第51話 十五日目 方針転換、チートこそ最強だ!
お転婆公爵令嬢、フレイシア・ルイン・ディオルフォーレ。
まさか公爵家の娘である彼女から告白されるとは……今朝までの俺は思いもしないだろう。
だが、それは現実であり……しかもそれは彼女のご両親が居る前で行われたのだ。いや、気まず過ぎるって!! なんか、ご両親共々めっちゃ良い笑顔をしてるけどさ!!
「いやぁ、前向きな返事を貰えただけでも救われたよ。このままだったら、一生娘のお眼鏡にかなう相手が見つかるかどうかも分からなかったからね……あ、我が家は既に跡取りである長男が居るから、婿に入れとか身分がどうこうとかそんな面倒な決まり事はないぞ! 娘を幸せにさえしてくれればそれでいいから! お義父さんと呼んでくれたまえっ」
ちょっ!? 気が早いですよガルロッツォ様!?
いや、男親に反対されるよりはややこしくないしマシなんだろうけどさ……そして抱き着いたまま離れないフレイはどうしたらいいんだ!?
「あらあら〜もうすっかりダイキさんにメロメロねぇ〜? フレイの結婚は正直諦めていたのだけれど……ふふふ、孫の顔が見れるのは長男よりも先になるのかしらぁ?」
おいおい……この人はこの人で、ガルロッツォ様以上に気が早いぞ!?
そしてフレイ、お前はお前で「お母様ったら〜」じゃないから!!
「……なぁ、アリシア。どうしてこんな事になってんだ?」
「……私に聞かないで下さいよ。フレイ様よりは先に結婚出来ると思っていた私の身にもなって下さい!」
「うぅ……私も内心複雑だよぉ……」
「…………むぅ!」
「ほっほっほっ、若さとは素晴らしいですなぁ」
いや、若さとか関係ないと思うんだけど……てか、ぐぬぬとかほっぺ膨らませたりとか呆れたりとかしてないで助けてくれぇーー!!
※結局時間をかけて自分で引き剥がしました。
何とかフレイを引き剥がす事に成功したので、再びフレイが抱き着いて来ない内に話を進めて行くことにする。
抱きつかれるのは嬉しいし、なんなら女性特有のふよんふよんが伝わって来るので幸福感があるのだが……ご両親の前っていうのがですねぇ!? 非常に気まずいので、出来れば人前じゃないところでお願いします……いや、違うわ。そもそもまだお付き合いすらしてないんだった!
周りの雰囲気に飲まれて勘違いしてしまうくらいには思考が麻痺してた。恐ろしいな、集団心理(多分違う)。
話すのは”リゾート”について。
当然ながら俺の職業やステータスについて教えた時と同様に、秘密を守る事を約束して貰ってからだ。特に今回の内容は安易にバラされると面倒な事になる。
そうして公爵家の3人とオーエンさんに秘密にしてもらう事を約束してもらった後で、俺は転移直後から今までの生活について簡潔に纏めながら話していった。
「――以上です。まあ、『リゾート』というスキルのヤバさは理解して頂けたと思いますが……大丈夫ですか?」
「「「……」」」
「なるほどなるほど……オオエダ様がどの様な方法で私と創造神様を会わせて下さるのか分からなかったのですが、その様なスキルをお持ちになっていたとは……年甲斐もなく心が踊りますのぅ」
あー、オーエンさん以外はダメそうだな。いや、オーエンさんはオーエンさんで別の方向へトリップしてる気がするが……まあ、害はないだろうし放置しておこう。
いつの間に跪いていたんだろうか? 全く気づけなかった……流石はレオニス達の師匠。
「はぁ……何度も秘密にする事を念押ししてくるから一体どんな話を聞かされるのかと思ってみれば……流石に想定外が過ぎるな。私にはもう何が何やら……」
「異界の品々のみならず、この世界の品々も手に入る異空間。そこはダイキさんの許した者しか入れないプライベートな場所で、許しを得た者は自由に出入りが可能。これだけでも国から保護されるレベルの存在だというのに……まさか創造神様や上位天使様までいらっしゃるなんて……」
「ちょっと待って……ダイキの恋人が創造神様? 更には上位天使様に、書物でしか存在が確認されていない”始まりのエルフ”の姿を摸したホムンクルスって……私、凄い人にアプローチしていたのね。創造神様から怒られたりしない……?」
「いやいや、ミムル達は寧ろ歓迎しているらしいぞ? 政治的に利用したり私欲の為に近づいてきた訳ではなく、心からその……俺を慕って居る人なら異論はないんだってさ」
「……創造神様を愛称で呼ぶくらいの仲なのね。凄い人だわ……私の旦那様は」
しばらく放心状態になっていた3人は、疲れた様な表情をしながら各々に感想を話し始める。特にフレイに関しては俺の恋人の正体を知ってみるみる内に顔を青くしていったが、そこはちゃんとフォローを入れておいた。
まあ、安堵を通り越して呆れさせてしまったみたいだけど……あとしれっと”旦那様”呼びになっているので訂正を求めます!! まだ交際すらしてないだろうが!
だが、これで俺が口を酸っぱくして秘密にして欲しいとお願いしていた理由を分かって貰えたと思う。
「そういう訳なんで、気軽に言いふらしたりしないで下さいね?」
確認の為に俺がそう言うと、3人はしつこいくらいに首を縦に振り続けていた。
そしてオーエンさんはその場で平伏し始めた。一人だけオーバーなんだよなぁ……怖いよ信者っ!
ちなみに元々知っていた組であるレオニス達や桜崎さんは全てを悟った様な……慈愛に満ちた瞳で四人を見つめていた。そんなレオニス達に声を掛けたりはしません。あんな表情をさせてしまった元凶が自分だって事は百も承知しているからな!! 実質、あの時は何も知らないレオニス達をいきなり誘拐した様なもんだったしなぁ……悪かったとは思っている。
さて、一応これで話すべき事は終わった訳だが……。
「あー、実はこの後オーエンさんを連れて”リゾート”へ戻る予定なんだけど……3人はどうします?」
「……我々も連れて行ってもらえるのかい?」
どうやら俺が”リゾート”へ招待してくれるとは思ってもいなかったみたいだ。まあ、なるべく権力者には見つからない様にしたいと思っているし、面倒事は御免ではあるけど……なんか今更な気がするしなぁ。後は俺の力が予想通り規格外なチートであり、この世界の強者にも十分通用すると分かったからっていうのもある。力こそパワー、チートこそ最強だ。
もう、俺は遠慮するつもりはない。この世界で自由を得て、守りたい人や場所もできた。
この先、大切な人たちが不幸になる様な事はできる限りないようにしていくつもりだし、大切な人たちが大事にしているモノも含めて守れる様な人でありたいと思っている。もちろん、今日知り合った公爵家の人たちも。
「……まあ、ここまで秘密を話しちゃってますし、公爵家の皆様とはこれからも良い関係を築いていきたいと思っていますから。あ、もしも勝手に家を空けて困る様でしたら秘密を守るのを条件に家の人に知らせてきても良いですよ? あんまり多すぎるは嫌なので、一人に付き一名まで……合計3名までの付添人を連れてきて頂いて構いません」
今でこそ気軽に話しかけられるけど、相手は公爵家。流石に何も告げずに家を空けるのは問題があるだろうからな。
あ、そういえば明日の予定とか聞いてなかったな……もし明日の予定がない様だったら泊まって行って貰おうか?
俺がそう告げると、公爵家の3人は慌てた様子で「直ぐに準備してくるので、待っていてくれ」と訓練場を後にして本館へと行ってしまった。
待っている間、レオニス達が疲れた表情をしていたので土属性魔法で大きめのテーブルと人数分の椅子を作って置く。
そして『簡易収納』に入れて置いた赤いラベルの紅茶を500mlのボトルで配っていき、一応飲み方について説明しておいた。
「お前なぁ……」
「ん? 酒は持ってきてないぞ?」
「別に紅茶に不満がある訳じゃねぇよ! ただ、不用意にこういうのを出すのは気をつけろって言いたかっただけだ。こんな透明で軽い入れ物はこの世界にはない貴重品だ。もしもその辺の道端で見せびらかしたりしたら、あっという間につけ狙われるぞ?」
「あー、そういう事か……ごめん。レオニス達しかいないから良いかなって思ってた」
そうだよなぁ……知り合いしかいない空間だからついつい油断してしまった。
この世界に来てから明確な悪意を持って襲われたのってあのクズ騎士の一件だけだったからなぁ。レオニス達”炎天の剣”も、オーエンさんも、そして大貴族である公爵家の人たちも、みんな良い人達だからなんだか安心して気が緩んじゃうのかもしれない。
「まあ、お前が俺達の事を仲間と思ってくれているのは嬉しい事だけどよ。仲間と認識したら色々と気が緩む癖は、少なくとも”リゾート”以外では気をつけた方が良いぜ?」
「そうだね。まだまだ知り合ってから間もない僕達を認めてくれるのは有難い事ではあるけど、この世界は何かと物騒な所もあるから気をつけた方がいい」
「……くすっ。でも、ダイキさんが私達の事を仲間だと認めてくれているのはとても嬉しく思います」
「そうですね。それに、仲間だと認めてくださってからのオオエダ様の油断した様子は……ちょっと可愛くも思えます」
な、なんかむず痒い気持ちだ……。いや、だってねぇ?
ミムル達から事前にレオニス達の事は聞いてたし、桜崎さん達も懐いてる様子だったから良い奴らだっていうのは直ぐに分かった。
本来であれば全く関係ない筈の桜崎さん達を、わざわざ活動拠点を変えてまで守ってくれた奴らなんだぞ? そんなの感謝しない訳がないし、もしかしたらこんなに良い奴らに今後出会えないかもしれない。それなら今の内から仲良くしておいた方が良いかなって思っただけだ。
だ、だからその生暖かい視線をやめろぉ!!
くそぅ、ドーナツで良いかな? 俺の好きなモチモチの奴と中にクリームがたっぷり入った揚げドーナツにしよう。
「くっくっくっ……こうして餌付けする事で、俺から離れられない様にしてやる〜!」
『…………(顔が赤くなってるし、照れてるのが丸わかりなんだよなぁ)(ですわね)』
「あははっ、大樹くんってこんな可愛い一面もあるんだね?」
くっ、もう何も言い返さないし反応もしないからな!!
あー、早く公爵家の人たち帰ってこないかなー!?
その後、公爵家の面々が帰ってくるまでの間、俺はなんとも居心地の悪い思いをする羽目に……。
何も言ってこなかったシェリルがしれっと俺の膝上に乗って来たので、みんなからの視線に耐えられなかった俺はシェリルに抱きついて右の肩口に顔をうずくめる事にした。
シェリルはその間、特に何も言ってくる事はなく優しくポンポンと俺の頭を撫でてくれた。
嗚呼……シェリルママに癒される……。
まさかシェリルに母性を感じる日が来ようとは思いもしなかった。
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