五日目(夜) 団結した女性陣には敵わないので、ドリンクバーにでも行きましょう……?
あれから時間はあっという間に過ぎていき夕暮れ時となった現在、俺は4人目の恋人となったシェリルをお姫様抱っこしながら待ち合わせ場所である2階のフロアへと移動した。
本来の集合場所は1階のラウンジだったんだけど……さっきリディから集合場所の変更を知らされたので言う通りに移動してきた訳だ。
2階って食べ物屋さんがいっぱいある所だよな……今日の夜は2階で食べるのか?
そう思いながらもふと俺に抱えられているシェリルを見てみると、シェリルは頬をぷっくりと膨らませて眉を顰めている。
俺はその原因に心当たりがあったので苦笑をしつつも成り行きを見守っていた。
「…………むぅ、悔しい」
「あはは……なんかごめんな……?(こういう時になんて言ってあげればいいのか全くわからんっ!)」
「……ん、あなたの所為じゃない。私の体力不足だから」
そう、実は俺達はリディにお膳立てしてもらったにも関わらず……本番に行くことなくその前段階で終わってしまっていた。
屋上にて、リディの告白を受け入れた事により俺達は恋人同士になった。
それだけでも十分満足ではあったのが、シェリルは直ぐにでも深く繋がる事を望んでくれていたようで……リディ達の手助けもあり2人きりの空間を作る事が出来た俺達は、そのまま身体を密着させてお互いを求め合った。
そこまでは良かったのだが……俺はここである失敗を犯してしまう。
それは恋人達の体力差についてだ。
よくよく考えれば当たり前のことではあるのだが、リディはホムンクルス、ミムルは女神、マルティシアは上位天使…………お分かりいただけただろうか?
この3人と半精霊ではあるものの普通の人間と同じスペックであるシェリルとでは、その体力や精神力に大きな差がある。
3人ともスイッチが入ると積極的に攻めて来るし……夜から朝方まで続いたとしても翌日にはケロッとしてるからなぁ。下手すると朝から始まる事もあるし……体力お化けである。
そんな3人との夜に慣れてしまっていた為に俺はシェリルとする際にペース配分を誤ってしまい、俺が服を脱ぐ事もなくシェリルは疲れ果てて気絶する様に眠ってしまったのだ。……寝顔が幸せそうであったのがせめてもの救いである。
シェリルが目を覚ましたのは眠ってから1時間くらいしてからだ。
最初は平謝りする俺に対して首を傾げていたシェリルだったが、状況を理解した彼女は俺が寝ている時に掛けてあげていた毛布をギュッと引き寄せて身体を隠し……。
「…………ん、もっかい……今度はちゃんとする?」
と顔を赤らめながら聞いてきた。
だが、流石に疲れの見えるシェリルにもう一度と言うのは気が引けたので「また今度な……その時は最後までしよう」と約束をして、2人で仲良く更衣室の中に併設されているシャワー室へと向かう。
そもそもシェリルを疲れ果てるまで攻めてしまったのはペース配分を誤った事とは別に、シェリルの負担を減らそうという意図もあった。
ミムルと同じ様に体格が小さいので、どうしてもミムルとの初体験を思い出してしまい……なるべく痛くないようにしたいと思ったんだ。その結果、途中でバテさせてしまう事となったんだが……今度からは気をつけるようにしないとなぁ。
そうしてシャワーで身体を清めた俺達は新しく用意したそれぞれの服に着替えて外へと出た。
俺は黒いデニム生地の長ズボンに白いカットソーと言うラフなスタイル。
シェリルは厚手のタイツに太ももの真ん中くらいまでしかない焦げ茶のショートパンツ、上はここで買ったらしい白いワイシャツに革のベストというスタイル。
ここにマントを羽織ったら旅人の様だなと見ていて思った。
まだ足取りが少しだけフラフラしているシェリルが心配になりお姫様抱っこをする事にしたのだが、スリスリと頬を擦り付けてくるシェリルが愛おしくて正直ヤバい…………わざと待ち合わせ場所である中央付近から離れた場所に転移してイチャイチャするくらいには可愛かったのだ。うん、シェリルの顔を見ていると心が癒される。
ちゃんと集合場所には歩いて向かっているので、イチャイチャするくらいは許して欲しい。
猫みたいに甘えてくるシェリルは本当に可愛いのだ。
♢♢♢
「「「シェリルノートさーん!」」」
集合場所が近くになると、シェリルは俺に降ろすように言ってきたので言う通りに降ろしてあげた。
そして隣に並ぶと右手をそっと掴んできたので、俺は掴まれた右手の指をシェリルの掴んできた左手の指に絡ませて恋人繋ぎにしてから歩き出す。
シェリルの名前を呼ぶ大きな声が聞こえて来たのは、そうして歩き始めてから数分後の事だった。
声の主は桜崎さん、如月さん、物部さんの3人。
その後方には他のみんなの姿もあり、どうやら俺とシェリルが最後だったらしい。
シェリルの名前を呼びながらこちらへと駆けてくる3人に、シェリルは空いている右手を小さく振っていた。
やがて3人がシェリルの目の前までやってくると、3人は俺とシェリルを交互に見比べてから視線を恋人繋ぎをしている手へと移し……キラキラとした瞳でシェリルの方へと顔を向け出す。
顔を向けられたシェリルは微かに頬を赤らめつつも「……上手くいった」と、何かを期待をしている様な3人に対してそう告げるのだった。
そんなシェリルの反応を見た3人は大喜びで「おめでとう!」や「良かったねぇ!」と、シェリルに対して祝福の言葉を贈る。
そう言えば、3人がシェリルのおめかしをしてくれたんだっけ? そりゃあ協力してくれた側からすれば、結果が上手くいったのは素直に喜ばしいんだろうな。
俺からも3人にお礼を言おうかな。
そう思い俺が口を開こうとした直後、3人のうちの1人……物部さんがある事に気がついて神妙な面持ちでシェリルへと話し掛ける。
「――ね、ねぇ、シェリルノートさ〜ん?」
「……ん、なに?」
「あ、あの……今更だとは思うんだけどぉ……お、お洋服を着替えてるって事はつまり〜…………そ、そういうことなのかなっ!?」
「「……っ!?」」
最後は顔を赤らめてチラチラと俺を見ながら言う物部さん。そんな彼女の言葉にシェリルも顔を更に赤らめて…………その様子を見守っていた桜崎さんと如月さんは思いっきし俺をガン見してからシェリルへと視線を移し、愕然とした顔で息を呑んだ。
あー……まあ、事実ではあるけどさ。やっぱり女子の方がそういう変化に敏感なのかなぁ? 今回の場合は自分たちが服装や髪型について試行錯誤したというのも関係していそうだけど。
シェリルは顔を赤らめつつも、物部さんの問に対して答えていいのかどうか分からなかった様で、俺の方を見上げて首を傾げて来た。なので俺は苦笑を浮かべつつも、答えてもいいよと言う意味合いも込めてゆっくりと首を縦に振る。
俺が首を縦に振ったのを確認したシェリルは、物凄く小さな声ではあったものの「……ちょっとだけ」と言って物部さんの問に対してコクンと首を縦に振るのだった。
そこからはもう女子達の独壇場だった。
桜崎さん達の黄色い悲鳴を聞きつけたみんなが集まって来たが、「男子禁制です!」という事で女性だけが集まりあっという間にシェリルを囲んでヒソヒソと会話を始める。
取り残された男達はと言うと、きゃっきゃっと楽しそうに話す女性陣の姿をしばらく眺め終わりそうにない会話に一度ため息をつくと、聞こえてるか分からない女性陣に対して「俺達は近くのお店でお茶でも飲んでるからー」とだけ告げて小休止する事にした。
うん、とりあえずファミレスでいいだろう。ドリンクバーもあるし。
いやはや……何処の世界でも女性陣は恋バナが好きなんだなぁと思う瞬間であった。
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