第5話 友達を助けに行くよ!
僕は相変わらず、毎日、朝日が登る前に起きて、持ってきたお師匠様の似顔絵と、たくさんの竜達におはようを言う。身支度をして、竜の世話をして、宿舎の掃除をして、食堂のご飯をみんなで食べる。日が昇って少し暖かくなってきたら、みんなとちょっと訓練をして、勉強をする。そして竜達の世話をして、お風呂に入って本を読んで眠る。
そんな毎日を繰り返していたけれど、王子は違ったみたい。
いつも忙しいと言っていたけど、さいきんは忙しすぎて会えない日が多くなった。
隣国との小競り合いがふえて、「もしかしたら出兵しなければいけなくなるかもしれない」と言っていた。そうしたら、王子は『ういじん』に出なきゃいけないとも言っていた。
難しい言葉も少しわかるようになってきたから、王子が危ないことをするのはわかった。
いつ出るのかは教えてもらえなかった。『
でも、竜騎士たちも慌ただしくしていたし、ムシュカも出陣するらしい。そろそろ出るのだとなんとなくわかる。
僕は竜にも乗れないし、戦えもしないから、行けないよって言われた。
だから、毎日同じことの繰り返し。
戦況が悪くなってきたという噂を聞いても、毎日同じことの繰り返し。
モヤモヤしながら過ごしていたら、ある日、王子が敵兵に囚われたと聞いた。
それを聞いて、いても立ってもいられなかった。僕は僕の竜に「様子を見に行きたい」と泣きついた。そしたら、ちゃんとお願いを聞いてくれた。
竜の頭に乗って、空を飛ぶ。空を飛んだことはあったけど、ここまで長い距離を飛ぶことはなかったので、ちょっと緊張する。
やがて、人がたくさんいる、開けた平原にやってきた。地図で見せてもらったことがあるけど、ここは多分隣国との国境の緩衝地帯。空高くから見る地形は地図とそっくりでわかりやすかった。ちょっと地図の間違いも見つけられる。
大地をよく見てみると、僕のいる国から出てくる兵隊と、隣国から出てくる兵隊と、そしてそれぞれのファルコンや竜騎士たちのたち率いる竜がいるみたいだった。
何となく、隣国の竜と僕の竜は似ていた。でも、やっぱり僕の竜の方が大きくて、格好良かった。
兵と兵はにらみ合いが続いているみたいで、少し隙間を開けたまま、あまり動きが見られなかった。
大空を飛びながらそこまで行くと、僕の竜が勝手に地面に降り立った。目の前にはびっくり顔のムシュカがいた。
「よくここまで来れたな」
ムシュカはあきれ顔でそう言った。
「僕の竜にお願いしたら来てくれたの。王子は?」
「敵兵に囚われている。いま交渉の策を練っているところだ」
「場所は?」
「一時交渉に行った兵によると、敵兵の一番大きいテントにいる」
僕は阿呆なので、それを聞いたらいても立ってもいられず、飛び出してしまった。
あとから、逆上した敵兵に王子を害されていた可能性もあったから、今後決してしてはならないと言われたけど、その時は何も考えていなかった。
敵兵の布陣に向かってただ走り出した僕の襟首を、僕の竜はむんずと掴んで、また鼻先に乗せてくれた。
そして、今まで聞いたことのない声で、吼えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます