第49話 完全にアルフレッド様を病ませてしまったみたいです

アルフレッド様の目を真っすぐ見つめる。すると、クスリとアルフレッド様が笑ったのだ。そして、ゆっくり顔が近づいてきて、唇が重なった。それはどんどん深くなっていく。


「アルフレッド様…」


こんな熱烈な口づけをされるだなんて…もっとアルフレッド様に触れたい。


再びアルフレッド様の唇に自分の唇を重ねようとしたのだが、スッと引き離されてしまった。あら?どうしたのかしら?


不思議に思ってアルフレッド様を見つめる。すると、アルフレッド様も私を真っすぐ見つめた。


「僕に内緒でレイチェル嬢と連絡を取っていたのも、今回の件を相談していたのかい?そもそも、なぜレイチェル嬢に相談をしたのだい?どうして僕に相談してくれなかったのだい?僕よりもレイチェル嬢の方が、信用できるというのかい?」


今にも泣きそうな顔で訴えてくるアルフレッド様。


「アルフレッド様に相談しなかった事は、申し訳なく思っております。でも、あなた様を巻き込みたくはなかったのです。レイチェル様は、その…なんと申しますか、勘がいいと申しますか。私が悩んでいる事に気が付いてくれて…その…」


「そうか…レイチェル殿は僕よりもずっと君の事を理解していたのだね…僕はずっと君の傍にいたのに…本当に僕はダメな人間だ…まだクリスティーヌと仲良くなって1年も経っていない令嬢に、クリスティーヌの心を奪われるだなんて…」


「レイチェル様は私の心を奪っておりませんわ。彼女は前世からの親友なのです…あっ…」


「前世からの親友?それはどういう意味だい?」


ついうっかりと前世の話をしてしまった。でも、自分よりもポット出て来たレイチェル様に協力を求めていたことに、アルフレッド様は相当ショックを受けている様だし。このまま黙っておく訳にはいかない。


仕方ない、全てを話そう。それでアルフレッド様の心が、少しでも落ち着いてくれるなら、きっといっちゃんも許してくれるだろう。


「アルフレッド様は、転生を信じますか?」


「転生?」


「はい、そうです。私とレイチェル様は、かつて隣同士に住んでいた幼馴染兼親友だったのです。お互い一度命を落とした後、またこの世界に転生したのです。レイチェル様が持っていらした苺大福は、前の生を生きていた時に私が大好きだったお菓子ですわ」


目を丸くして固まっているアルフレッド様に、この世界が前世で好きだった漫画の世界だという事。前世から大好きだったアルフレッド様を、私が絶対に幸せにすると誓った事。同じく前世の記憶があるレイチェル様に協力してもらっていた事を丁寧に話した。


「私は転生する前から、あなた様をお慕いしておりました。だからこの世界に転生していると知った時、涙が出るほど嬉しかったのです。私があなた様を絶対に幸せにしたい!そんな思いで今まで動いて参りました。私はずっとずっと、あなた様だけを愛しています。もちろん、これからもずっと、あなた様を愛し続けますわ!」


必死に自分の気持ちを伝えた。そんな私を、アルフレッド様が驚いた眼で見つめている。


「そうか…だからあの女が持ってきたお菓子を食べた後、君たちは急接近したのだね…まさか前世から繋がっていただなんて…」


えっ?待って、どうしてそんな顔をしているの?


「アルフレッド様?」


「クリスティーヌ、僕は少し君を自由にしすぎた様だ。でも、それも今日でお終い。たとえ僕の為だったとしても、僕に内緒で動いた事。よりによってレイチェル嬢やカロイド殿下に頼った事。そして何より、自ら毒を飲むという大変危険な事をした事。僕はどうしても許せない。だから今日から、厳しく監視させてもらうよ。まずは通信機をここに出してくれるかい?」


「通信機ですか?」


「とぼけても無駄だよ。僕に内緒で、レイチェル嬢と通信をしていただろう?クリスティーヌ、あの女は確かに、前世という世界から君の事を知っているかもしれない。でも、僕はあの女以上に、君の事を何でも知りたいんだ。あんな女に、クリスティーヌは渡さない。絶対に!」



「待って下さい、アルフレッド様。先ほどもお話しした通り、レイチェル様はかつて、あなた様をお慕いしていた人物です。私と同じように、あなた様の幸せを誰よりも望んでいた人物ですわ。ですからレイチェル様が、あなた様から何かを奪うなんてことは絶対にありえません」


「いいや…レイチェル嬢はしっかり奪って行ったよ…現に彼女の存在が、僕にどれほどの不安を与えたか…とにかくこれからはもう、好き勝手に彼女に会わないからね。それから、あの録画型ブローチは、ずっと付けていてくれるかい?最近外すことも多かっただろう?クリスティーヌには外せない、もっと丈夫な物を付けさせる予定ではいるが、それまではあのブローチを付けていて欲しい。もし外したら、その時はただじゃおかないよ…」


またしてもゾクリとするほど美しい微笑を浮かべるアルフレッド様。


この笑みは…


私、完全にアルフレッド様を病ませてしまったのね…




※次回、カリーナ視点です。

よろしくお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る