朝ごはん〜あたりまえがあたりまえじゃない〜

もちっぱち

我が家の朝食


寝ぼけ眼で起きる母。


寒い朝、1番にエアコンのスイッチ

石油ストーブにライターで火をつけた。


カーテン2箇所を開けると

朝日が差し込んだ。



ついで、コタツのスイッチを入れる。



だんだんと部屋が暖かくなるが、

寒い中の作業だ。


タイマーをつけられるのは

エアコンのみだったが、

電池を入れ替えたばかりの

エアコンスイッチは日付と時刻を

登録していなかった。



母は起きてから暖房器具に

スイッチを入れる。


タイマーのつかない石油ストーブだ。


時刻は6時半。


長女の登校時間は7時。


明らかに時間がない。


目覚まし時計でも二度寝で起きない

長女を起こしに行く。


ようやく起きたかといえば、

こたつでぬくぬくでパジャマのまま。



母は服に着替えながら

朝食の準備に取り掛かる。



やかんに水が入っていて

ストーブの上でブツブツと沸き始めた。



「あゆみは、朝ごはん何にする?」


そう聞いても、未だに長女は

こたつぬくぬくで

返事がない。


「もう、返事しないなら

 適当でいいよね。」


 いつも同じセリフ

 言ってるような気がした。


 適当に作った朝ごはん。

 ツナおにぎりと鮭のおにぎりを

 皿に乗せて食卓に乗せた。


 準備したのに食べてくれない。

 見ただけでヤダって顔する。

 

 お腹空いてないの分かるけど、

 がっかりする母。


「時間ないから一口だけ食べなよ。」


「えー。」


 そう言いながら、

 ツナおにぎりを一口食べた。


「ごちそうさま。」


「ほらほら、台所に片付けて。」


「はーい。」


 そのまま長女は、お皿と残したおにぎりを

 片付けて、洗面所に歯を磨きに行った。


 母は、台所のシンクを見て、

 驚愕した。


 大きな声で怒った。


「ちょっと!!あゆみ!!

 食べたくないからって、

 シンクにおにぎりそのまま投げないで。」


 さすがの母もイライラが激しかった。


 昔から農家さんが泣くよと

 米粒一つ残さないように食べようねと

 指導されてきた母は、出されたものは

 食べるんだと生きてきた。


 あゆみは、胃袋が小さい。

 便秘もしがち、

 偏食で好きなものを優先し、

 嫌いなものは平気で残す。


 今の時代は強制的に食事を食べさせるのは

 体罰や虐待とされている。


 無理に食べさせてはいけない。


 給食でもどうしても食べれない時は

 残してもいいってことにはなってる。


 それでも、

 一口も手をつけてないおにぎりを

 平気な顔をして捨てる長女の行動が

 ありえなかった。


 確かに朝は忙しいし、

 食べられるものも時間も限られる。


 食欲がなくなるのもわかる。


 それでも、まだ食べられそうなおにぎりを

 ラップで包んだままシンクに捨てるのは

 人として、どうかと思うと。


 母は、コンコンと叱った。


 その日、一日親子は複雑な気持ちだった。


 幼稚園に通う長男かけるが

 あゆみが登校した後にボソッという。


「姉ちゃんは、

 焼きおにぎりが好きなんだよ。

 鮭おにぎりは好きじゃないの。

 食べたくなかったんでしょう。

 ツナおにぎりは食べてたじゃないの。」


 かけるは、弟であるが、

 たんたんと姉のあゆみの状況を説明する。


 そう言われると、母は悪かったのか。


 怒る必要はなかったのかと思った。


 母は、出来事を父に相談する。


「俺も、昔、食べられなかったよ。

 朝は食欲なくて、

 食べていかなかったときもある。

 無理に食べさせる

 必要ないんじゃないの?」


 ごもっともな意見かとも思う。


 母親としては、ご飯を食べさせて、

 朝の活動に力いっぱい出せるようにという

 思いがある。


 母親の幼少期は、本当に胃袋が小さくて

 全然食べられなかった。

 母親の母はつまり子供からしたら、

 祖母だ。


 豆粒みたいな鮭おにぎりを毎日作って

 食べさせていた。


 それでも小さくてもどうにか食べていた。


 あゆみは、毎日同じメニューは嫌だ。

 目玉焼きいや。おにぎりは今日はいや。

 パンもこれ、いやだ。

 何かにつけて、母親よりもかなりの

 わがままっぷりだ。


 確かにわかる。

 食べたくない気持ち。


 でも食べないと力出ないから。


 要望が通らないと

 そこまで食に興味がないのか。

 食べていかなくてもいいとなる。


 それでいいならいいのか。


 それをママ友に相談すると、

 おにぎりを投げるのはありえないと

 怒り心頭だった。


 そして、朝ごはんなくてもいいっていう

 お父さんもどうかと思うという非難の嵐。


 そういう考えもありますよねと

 うんうん聞く母。


 父の幼少期の話をすると、

 シングルマザーで、3人兄弟の次男。


 調理師をしていた父の母(祖母)は、

 朝の出勤時間は5時までに職場に行く。

 

 もちろんのこと、 

 家族で朝食をとるという

 時間がなかったようだ。


 食卓を囲むということをしていない。


 適当に冷蔵庫から食べたいものを漁って、

 1人で食べることもあっただろう。


 兄弟で好きなものを適当に。


 食べなくたって、残したって

 誰からも注意されず、

 誰からも怒られずに過ごしてきた。


 監視する大人がいない。


 でも頼るにする母は仕事で家にいない。


 働かないと食べていけない。


 そう必死で生きてきた生活をしてきた。

 必ずしも朝食を食べられたわけじゃない。


 そんな過去を想像して、

 母は、涙を流す。


 当たり前のことが当たり前じゃない。

 父がかわいそうだったねと

 よく頑張ったねと言いたかった。



 一緒に食卓を囲んで食事をすることが

 大事ってこと。



 笑ってもいい。

 泣いてもいい。

 怒ってもいい。

 悲しんでもいい。



 そんな時間が

 どれだけ貴重だということが

 わかった。


 朝ごはんを今日も作る。


「あゆみー、何なら食べられる?」


「前に買ってた 

 チョコクロワッサン美味しかったから

 買ってきてほしい。」


「んじゃ、それは明日ね。

 今は?」


「お茶漬けでいいよ。」


「それなら食べられるのか。」


「うん。」



 親子も会話をすれば解決するのかなと

 またひとつ学ぶ。




【 完 】



※※

 世の中の偏食児童で悩んでるご家庭の方へ


 喧嘩してもいいんです。


 食べなくてもいいんです。


 食べれそうなものを一緒に

 親子で考えましょう。

 

 たとえ、それが栄養なくてもいいんです。


 親子で共有したいんです。


 次は食べてくれます。


 触れ合っていいんです。


 面倒だって思うけど

 立派な子供になりますよ。

 味覚が発達して頭がいいって

 プラス思考で考えましょう。 


 一緒に子育て頑張りましょうね!


 

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朝ごはん〜あたりまえがあたりまえじゃない〜 もちっぱち @mochippachi

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