第51話 あなたの重すぎる愛は私が全力で受け止めます

「クリスティーヌ、また僕の傍を離れて…いけない子だね。次はどんな罰を与えてあげようかな」


不適な笑みを浮かべて私の元にやってくるのは、アルフレッド様だ。あの事件以降、完全に病んでしまったアルフレッド様。ずっと私を監視する様になったのだ。新しい小型のブローチには、録音や録画機能はもちろん、居場所を特定できる機能も備わっている。


私自身で取り外すことは不可能で、アルフレッド様のみ、取り外しが可能なのだ。さらに、学院以外は基本的に、アルフレッド様と一緒のとき以外、外出禁止。アルフレッド様が外出時は、自室で過ごすように言われている。ちなみに私の部屋には、3カ所監視カメラが設置され、アルフレッド様がお出掛けになっている時でも、私の様子が確認できるようになっている徹底ぶりだ。


外側から鍵が取り付けられ、アルフレッド様が外出時は鍵が掛けられ、自分では外に出られない。アリアたちメイドも入れない様になっている。


学院でも、ひと時も私から離れない。レイチェル様が近づこうものなら、鬼の形相で睨みつけているのだ。さすがのレイチェル様も苦笑いしているくらいだ。


今もちょっとお手洗いに行っていたところを、心配して駆けつけたアルフレッド様に見つかったところだ。


「ちょっとお手洗いに行っていただけですわ。でも、黙って行ってごめんなさい。さあ、そろそろ帰りましょう」


彼の手をぎゅっとにぎり、校門を目指す。そんな私の腰を抱き、ひと時も離さないと言わんばかりのアルフレッド様。


周りからは


“クリスティーヌ様も大変ですわね”


“アルフレッド様の愛情、少し重すぎませんか?”


なんて言われるが、私はとても幸せなのだ。だって大好きなアルフレッド様が傍にいてくれるから。


ちなみにレイチェル様とは、こっそり連絡を取り合っている。そう、日本語で手紙のやり取りをしているのだ。日本語だと万が一アルフレッド様にバレたとしても、何が書いてあるのか全く分からないのだ。


書いた手紙をこっそりと、図書館の本に忍ばせておくのだ。忍ばせる本は、前回の手紙に指定しておく。そうする事で、バレることなく上手く手紙のやり取りが出来るという訳だ。まあ、提案してくれたのは、レイチェル様なのだけれどね。


何だかんだで、今でもレイチェル様とは親友なのだ。完全にアルフレッド様は病んでしまったけれど、それでも私は彼が大好き。だから今まで以上に、全身全霊を掛けて、彼を愛している。


そのお陰か、少しずつだが、アルフレッド様にも笑顔が戻ってきた。きっと完全に病みが治まる事はないだろう。それでも私は、これからも全力で彼を支えて行くつもりだ。


それが私の幸せでもあるから。


「クリスティーヌ、今日もまた僕以外の人間と話していたね。いつも言っているだろう?僕以外の人間と話してはいけないと。どうして約束が守れないのだい?」


「あら、そうでしたかしら?でも私は、誰よりもアルフレッド様を愛しておりますわ。ほら、機嫌を直してください」


アルフレッド様をギュッと抱きしめ、唇に口づけをする。すると、少しだけ機嫌が戻るのだ。


「クリスティーヌはすぐにそうやって甘えてきて。今日はいよいよ、僕たちの婚約を結ぶ日だね。やっとクリスティーヌが正真正銘僕のものになるのか…」


嬉しそうに呟くアルフレッド様。そう、今日は待ちに待った私たちが婚約を結ぶ日。やっとこの日が来たのだ。


屋敷に戻ると、既に両親が待っていた。


「アルフレッド、クリスティーヌ、お帰り。早速婚約届にサインをしてくれるかい?」


「ええ、もちろんですわ」


アルフレッド様と並んで座り、2人で仲良く婚約届にサインを書く。ここまで来るのに、本当に色々な事があった。それでもアルフレッド様と、やっと婚約を結ぶことが出来たのだ。嬉しくて涙が溢れだす。


「クリスティーヌ、どうして泣いているのだい?もしかして僕との婚約が嫌で…」


「とんでもありませんわ!私はこの日をずっと待ちわびていたのです。やっと、アルフレッド様の婚約者になれたのですね。アルフレッド様、私、絶対にあなた様を幸せにして見せますわ。あなた様の重すぎる愛、私が全力で受け止めて見せます!」


真っすぐアルフレッド様を見つめながら、そう宣言した。


「ありがとう、クリスティーヌ…僕の気持ちを全力で受け止めてくれるだなんて…僕は君の事になると、感情が抑えられなくなる時ある。時には暴走してしまう事もあるが、それでも受け止めてくれるかい?」


「ええ、もちろんですわ。だって私は、ずっとずっと昔から、あなた様の事が大好きなのですもの。どんな事があっても、受け止めます」


私の言葉を聞き、少し恥ずかしそうに笑ったアルフレッド様。その笑顔は、とても美しかった。私はこれからも、彼のこの笑顔を守っていきたい。


神様、私をクリスティーヌに転生させてくれて、ありがとうございます。きっとアルフレッド様は、私の行動を制限し、もしかしたら監禁してしまうかもしれない。それでも私は、彼を誰よりも愛しています。


いつか彼の心が落ち着いてくれる事を願って、私はこれからも、彼の重すぎる愛情を全力で受け入れていくつもりです。


だって私は、誰よりもアルフレッド様を愛しているから!



おしまい



~あとがき~

これにて完結です。

最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m

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