第12話 紅刃、駆ける
どこまでも続いていると錯覚してしまいそうな砂漠を、ひたすら真っ直ぐに進む黒衣の青年。
男が彷徨う理由はただ一つ。託された使命のため。
その使命を彼に与えたのは永遠の忠誠を誓った主であり愛人でもある女性だった。
男には、彼女のためなら火や水の中にだって飛び込む覚悟がある。死ぬのだって怖くない。
まあ、命まで捨ててしまったら悲しまれそうなのでやりはしないが。あくまで心意気の話だ。
「嗚呼、会いたい……」
ふと遠くにいる愛人の可愛らしい顔を思い浮かべ、感傷に浸る。
見る者を吸い込む赤い瞳。彼女の高貴さを表す金色の美髪。そして、自信に満ちあふれた勝気な表情。
その場にいたら思わず抱きしめてしまいそうだ。
「……とは言え、公私は
想像で愛人成分を補給した青年は、気を取り直して大地を踏みしめる。
──と。
青年の視界の端に、先程まではなかったはずの太く長い何かが映った。
「なんだ、あれ……?」
気になって視線を寄越すと、それは天へと昇る筒のようだった。
さらに目を凝らしてみると、その筒状の『なにか』は、足から炎を噴き出す何者かを追うように伸びている。
「あの追われてるのが人だとしたら……不味いな」
名前も知らない誰かの危険を察知した青年は故意に指を切り、
「──【
垂らした血で剣を形作ると、正義感のままに駆け出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます