第11話 三日目〜五日目 あれ、なんか寒気が……っ。
二日目から数日は、殆ど同じ毎日の繰り返しだった。正直、魔力を消費しては寝込み、消費しては寝込みの日々だ。
ただ、そんな日々の中でも変化はあったのでそれを紹介しようと思う。
三日目。
フカフカのベッドで寝たおかげか、心地のいい目覚めだった。
そして起きて直ぐに襲う空腹感。
魔力の回復にはエネルギーを消費するらしく、まずは食事をとる事になった。
まさか朝からカレーを五杯も食べる事になるとは思わなかったけど……。
ちなみにカレーの消費ポイントはなんと一皿400Pt。最低還元値のスライムの魔石が一つで100Ptなので、俺はまあ安い方かなって思う。
今後、未踏破のダンジョンに挑もうとする立場からするとだけど。
今回初めてのポイント払いだが、ルームサービスで頼んだので何かにカードをかざす必要は無く自動で引き落としされる形だった。ちょっとガッカリしたけど、ポイント残高を確認するとしっかりと【10,039,800Pt→10,037,800Pt】となっていたのでちゃんと支払いは出来ている様だ。
訓練が終わったらゲームセンターで遊ぼうと考えている。人生で一度も行ったことが無いので楽しみだ。
そして、昨日は疲れて眠ってしまったけどシングルルームの中を見て回った。
扉を開けると右側に収納スペースがあり、少しだけある廊下を進むとちょっと広めのワンルームがあり。シングルベッド、テーブル、イス、小型冷蔵庫、電子レンジ、エアコン、食器入れ、小型タンス、ドライヤー、アメニティーグッズ等。
更に廊下の途中にはトイレとバスルームが別で付いている! バスルームはサイズ的には小さめだけど、ユニットバスでも十分贅沢だと思ってたからちょっと驚いた。
一通り見て回ってから、とりあえずトレーニング前に色々と用事を済ませておこうと思い準備する。とりあえず、今の訓練をしている最中はやる事を済ませておこうかな。観光については時間が掛かるからもう諦める。多分、その内行きたくなるだろうし時間がある時に行くことにした。
まずは、買い物……と、言ってもお酒とケーキだけど。
昨日は疲れてそのまま寝ちゃったからお祈り出来なかったんだよな。別に強制されてる訳じゃないし、しなくても良いんだろうけど……自分でもびっくりするくらい女神様に傾倒しているらしく、何か祈りを捧げないと落ち着かないんだよな。
多分、偶然とは言え両親から離れる切っ掛けをくれた女神様に感謝してるからだと思う。
2階のグルメエリア(仮名)に転移してケーキ屋さんを発見。相変わらず広いなあー……。
イチゴ、モモ、フルーツ、チョコ、チーズのケーキにモンブラン、後はエクレア何かも買っておく。合計で1万近くポイントを使ってしまった。ひとつ辺り500Pt以下だから結構買ったな……まあ、いいか。
続いてはバーカウンターと居酒屋をハシゴ。あ、飲みに来た訳じゃないよ? リディによるとこの二軒ではお酒を飲めるだけじゃなくて買って帰ることも出来る見たいなので、数本買っていく事にした。まあ、まだポイントには余裕があるし……とりあえず、一昨日出してもらったのと同じ奴に日本酒も加えて……2万ポイントも減った。良くCMで観るようなお酒をチョイスしたのに2万……残りは【10,000,200Pt】。あれ、俺のバイト代が消えた!?
ま、まあ今日も稼ぐ事になるだろうし……別に構わないんだけど。お酒って結構するんだなぁ。
買い物を終えたあとは1階のランドリールームへと移動。
白くて清潔そうな空間に大量のドラム式洗濯機が置かれている。洗剤はタダで使えるらしいので、とりあえず適当に選んで洋服を洗濯槽に突っ込みスタートボタンを押す。
……30秒で終わったんだけど。なんで!?
リディの説明では見た目は地球と同じ製品だが、中身は全くの別物。要は魔道具だかららしい。中の時間だけが超加速されており、あっという間に終わるようになっている様だ。地球でも売れそうな万能洗濯機だな。
ちなみに、他の家電なども同じように魔道具化した事で色々と変化がある様だ。異世界凄いな。……いや、科学と魔法の合体技が反則級なだけか? うん、便利だから良しとしよう。
ちなみに回収した服にはシワひとつなく、タオルは柔らかくフワッフワ。そして洗剤と柔軟剤の良い匂いもちゃんとした。万能洗濯機しゅごい……。
買い物と洗濯を終えたら教会前へと転移。相変わらず綺麗な景色を眺め終わったら中へと入り、神々しい雰囲気を放つ神像の前へと移動した。さて、お供えを……と思って神像の下へ視線を向けると、そこには一冊の分厚い本が置かれていた。
新品未使用であるかの様な綺麗な本。表紙はハードな作りをしていて、白い下地に金の装飾がほどこされている。
前はこんなの無かったよなぁと思いつつ、汚さないように表紙を捲ると、そこには可愛らしい文字で文章が書かれていた。
『大樹くんへ
お手紙ありがとう。
プレゼントもありがとう。
そして何よりも、お祈りをしてくれてありがとう。
ケーキはどれも美味しかった!! お酒もマルティシアからちょびっとだけ貰って飲んでみたけど、初めてお酒が美味しいって思えたよ〜!
くまさんのぬいぐるみも、大事に大事に使わせて貰ってるよ。本当に嬉しいよ〜えへへっ。
でも、一番嬉しかったのはね……大樹くんからのお祈りと感謝の気持ちが綴られたお手紙なんだ。
創造神になるとね、心からお祈りを捧げられた供物にしか味や香りがしなくなるの。それはあくまで神への供物。欲望や願いを神に頼むだけに捧げられた供物は、そもそも受け取れない事もあるんだ。神様は何でもしてくれる存在じゃないからね。試練や褒美を与える事もあるけど、基本的には世界を見守る立場でしかない。願いは自分の力で叶えるべきだから。まあ、そうやって頑張ってる子を応援したくなるって言うのもあるんだけどね。
だからこそ、純粋に信仰を捧げてくれる子達がくれるプレゼントは感謝の気持ちがこもってるからちゃんと味や香りがするんだ。
大樹くんがくれたプレゼントにも、ちゃんと……ちゃんと味がした。
嬉しかったなぁ。
恨まれてると思ってたから。きっと、世界を憎んでいると思ってたから。私の世界に来れて良かったって、私に感謝してるって、そう言って貰えて本当に嬉しかった。
ありがとう、大樹くん。
いっぱい、いっぱい、ありがとうっ。
さて、それじゃあそろそろこの本について説明させて貰うね?
とは言っても、そんなに難しい話じゃないんだ。
私が大樹くんともっとお話したくて、こんな物を用意してみただけだから。
これは神力を使って私が一から作った神器の一種。この本は二つで一つ、二冊の同じ本が繋がっていてね? 大樹くんがそこに何かを書けば私の持っている本にも同じように書き出される。その逆も然り。その本は大樹くんにプレゼントするから、出来れば収納していつも持ち歩いてくれると嬉しいな? それと、私の事は『ミムルルート』って呼んでくれて良いからね? 私は勝手に大樹くんって呼んじゃってるけど……もし嫌だったら言ってください。お返事待ってる。
ミムルルートより』
…………軽い気持ちで捲って見たら、赤面待った無しのメッセージが綴ってあった。いや、何この甘酸っぱい文通のやり取りみたいな展開!?
あとサラッと神器とか渡さないで貰えますかね!? 心臓に悪いから!
…………まあ、それくらいに嬉しかったって事だよな? 俺の信仰心とかケーキに味がする事で筒抜けになっててちょっと恥ずかしいけど。女神様が喜んでくれていたなら良かったかな。
うーん、呼び方かぁ。流石に呼び捨ては無いな。でも折角のお願いを無下には出来ないし……ミムルルート様って呼ぶ事にしよう。
そうして、買っておいた諸々をお供えしてから祈りを捧げ、ミムルルート様への返事も本に書いて教会でのやる事を終わらせた。
教会を後にした俺はトレーニングルームへと転移して訓練を開始する。
トレーニングルームの入口から中へ入ると、受付の様なものが正面奥に用意されていて、そこで各階の案内を貰えた。
トレーニングルームは3階構造となっていて1階はエントランスと更衣室、シャワールーム等が用意されている。2階は各マシンによるトレーニングが行えるフロアとなっていて、3階は畳フロア、鏡張りフロア、リング常設フロア等、各種目対応の練習フロアとなっていた。
二日目の経験を経て、どうせフラフラになる事は分かっているので今回は屋内であるトレーニングルームにやって来た訳だ。
ストレッチ。ジョギング、筋トレを一通り終わらせてから畳フロアへと移動し、中央で胡座を組んでから魔力の制御をする訓練へと移行した。
まあ、結果は駄目駄目でした。
それでもやはり普通の人より魔力量が多いからか、成長速度は圧倒的に速いらしい。
確かに言われてみれば、まだ二回目ではあるが最後の方で一瞬だけ魔力の放出量が変化した様に思えた。
勘違いかなとも思ったが、リディが言うには間違いなく魔力の放出量が減っていたらしい。その後直ぐに魔力の放出自体を止めてしまったので分かりづらくなっていただけの様だ。
その成果に喜びを覚えるのと同時に襲う倦怠感と頭痛。『状態異常耐性』も熟練度は上がっている様だが……まだまだその成長を感じ取る事は出来そうに無い。うん、めっちゃ痛い!!
そうして俺はホテルに戻る事なくその場で寝転ぶ様に倒れ、痛いから逃げ出す様に意識を手放した。
【10,000,200Pt→10,040,000Pt】
四日目。
目が覚めたら体に毛布を掛けられていた。十中八九誰が掛けてくれたのかは分かっているので、俺はリディに挨拶をしてからお礼を言い、ついでに朝御飯を用意してもらう事にした。
その前に汗をながす事を勧められて、シャワールームに移動。汗を流す。
そして受付へと向かうと朝御飯の用意が出来たとの事で、屋内へと転移してBBQ広場のテーブル席を使い朝御飯を食べる。ちなみに朝御飯はサンドイッチだった。
ハムタマゴ、レタスチーズマヨ、ツナマヨ、ローストビーフ、カツサンド、フルーツサンドと多種類用意されていて、ふわふわパンに挟まった具材がどれも美味しかった。リディ、ありがとう。
そしてホテルの2階へと移動しケーキやお酒を買って教会へとお供えしてお祈りする。その後に本を通してミムルルート様と交換日記の様な事をして、今日はトレーニングルームの鏡張りのフロア移動してから魔力トレーニングへと移行した。
【10,040,000Pt→10,002,400Pt】
はい、頭が痛いです。
ただ、昨日までとは違い何となく放出する魔力量を少なくする事が出来たので、後はこれを望んだ量に増やしたり減らしたり出来るようになれば魔法の発動訓練に移行しても良いとの事だ。
リディからそう説明を受けて、俺は喜びながらも仰向けに倒れて意識を手放した。
【10,002,400Pt→10,042,200Pt】
五日目。
朝起きると掛け布団が掛けられていた。羽毛なのか軽くて気持ちいい……。そして、頭の直ぐ側にバスタオルと昨日洗濯し忘れた筈の着替えが洗濯済みで綺麗に畳まれて置かれていた。
……うん、ありがたい。日に日にリディのお世話レベルが上がっている気がする。いや、俺の生活レベルがダメダメなだけか……兎も角、おはよう。リディ。
【おはようございます。ますたー。】
シャワーを浴びて、用意してもらった朝御飯を食べる。おにぎりと味噌汁だった。鮭、おかか、梅干し、卵黄、牛肉しぐれ煮、ハワイ風スパムおにぎりと大量に用意されていた。海苔はパリパリとしっとりが半分ずつ。今日の気分的にしっとり海苔が美味しく感じる。
あー、日本だな。いや、異世界だった。
そしてお腹が脹れたら買い物へGO。ケーキ屋さんでケーキを選び、居酒屋とバーカウンターでお酒を選ぶ。あと、今日はアイスも買ってみた。アイスクリーム屋では複数のブランドのアイスがエリア毎に分かれて販売されている。とりあえず今日は……数字が店名になっている有名店の奴にしよう。このファミリー用でいいか。
【10,042,200Pt→10,000,100Pt】
買い物を終えてからランドリーへ転移して洗濯をする。いや、めっちゃリディが不満そうだけど、流石にパンツを洗われるのはスキルだとしても恥ずかしい。と言うか、人間味がありすぎて普通に女の子だとしか思えないから尚のこと恥ずかしい!
【既に裸も見て……いえ、なんでもありません。】
お前……はぁ。男の裸なんて見ても面白くないだろうに。
【良い筋肉でした。】
おーい!! 折角誤魔化してたのに自分から台無しにしてるぞー!!
なんか、最近はコソコソと裏で作ってるっぽいし……怪しさ満点のリディさん。
【ますたーにとって害あるモノではありませんのでご安心を。それよりも、教会へ向かわなくてもよろしいのですか?】
誤魔化してる。誤魔化してるぞこの子!
まあ、リディの事は信用してるから良いんだけどさ、あまり変なモノは作らないようにな?
【…………はい】
その返事するまでにあった間について小一時間ほど問い詰めたい。と思っていたらいつの間にか教会前へと転移させられていた。
【ささ、私の事はお気になさらず女神ミムルルートとお話下さい】
こ、こいつぅ……。
でも、しつこく聞いても答えてくれなさそうだしなぁ……ま、それが何かは分からないけど最悪の場合は没収すれば良いか。
そう判断して、早速俺は準備を終わらせお供えをしてからミムルルート様へとお祈りした。
そして本を開いてミムルルート様からのメッセージを確認。そこには感謝の言葉と贈り物の感想などが嬉しそうに書かれている。ふむ……お酒は日本酒よりもワインやウイスキーの方が美味しいと感じるのか。なら、マルティシア様への贈り物は今度からそっち系だけに絞る事にするか。
そして返事を書き終えた俺はトレーニングルームへと移動。今日は畳のフロア。
【今日は魔力の放出量を減らす訓練です。くれぐれも増やそうだなんて思わないでください。減らすのとは違い、増やすのは危険な行為なんです。許容量を超えた魔力は暴走し、肉体を傷つける可能性だってあります。まあ、少なくとも明日までは増やすのは禁止です。】
えー……明日まで続くのか……出来ることなら、今日で終わらせたいな。訓練後の痛みは確かに『状態異常耐性』のお陰で減っているが……それでも耐えられないくらいには痛いのだ。
胡座を組み、魔力を右手へと集めて……解放。魔力の流れを確認しつつ……減らすっ!
よし、出来た。後はこれを更に減らす、減らす、減らす、細かい単位で減らす。
【ますたー。一度休憩を挟みましょう。今はまだその感覚に慣れたばかりなんですから、油断してはいけません。……聞いていますか?】
……これって、ワンチャンあるんじゃないか?
細心の注意をはらいつつ、糸一本通るか通らないか位の細い流れにして……そこから少しだけ量を増やし、減らす……よしっ! 一段階増やす事は成功! なんだ、結構簡単じゃないか。これなら今日中に量を増やす方もマスター出来るかも!
また量を限りなく細くして行き、今度は二段階……増やし、そして増や、し……て……ぐっ!?
【なっ!? ダメです! 止めてください!】
その声を聞いて慌てて止める。
止めた瞬間にフラつき体に力が入らなくなり……前方へと倒れ…………。
【ますたー!? ますたー……!!】
起きたら夕方だった。そして未だに具合が悪い。それに眠い……。場所は変わらず畳のフロアだったが、体が重い。うつ伏せから仰向けになるのも一苦労だった。
そして、俺の意識が戻ったとわかったリディは……初めて聞く怒った様な声で俺に説教を始める。
【何故、あんな無茶をしたんですか!! 慣れない状況で魔力を極限にまで減らした状態から量を増やすなんて……もう少し止めるのが遅ければ、足りない魔力を補うために体力を削り続け、最悪の場合は死んでいたかもしれないんですよ!? 魔法の発動とは違い、ただの魔力の放出は自分で止めなければ流れ続けてしまうんです……ぐすっ……それなのに、ますたーは私の事を無視して……うぅっ……!】
そこからはずっと謝り続けた。晩御飯を忘れるくらいに、重い体を起こして土下座して、夜遅くまでずっと謝り続けた。
リディが泣いていた。怒りながら、涙声になり、最後の方は何を言ってるのか分からないくらいには声がぐしゃぐしゃになっていた。
本当に心から反省した。俺の為に親身になって寄り添っていてくれたリディを無視して、自分が痛いのが嫌だからと止められていた事をしてしまった事への後悔。リディの泣き声は、俺に強い罪悪感を植え付けた。
……最終的に俺は明日一日は絶対安静でホテルの一室から出る事も禁止となった。
ちょっとだけそこまでする必要も無いんじゃないかと思ったりもしなくはないが……これ以上リディを悲しませる様な事はしたくない。
俺が一日休むことでリディが安心するならと、俺はリディの言葉に素直に従う事にした。
重い体を起こし、シャワールームに転移してシャワーを浴びる。適当に寝巻きに着替え、リディに声を掛けると……何故かホテルのマスタールームへ転移する事になっていた。
いや、ちょっと待って欲しい。休む事は認めたけど部屋はシングルが……や、ちょっ!?
ああぁぁぁぁーー!!!!
………。
テレレン♪テーレーレーン♪テレーレーレ♪テーレレン♪レンレーン♪
まあ、なんということでしょう。
あの豪華ではあるが少しだけ狭い20㎡のシングルルームが、最上階を丸々使った広々とした……広すぎて落ち着かない部屋へと変貌を遂げました。
シャンデリアがあるよ……空調もオフィスとかで使うような大型の奴だし、そもそもベッドは何処ですか……?
【マスタールームはますたーの為に用意された部屋です。優雅・快適・贅沢をテーマに設計された最上階のフロア全体を使った部屋となっています。その一部屋一部屋が広々とした空間となっており、メインのベッドルームが一部屋、ツイルベッドがある部屋が二部屋、リビング、キッチン、ダイニングが一つずつ、バスルームが二つ、トイレが二つとなっております。ささ、メインベッドが置かれた部屋へと転移しましょう。】
そうして促されるままにメインベッドが置かれた部屋へと転移したが……いや、ベッド大き過ぎない? 化粧台、収納クローゼット、シャワールーム…………シャワールーム!? しかもガラス張りでなんか……エッチジャナイデスカ!?
メインのベッドは奥に置かれていた。キングサイズのベッド三つ分の大きさのベッドが……え、ここで一人で寝るの?
【絶対安静です。この部屋なら十分に体を休める事が出来るでしょう。寝返りで落ちる心配もありません。】
あーうん……そうだね。ゴロゴロと2~3回しても大丈夫そうだなぁ……はぁ。
まあこんな豪華……過ぎる部屋、地球では泊まれないだろうし……色々と突っ込むのはもう諦めよう。
重い体をベッドへと預けて、心地よい柔らかを感じつつ目を閉じる。
「それじゃあ、おやすみ。……今日は本当にごめん。いつも助かってる。これからも迷惑をかけるだろうけど、よろしくな」
【はい。私はますたーのお傍にずっと居ます。】
嬉しそうに言うリディの言葉に安堵しつつ、俺は眠気に負けて意識を手放した……。
【10,000,100Pt→10,040,050Pt】
………………。
…………。
……。
「……声帯、異常なし。体幹、異常なし。身体構造……オールクリア。擬似魔石への"憑依"に成功しました」
それは真夜中の事……俺が眠っている最中、マスタールームのリビングには一人の少女の姿があった。
「味覚の確認……甘み、塩味、辛味、酸味、苦味、渋味、旨味……問題なし。料理の知識をインストール……成功」
まるで初めて肉体を得たかの様に、様々動作を試し、味覚を試し、嗅覚を試す少女。
小さな明かりに照らされた金髪がキラキラと光り、そのスラッと伸びる肢体には傷一つ無い。美しいプロポーションをした裸の少女は、自らの体の確認を終えるとそのままメインベッドルームへと足を進める。
その翠色の瞳にはハートが浮かんでいそうな程に蕩けており、ニマニマと口元が動く。
「ふふふ……今行きます――ますたー♡」
スキル『リゾート』……リディ。
妖精と見紛う程に美しい体を手に入れた少女はいま……想い人の眠る寝室へと繋がる扉に手を掛けた。
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